閑話:思惑
北海道S市、そのプレイヤーはゲーム開始時外にいた。可能な限りの情報は妖精のドライに聞いた。自分の納得いくまでの情報を聞いたが、空のタイマーはカウントし始めたばかりだった。カウントは自分がチュートリアルを終えてから動くのか、それともチュートリアルの時間を全員同じ時間になるよう調整したのか。おそらく後者だろうな、と思う。ガチャを引くと、低レアばかり。気に入らないから前借を使い100連ほどした。結果、ほかのゲームで使い慣れたスナイパーライフルが手に入る。追加でさらに回し、もう一丁手に入れる。
「カードゲームはこういうところが面倒ね」
自分のHPは1000、SPは100と見える。試しに一番威力の低い、配布カードのダガーを使う。腕に刺すと、実際に刺されたような痛み、そしてHPが50とSPが5減っている。
「リアルゲーム、ね」
デッキを作り、LRのスナイパーライフルを出す。すぐに構え、初期地点から対象を定める。スコープは、頭でイメージするだけで照準が動いた。
「こういうところまでリアルにすればいいのに」
はるか先に人影、ためらわずに引き金を撃つと、見えない壁に阻まれる。
「初期地点では攻撃ができない、確認」
外へ出て、適当なビルの上層へガチャで引いたジェットパックで移動する。もちろん周囲の警戒のため姿を隠す。窓をダガーで切り、狙撃体制へ、距離は2kmほどだろうか。これくらいなら、ゲームで打ちなれている。反動がなくスコープの倍率調整が楽な狙撃など、外す気がしない。先ほどの人影へ、再び撃つ。しかし、当たる直前で弾かれる。人影は、明らかに慌て始めた。
「バリア、そのようなカードもある、と」
銃を構え直す。この銃は一発撃つごとに50SPを使うため、もう一発しか打てない。今度は慎重に照準を定める。しかし、人影の様子が変わる。なにかを構えると、光の塔――――いや、塔と見まがうほどの巨大な県が、出現していた。その剣は、全てを薙ぎ払い、辺りを更地にする。さすがに、言葉を失った。
「……リアル、ゲーム」
今ので多くのプレイヤーが死んだ。それは展開しておいたレーダーで確認してある。
気を抜けば、一瞬で死ぬ。それは他のゲームでも似たようなものだ、しかしこれは、やり直せる死ではなく、本物の死。
そう考えると、体が震えた。恐怖ではなく、喜びで。
はやる気持ちを抑え、レア度の下がる銃をスコープ代わりに使う。ふと、剣の薙ぎ払われた端の方に突然プレイヤーが出現した。しかも二人。スコープで覗き、スマホで情報を調べようとする。しかし、見れるのは当然ゲームの情報だけだ。使える情報は何でも欲しいと、ある程度の位置を記憶、ゲームのメモに残す。再びスコープを残すと、二人の陰が剣を出した人影と戦っていた。銃をしまい、遠くのプレイヤーの情報を見れるSSRのカードを使う。
「レオ、ハル、……裕太、こいつが剣を出した男」
ハルが裕太を追い詰めていた。しかし、動きが止まる。なにかをためらっているようだ。
「……そうね。手柄を貰うんだもの。助けてあげるわ」
――――それに、なにかに利用できそうだから
そう思い、引き金を引く。あっさりと、命は永遠に失われた。
このプレイヤーの名前は、K
彼女は、大きくSRG世界と現実世界をかき乱していく。