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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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雷毒の魔装


 雷の属性を得た魔眼から放たれる数多のレーザーがフェンリルを追い立てた。

 紫の残光を引いて馳せ、それをフェンリルは紙一重で躱しながら荒野を駆ける。それを追い掛ける形で、こちらも地面を蹴っている。

 相変わらずの速度で、まともには追いつけそうにない。

 だが、こちらの攻撃を躱すたび、迎撃するたび、その脚は一瞬だけ鈍くなる。そのロスにつけ込んで距離を縮め、銀色の大角の一薙ぎがレーザーを叩き切った直後、俺はフェンリルに追いついた。


「――」


 四肢に紫電がほとばしり、紫紺刀の剣速が上がる。

 風よりも速く、稲妻のように鋭く、一刀は軌跡を描く。

 しかし、相対しているのは高位の魔物、フェンリルだ。速度もさることながら、反射神経もずば抜けている。俺の接近と攻撃動作を察知し、直ぐさま銀の大角が差し向けられる。

 接触。打ち合うと共に、火花と鈍い音が散る。

 受けられた、が、問題ない。

 そのまま更に間合いに踏み込み、二の太刀、三の太刀を浴びせに掛かる。

 フェンリルはそれにも反応して来たが、所詮は獣の太刀筋だ。俺が今まで相手にしてきた探求者たちには及ばない。打ち合っていればボロが出る。

 そして、それは幾度目かの打ち合いで発生した。


「――ここだッ」


 焦れたフェンリルは不用意に跳び、突きを放つ。それを躱して潜り抜け、フェンリルの懐へと潜り込む。ここまで来れば角も牙も爪も怖くない、刀身を這う紫電が音を鳴らして激しさを増す。

 焦ったフェンリルが防御のためか銀の魔力を全身に纏い始めたが、完全には間に合わない。

 紫紺刀は未完成な魔力の防御を斬り裂いて、その銀の毛皮を断つ。


「ギャンッ!?」


 鮮血が散り、一刀を振り抜いた。

 同時に交差が終わり、フェンリルは背後に転がるように着地した。


「浅い、か」


 すぐに振り返ると、血を流しながらも四肢で立つフェンリルに睨まれる。

 未完成でも防御は防御だ。攻撃そのものは届いたけれど傷口は浅い。

 更に、その傷を覆い隠すように魔力の防御が完成する。それはまるで装甲のように形成され、フェンリルはついに剣と鎧を手に入れた。

 夕日を受けて茜に染まる銀の武具。そう簡単に決着を付けさせてはもらえないらしい。


「グルルルルルルル」


 姿勢を低く保ち、唸るフェンリル。

 それに対して、こちらも紫紺刀を構える。

 それから――一瞬の出来事だった。


「――なっ!?」


 消える。目の前からフェンリルの姿が消失する。

 ありえない。一瞬たりとも気を緩めてなどいなかった。胴にいくつもある瞳はどれも、瞬き一つしていない。常に眼前の敵を捕らえて離さず、監視していたはずなのに。

 目の前からいなくなった。


「どこに――」


 胴の瞳が目まぐるしく周囲を見渡す。視界を急激に広げ、全方位をカバーする。

 そうすることで、ようやくフェンリルの姿を発見できた。

 あの時と同じだ。初めてコボルトと戦った時と同じ。フェンリルはその脚力を持って俺の視界から脱していた。

 あり得ないほど速く――オチューの能力でさえ、見切れないほど速くなっている。


「ぐッ――」


 左肩に耐えがたい衝撃が走り、気がつけば骨が砕けている。攻撃を受けた、そう認識した次の瞬間に、次は右足が折れていた。

 なにも出来ない。なにも追いつかない。

 認識できた時にはすでに攻撃が終わっている。

 銀の装甲の能力か、これが本当のフェンリルの実力なのか。ともかく、これでは手も足も出ない。


「くそッ!」


 苦肉の策として、全身を一度ガーゴイル・デザートに変換する。

 それでも攻撃は喰らったが、今度は骨に亀裂が走る程度で済んだ。そのまま攻撃を食らいながら錫杖で地面を突き、四方に硬い砂の壁を迫り上げる。身を護るための盾を作った。

 これも長くは持たないだろうが、数秒か十数秒くらいは稼げるはずだ。

 その間に考えろ、この窮地を脱する方法を。


「ウォオオオオオオオオオオッ」


 砂の壁にどんどん亀裂が走っていく。

 その事実に焦りを覚えながら思考は高速で巡り続ける。

 サンダーバード・ウィングとオチュー・アイズ。この両方を同時に使う形態は、両方の能力の精度と威力を落とす代わりに同時発動できる。でも、もはやそれでは追いつけない。

 100パーセントのサンダーバードの速度と、オチューの動体視力が必要だ。

 でも、それを一体どうやって実現させればいい。

 サンダーバードの完成形態になってもフェンリルは捉えられない。オチューの完成形態になってもフェンリルに追いつけない。

 オチューの能力で分身を作り、サンダーバードの完成形態にすることは出来るが、結局のところ結果は同じだ。手も足も出ない。

 なにか方法はないか? 俺はいつもどうやって窮地を乗り越えてきた?


「――そうか。二つを――」


 瞬間、砂壁が完全に破壊され、砂塵の中をフェンリルが突っ込んでくる。

 銀の鋭い閃光が駆け、隠れていたスケルトンを貫かんと馳せた。

 けれど、その一刺しは届かない。

 フェンリルが俺を貫くその瞬間、俺は安全圏に移動を果たしていた。

 フェンリルを超える速度をもって。


「二つを……融合させればいい」


 何度もやっていたことだった。

 異なる二つの魔力を使った複合特性。絶氷、劫火、雷霆、いずれもそうだ。

 これを身に纏う魔力でやればいい。融合した魔力を解き放つのではなく、自らに内包して顕現させる。身体の部位ごとに魔力を変換するのではなく、全身を二種複合の魔力で覆い尽くす。

 雷と毒。サンダーバードとオチュー。

 今の俺はこの二種の魔物の能力を100パーセント同時に行使することができる。


「――複合特性、魔装を会得しました」


 ここからはもう一撃も食らわない。

明日11月30日に反魂のネクロ~スケルトンは遺骨をくらい、失われた人生を取り戻す~が発売になります。活動報告のほうに十万字書き筆修正した話や諸々を書きましたので、よければ見て頂けると幸いです。

最後に皆様、これまで応援していただきありがとうございました。引き続き、反魂のネクロを読んでいただけると嬉しい限りです。

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