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ゲームスタート

「くぁ…眠くなってきたな」


3/31の夜23:30。いよいよSRGの配信時間が迫ってきている。もしかしたら配信ではなく情報公開かもしれないが、それならそれでもいい。とりあえず暇をつぶせればよかった。パソコンを付け、実況の準備をする。TLの話題はSRGで持ち切りだ。しかし、その多くはスパムのような宣伝方法や演出を怪しむ声ばかりであった。自分もその実況に参加し、FFの人たちと意見交換をする。……ソシャゲだけではなく、コンシューマゲームもヒット作ばかりだから大丈夫だと思うが。そうこうしてるうちに公式サイトのカウントダウンがあと1分となる。最近のゲームに飽きていた琢磨は、SRGに少し期待していた。……もちろん、詰まらなければすぐやめるだけなのだが。

カウントダウンが秒読みになる。TLの即も一気に早くなり、追いつけなくなるほどだ。琢磨は、スマホに表示した画面から目を離せなくなる。……カウントが、0秒になった。

瞬間、スマホから真っ黒い触手のようなものが伸びた。琢磨は何が起きたかわからず、それに一瞬で飲み込まれる。そのまま、意識を失った。残されたスマホに残ったのは、簡素な文字だけ。


「Welcome to SRG」






「……っ!?一体、何が……?」


目を覚ますと、真っ黒な空間にいた。見渡す限り黒く、壁があるのか先があるのかもわからない。とりあえず歩こうとしたところで、目の前が突然光始めた。突然のまぶしい光に、思わず目を細める。光は徐々に大きくなり、その外側がポリゴンのように小さくなっていくと、中から現れたのはよくあるオペレーターのような格好をした羽をはやした小さな人間だった。……妖精というべきか。


「ようこそソーシャル・リアル・ワールドの世界へ!まずはプレイヤー情報を登録しましょう。初めに名前を……」

「いやいや、ちょっと待ってくれ!」


妖精の話を止める琢磨。突然のことに思考が追いつかない。


「ソーシャル・リアル・ワールドの世界?ここはゲームの中か?そんなゲームやアニメみたいな設定あり得るわけが――――」

「あーハイハイ。それじゃあ今から説明しますからお待ちくださいねー。こういうゲームはどれだけ先に始めるかからが勝負ですよ」


手を振りうっとうしそうに話を進める妖精。とりあえず話を聞くしかないと琢磨は引き下がった。


「そうですねー。まず私はナビゲーターの精霊。名前はアインスです。まずはあなたのプレイヤー情報とツイッター連携をするかどうかの情報をお願いしますねー。質問はいつでも受け付けますよー」

「ツイッター連携まであるのか」

「ええ。リアルを巻き込みますから何も考えずに同じ名前にしたら大変かもしれませんよ?」


不穏な言葉が聞こえた。おそらくツイッターと同じ名前にするのはまずいかもしれない。普段ツイッターとゲーム内の名前は同じものにしていたが、さすがに変えることにした。その他登録項目は、性別、アバター設定など、よくあるもの。目立たないような無難な設定にしておく。ツイッター連携は一応オンにした。


「はい、登録完了。ではゲームの説明に参りましょう。はい、あなたのスマホです」


そういうと、琢磨の手元にスマホが現れる。そこにはすでにSRGがインストールされ、起動されていた。先ほど登録したプレイヤー情報が反映されていた。


「えー、プレイヤー名はハル、女性、でスキンはこれ、と」


設定した通りの3Dアバターが画面内に表示される。これでいい、と琢磨は承諾した。


「では、これからゲームの説明をしましょう。まずこのゲームは、リアルタイムで戦うオープンワールドものです。あなたが望むのであれば今みたいにゲームの中に入り込み実際に操作することもできますが……どうしますか?」

「……」


琢磨にはもう理解が追いつかなかった。こいつは何を言っているんだ。それとも、自分は寝落ちしているのか?


