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序章
「待ちなさいよ!!!」
はぁはぁと肩で息をして、でも思いっきり叫んだ。
そうでもしないと男が馬を駆けてしまいそうだったからだ。
そして、馬が走り出してしまえば、あっという間に視界からいなくなってしまう駿馬だと、身をもって知っていたから。
いまこの時、声を上げなければ、
もう、会う事は出来ない。
ゆっくりと馬首を返した男は、相変わらず無表情だった。
そして、相変わらず、気は見えない。
それが口惜しくて、唇を噛んだ。
拠り所が使えない相手と対峙するには、
正面からぶつかっていくしかない。
まだ自分の気持ちに整理がついた訳じゃない。
でも、
来てしまった。
ここに。
この場所に。




