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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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正答の誘導


「よかった。無事だったんですね」


 そう言ったユウリはほっと安堵の息をついた。

 ここで俺とユリアが倒れれば一人切りになってしまうから、当然か。


「しかし、困りましたね。フェンリルに目を付けられたとなると、一刻も早く楽園にたどり着かないと」

「そうよね。あいつ面倒だわ。速いし。びゅんびゅん」

「あー……そのことについてだけど」


 丘の影で顔をつきあわせ、古びた地形図を広げて話を進めていく。

 楽園の位置はすでに精霊に聞いた。あとはどう自然にそちらへと誘導するかだ。


「このまま噂だけを頼りにしても時間が掛かりすぎるから、どうにか候補を絞れないか?」

「そう……ですね。この際ですから、可能性の低いものは思い切って捨てましょう。そうなると……」


 ユウリは目を伏して思考を巡らせる。


「まず楽園の近くには水源があるはずです。僕たちがいた街でも近くの湖から水を引っ張っていましたから」

「じゃあ、近くに水源がない場所は除外だな」

「そうなると……候補は半分くらいになりますね。そこから僕たちが巡った位置を除外すると……ダメですね。まだ十数ヶ所あります」


 ユウリはそう言って地図上に候補となる位置に丸を付けた。

 幸いなことに精霊から聞いた位置がその中にあった。

 噂の中に真実が紛れ込んでいたのは事実みたいだ。街の女たちはどうしても見つけられなかったみたいだけれど。


「十数ヶ所……その中で一番複雑な地形をしているところは?」

「えーっと……あぁ、ここですね」


 ユウリが指差した丸印は、だが楽園を囲んではいない。


「ここなら楽園を隠せるかも知れません」

「……でも、地形が複雑だからこそ、丹念に調べるんじゃないか? それこそ血眼になって」

「そう言われると……そうですね。疑わしい地形をしている所は真っ先に調べられるでしょうし、それを逃れるためにあからさまな所は避けているかも」


 そう、楽園はすぐに思いつくような場所にはない。


「そもそも噂になっている位置はすでに調べ尽くされています。もはや地上にはないのかも」

「地上にないって、じゃあどこにあるのよ。土の中?」

「いや、楽園が地下にあるなら、誰も居場所を見つけられない。なにか明確な目印があるはずなんだ。それで目立たない。きっとそれは、そこにあって当たり前のものだ」

「明確で、目立たない、当たり前のもの……」


 俺自身が楽園の位置を言うことはできない。言い当てることはできない。

 だから、ユウリかユリアに閃いてもらう必要がある。そして、その閃きはきっとユウリから生まれるであろうと思い、ヒントを出していたのだけれど。


「あ、じゃあ水の中でしょ!」

「姉さん。地下がダメなら水中って、そんな子供みたいな――こと……」


 意外なことに、それはユリアから生まれたのだった。


「本で読んだことがあります。マーメイドは水中に街を造り、そこで生活していると」

「私たちマーメイドじゃないけど」

「僕が言いたいのはそうじゃなくて。水中でも住もうと思えば住めるってこと」


 その通りだ。マーメイドでなくても、魔法を駆使すれば水中でも人は住める。


「この大規模空間の中には大きな湖がいくつかあります。それは明確な目印であって、目立たない当たり前のもの。街の人たちもまさか水中に楽園があるとは思わない」

「だとすれば問題はどの湖か、だな」


 俺たちは再び、地図に目を落とす。

 大規模な湖は合計して四つ。このうちのどれかに楽園が沈んでいる。


「うーん。ねぇ、どれなの? どれなのよ」

「なぁ、ユウリ。楽園があるって証明した人がいたよな? その人が見つかった場所ってわかるか?」

「あ、はい。たしか、ここのはずです」


 ユウリは指差す、とある湖のほど近くを。

 そうして見て、本人も気がついた。


「じゃあ……ここが」

「たぶん、そこが楽園だよ」


 多分ではなく、絶対だけど。


「やったわ! 凄いじゃない! これで楽園にいける!」


 ユリアは勢いよく立ち上がった。


「待って、姉さん。位置がわかっても、まだ行き方がわからないよ」

「あ、そっか」


 すぐに座った。


「まぁ、その辺は俺がなんとかするよ。水中は初めてじゃないし」


 本当はここから楽園に向かうための正規の手順がいくつかあるんだけれど。

 そんなことをしている暇はないので、シーサーペント・スケイルの能力で大幅ショートカットさせてもらう。正攻法なんて知ったことか。二人が無事にたどり着けるのならそれでいい。

 ズル上等だ。


「とりあえず、この湖に行ってみよう」

「そうですね。行きましょう!」

「でも、明日にね。今日はもう眠いのよ。ふわぁー」


 と、ユリアは大きなあくびをした。マイペースというか、なんというか。

 そう言えば休憩の途中――というか、また新しく一日が始まるまでは、ここで休むことになっていたっけ。俺にはほとんど必要ないけれど、休息は大事なことだ。

 ここは予定通りに休んで明日、楽園に向かうとしよう。

 その後、勇み足になっていたユウリも冷静になって眠りについた。

 二人が目覚めたのはそれから数時間後のこと。眠っている間、俺がずっと見張りをしていたが、幸いなことに敵襲はなかった。

 万全の状態だ。早速、湖に向かうとしよう。

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