「寝落ちではありませんよ。これはリアルです」


妖精が心の声を読んだかのように話す。そのまま、話を続ける。


「そーですねえ……ではまずこのゲームの一番大切なことから説明しましょうか」


そう言うと、スマホにある画面が表示される。大切なお知らせの画面が表示されたかと思うと、書き換わるように画面が目まぐるしく変わる。


「1、このゲームはランキング制です。月1更新でランキング上位者にはリアルマネーが配布されます。

2、課金要素がありますが、前借で課金することが可能です。その場合、ゲームオーバー時に料金をすべて回収させていただきます。

3、払えない場合はあなた自身を料金としていただきます。

4、あなた自身とはあなたの精神のこと。体は現実に残しておきます。

5、ゲームの中でプレイする場合、あなたの体は寝ている状態となるので深夜や時間の空いた時以外はやめましょう

6、登録した後のログアウト・アンインストールはできません。自殺は結構です

7、ゲームオーバーになった時は、強制的にゲームがアンインストールされます。その場合、記憶を失い二度とリアルマネーイベントに参加することもできません

8、参加費として全員1000万をいただきます。ゲームオーバー時に回収させていただきます」


妖精が淡々と述べる。その一つも、理解できなかった。


「こんなとこですかね。ではまずゲームルールから説明しましょうか、もうめんどくさくなってきたのでゲーム参加のほうで説明しますね。」


黒い空間が割れる。現れたのは、さっきまでいた自分の部屋。そして視界の左上に浮かぶ体力、SPという謎の数値バーが並び、右下には謎の白枠。

自分の姿を見直す。さっき設定した通りの姿になっていた。触ってみると、感触も柔らかい。


「えー、自分の体に欲情する変態的行為もほどほどにしてもらっていいですか?ここじゃ狭いんで外で説明しますよ」


妖精が窓を割り飛び降りる。一人になった琢磨は、部屋を見渡した。……物の配置はすべて一致していた。違う点といえば、パソコンや明かりなど、電気が消えている点だ。


「ちょっと―。早く来てくださいよー。飛び降りるのが怖くても大丈夫ですよー。多少身体能力は強化されてますから。あと、チュートリアルはオフラインですから、敵に出会うこともありませんよ」


その言葉通りに、窓から飛び降りてみる。体は普段から想像できないほどふわりと浮き、マンションの2階から落ちても難なく着地できた。


「このくらいの高さなら大丈夫ですね。素の状態だと10mくらいからダメージ食らうのでお気をつけて」


地面に立つ。街の風景はいつも自分が住んでいる場所そのものだ。


「えーと、ここは北海道のS市ですか。なるほどなるほど。人もそこそこいてそれでいて練習場所もある。なかなかいいところですね」


飛び回る妖精。目の前にチュートリアルの情報が出てくる。


「えーまず、この世界はこのように現実世界を模したものとなっています。ここであなたたちにはリアルタイムのpvpをしてもらうというわけですね。もちろんその他に敵モブもいます。いつどこで何と出会うかわからない、そんなスリリングなゲームですね!」


町を歩き回る。人一人、車も一台も走っていなかった。


「あともう一つ重要な情報ですが、今回のように毎日0時には強制ログインとなります。現実世界では時間が経ちませんのでその心配はしないでください。寝ていても無理やり引き込むので大丈夫ですよ?リアルマネーイベントのランキングもこの時間しか影響しません」


耳をふさぎ妖精の声を聞こえないようにする。しかしそれは無駄、声が脳内に響いてくる。


「ではそろそろゲームシステムの説明に参りましょうか。まずはスターターデッキをあげましょう」


そういうと同時に、カードを取得しましたとの表示。そのまま、右下の白枠に5つのカードがセットされる。カードには攻撃力、消費SP、能力が書かれていた。


「それを見れば大体理解してくれますね?まずは簡単なソードから。使ってみてください。あ、練習用モブ召喚しておきますねー」


目の前にかかしが現れる。目の前のカードにタッチという文字が出たので、カードが浮かんでいるところを手でタッチしてみると、ソードが選択され、右手に装備される。左上のSPゲージが消費された。試しにかかしに向けて剣を振るうと、10ダメージという表示とともにかかしが二つに消えポリゴンとなる。


「まあ大体そんな感じですね。使ったカードから消えて次のカードに代わりますんで。じゃあ次のステップのランキングについての説明と行きましょーか?」


妖精がいつの間にか持っていた杖を振ると、現れるのは現状のプレイヤー数とランキング。事前登録は全世界者にいるようで、現在の参加者は1憶を超えていた。ランキングを見ると、1万位まで賞金がもらえるらしい。しかし、1万位から5000位で10万、1000位までで100万、10位までで1000万、1位までの10人は1憶ももらえるらしい。


「お金は全部携帯に案内を出しますね。あとこのことはほかの人に話してもいいですが、気を付けてくださいね。頭のおかしい人だと思われないように」


いよいよチュートリアルが終わるのか、まとめの表示が目の前に現れる。


「編成とかガチャとかは戦闘エリア外で行ってくださいね。無防備になるので。そういったメニューはHPバーを押せば出てきますよー」


妖精の体が再び光に包まれる。そのまま、琢磨のアバターも光に包まれた。


「ではハルさん。ようこそソーシャル・リアル・ワールドの世界へ!チュートリアル突破報酬としてガチヤを回せる宝世石を3000個渡しておきますねー。あと回復薬も。これらはログインボーナス以外で手に入れるには課金しかないんで使用にはお気をつけてー」


