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白陽国物語 〜蕾と華と偽華の恋〜  作者: なななん
第三部 側近の恋、蕾の転機
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序章

 



「え?」


 カラーンと音をたてて落としてしまった筆を、青蘭が慌ててひろった。

 持っていた書簡をだらしなく垂らしながら固まっているのは伯緑栄はくりょくえい

 白陽国今上帝、張煌明ちょうこうめいの側近である。


「や、めた?」


 呆然と呟く緑栄に、あわあわと青蘭が取り繕う様に説明する。


「正確に言うと、年季が明けたそうです。ですからあの、お手紙が渡せませんでした……」


 そういって今朝渡した手紙を大事そうに懐から出して手渡す。


「あ、はい」


 緑栄は反射的に受け取って立ち尽くす。




 ここは白陽国王宮・奥宮にある帝の私室。

 側近である緑栄は、つい先日まで緑栄の双子の姉・紫鈴しーりんの替わりに奥宮に出仕していた。

 緑栄と紫鈴は男女の双子だが良く似ていて、幼い頃からいたずらに入れ替わって遊んでいた。

 成人し、緑栄は表宮に、紫鈴は奥宮に出仕する様になった後も、紫鈴が王命で外出する際、奥宮で懸念事案がある時は緑栄が紫鈴に化けて奥宮で目を光らせていたのだったが。

 其々経緯は違うが、二人の女官に化けている事が知れ、現在は替わりに出仕する事を止めている。



「あの、一先ずお茶にしましょうか」


 いつの間にか円卓の上は片付けられ、コトっと茶器を置いてくれたのに、そうですね、とがたたと動いて座る。

 どうぞ、と差し出されたお茶を又反射で飲むと、芳しい香りにだんだんと意識がはっきりしてきた。

 気が付けば青蘭が眉をハの字にして心配そうにこちらを見ている。


「緑栄様、大丈夫ですか?」


 そう聞いてくれる小さな女官は呉青蘭ごせいらん。張煌明の侍女であり、現在帝が最も気にかけている女官である。

 姉・紫鈴の親友で洞察力が高く、緑栄の女装を看破した二人の内の一人でもある。


「あ、はい。覚醒しました」


 その物言いに ハの字のまま笑った青蘭は、私が訪ねた時にこれを預かりました、と一枚の紙片を緑栄に渡した。


「ご本人はもう出られた後で、同室の方からだったのですけれど、〝もし紫鈴様か青蘭様が訪ねていらしたら、渡して欲しい。それ以外の方がいらしたら捨てて欲しい〟とおっしゃって去られたそうです」


 緑栄はザッと目を通した。

 乱れのない丁寧な文字。

 しばらくしてスッと立ち上がる。


「〝青蘭〟紫鈴はまだ戻ってない?」


 青蘭は、緑栄の呼び方に、背筋がピッとなる。


「はい。姉さんは予定を変更してシルバ様と共に本日の夕方に戻られるそうです」

「分かりました。……悪いけど、紫鈴の女官服持ってきてくれる? 化粧道具も一式」

「承知しました、〝紫鈴姉さん〟」


 〝紫鈴姉さん〟と呼ばれた緑栄はニッと弓なりに唇を上げ、笑った。






大変お待たせしました。

第三部「側近の恋、蕾の転機」始まります。

……頑張ります!!

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