壊れる世界
机の上で、琢磨の目が覚めた。どうやら寝ていたらしい。今までのことは、全部夢だったのか、とスマホを確認する。そこには、シーズン1:1日目終了。集計中という文字と、SRGという呪詛にも似た言葉。思わず、携帯を投げつける。
ふと、パソコンが光っているのに気づく。ツイッターのTLが、めまぐるしく動いている。その中に見つけた、ある一文。
<プレイヤー・裕太は最高5位でゲームオーバーになりました。借金10億/収支0>
このアカウント名は、佐藤裕太。プロフィールを開いてみるが、このツイート以外に他のツイートはない。
「このためのツイッター連携かよ……なんのために、こんなことを……」
SRGで検索すれば、多くのゲームオーバーになった人が確認できる。数え切れないほどに、誰が、なぜこんなことをしているか、自分には理解できない。
LINEに着信、相手は、氷見だった。
<大丈夫?無事?>
<大丈夫だよ。そっちも平気そうでなにより>
氷見のツイッターアカウントももちろん知っている。そのため、復帰しツイッターを見た時に、氷見のツイートを見ていたため安全であると確信していた。
ふと不安になり、自分のツイート欄を見る。だが、SRGとの連携らしきツイートは事前登録の連携ツイートしか見当たらない。どうやら、死んだ時にしかツイートされないらしい。ふと、公式のツイートを調べてみる。一番上に、表示されたのは、
<ソーシャル・リアル・ゲーム配信開始!ここからDLしよう!今ならリアルマネーイベ開催中!URL:……>
相変わらず、肝心な情報は一切出ていない。リプ欄には文句の嵐。不意に、携帯が鳴った。通知に残ったのは、ランキング集計終了の文字。
<各ランキング集計結果を発表します。結果を確認してください。>
ランキング内容を見てみる。アシスト、エネミーキル数、プレイヤーキル数、総合ランキングに分かれていた。
「プレイヤーだけを殺さなくてもいいのか……?」
まだこのゲームについて分からないことが多い。まずは、情報を集めることだ。今は、みんな混乱している。時間をおいて、情報を整理しよう。氷見にもそのことを伝え、眠ろうとする。
……もちろん、眠れるはずもない。ベッドに入るものの、眼がすっかり冴えてしまい、寝ることはできなかった。インストールされていたSRGを確認する。0時の起動以外は、普通のゲームと変わらないようだ。大きくSRGと書かれた起動画面から、スタートボタンをタップする。開くと、そこにハルがいた。思わず自分の体を確認するが、もちろんそこにいたのは琢磨だ。メニュー画面の並びなどは、あの世界にいた時と変わらない。気になり、このアプリを削除しようとした。しかし、なぜか削除ボタンも、アンインストールもできない。アプリストアにも、SRGはなかった。
「まるで、よくある設定の呪いのゲームみたいだな。……いや、呪いのゲームそのものか」
とりあえず、アプリのことをいろいろ調べる。なぜか、機内モードでも通信が出来、戦いから逃げることが許されていないと思わせる。0時のデスゲーム以外のゲームモードは、ランキングに関係のないバトルモード、ソロでカカシ相手に戦うプラクティスモード、同様のソロで行うストーリーモードがあった。
少しでも情報が欲しかった琢磨は、ストーリーモードを進めることにした。
琢磨がストーリーモードを進め始めた時、SRGを運営しているフランラという会社のツイッターに動きがあった。
<みなさん、突然のことに驚きでしょうが、安心してください>
このツイートに、もちろん注目が集まる。多くの者は、批判しかしていない。一部は、イカレた非現実的なゲームを前に、喜んでいるものもいることにはいるが。
<約束は守ります。これは、人を減らし多くの人を幸福にする唯一の手段ですから>
その、あまりに現実離れした内容は、広く拡散された。しかし、それは悪手であった。
拡散されたツイート、それを開いた先から、SRGの感染が広がっていく。SRGの拡散力は、スマホに限らなくなっていた。
<皆様のご期待に応え、PC版の公開も始めました。こちらのリンクからどうぞ。>
新たなリンク。もう、止まらない。スマホだけではなく、PCまで感染は広がる。……参加者は、すでに3億まで増えていた。
2日目の戦闘まで――――あと23時間。