そのまま光が明けると、琢磨、いやハルは再び自室に戻っていた。あまりに唐突な出来事に、ベットに寝転がる。


「……なんなんだよ!これ!」


女の声が聞こえる。すこしあたりを見回すが、すぐにそれは自分の声だと気が付いた。スマホが机の上にあったので見てみると、SRGが起動されていた。どうやらこれからもメニューを開けるらしい。とりあえずポケットにしまい、家の下にある鏡で自分の姿を確認する。金髪の高校生くらいの女の子がいた。二次元ではよくかわいいとされるような見た目だろう。胸もそれなりにある。完璧に趣味だ。服は、用意されていたのであろうジャージのような服装。


「自分の部屋から離れるとおう戦闘エリア内か……リスポーン地点、ってことなのか?」


とりあえず自室に戻り、できることを確認するためメニューを開く。プロフィール欄に書かれているのはレベル、HP、SP、自分の現在の持ち金。

ふと、自分の机が何か光った。前に座ると、メニューが浮かび上がる。メニューの内容は、カード強化、売却、スキル強化。これはそういうソシャゲなのか、となんとなく感覚をつかむ。とりあえず、スマホをいじりカードの種類や能力を確認する。

一通りの確認を終えたハルは、プレゼントボックスから特典を受け取る。回復薬がHPとSPで5個ずつ。そして宝世石。ガチャページを開き、ガチャ単価を見る。単発300、10連3000。よくある設定だろう。問題は、その石の値段だった。


「は……?50で120万?3000で1000万?……馬鹿げてる!」


強くなりたければ金を稼げ、ランキングに入れということか。そのばかばかしさから、スマホを投げた。その衝撃でガチャボタンが押されたのか、目の前に急に丸い玉が出現した。玉は銀色、金色と色を変え、最後には虹色となり、砕けると10枚のカードが出現する。Rが5枚、SRが3枚、SSRが1枚、そして、LRと書かれたのが1枚。


「なるほどね、このLRが最高クラスなのか……ん?」


確率が表記されていた。LR0.1%、SSR3%という文字に、目を疑う。


「ずいぶん低い確率だな……とりあえずデッキ編成しておくか?適当に入れ替えておこう」


デッキを設定し、とりあえず外へ行こうと部屋から出ていこうとしたその時だった。まばゆい光の剣が町の遠くに現れたかと思うと、その剣が町を薙ぎ払うように動く。ハルのいた部屋も真光に巻き込まれ、光に目をつむる。

眼を開けたハルを待っていたのは、更地となった町だった。ある一点を中心に、円形に薙ぎ払われているようにも思える。剣は1キロ近くを薙ぎ払ったのだろうか。ランキングを見てみると、この一瞬で5位まで上がったプレイヤーがいた。名前は裕太。


「こいつがあの場所にいるのか……?」


怖かったが、とりあえず向かってみることにした。あの場所にプレイヤーがいることは間違いない。部屋から出て、中心へと向かう。

部屋の扉を開けると、部屋が一瞬にして消え、地面に落ちた。どうやらあの光の剣に巻き込まれ、壊れたという設定になっているらしい。地面には、自室に戻るためであろう光る四角形があった。プレイヤーがいるであろう中心に向けて、走る……ところで、後ろから声を掛けられる。


「お前、琢磨だろ」

「……っ!やあっ!」


男の声に反応し、セットされていたソードのカードを選択し、振り向きざまに切る。男は腰を引いてうまくかわした。よくある、腐向けに人気に出そうなイケメンだな。とハルは思う。ソードを構え直し、男を狙う。


「待った待った!俺……私だよ!ヒミ!」

「ヒミ?……工藤氷見か?」

「そうだよ。ゲーム内ではレオってしてるけど。あんたもこの世界に来てたのね」


氷見は琢磨の知り合い、いや幼馴染だ。家が近く、よく遊んでいたし、高校も一緒だった。現実では女の子だが、こちらでは男のアバターにしているらしい。


「ああ……まったく、えらいことになってるもんだな」

「あんた中央に行くの?やめときな。今の攻撃を見ただろ?死にに行くようなもんだよ」

「……でも、あそこにプレイヤーがいるのは確実だろ?それに……」


ランキングを見せる。全世界5位に、日本・北海道・S市・裕太という名前。


「あいつを倒せばあとは逃げるだけだ。それで金を稼げばこのゲームからもおさらばだろ?」

「……そんな簡単に行くと思う?」

「何言ってんだ。レオ」


あえてプレイヤーネームで呼ぶハル。レオは、まだ迷っているようだ。


「俺は……私は無課金でもほかのゲームで勝ち続けた。お前とな。だからこのゲームもすぐに攻略してやる!」


走り出すハル。次いで、レオも走り出した。だが、彼らはまだ理解していなかった。このゲームの恐ろしさ、理不尽さを――――

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