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風が少女へ語る時  作者: 胡桃パンの元
第1章 風(ふう)との出会い?
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第6話

よろしくお願いします。



(ふう)、という名を聞いたこと、ありませんか?」


「っ!?」

(せつ)(ふう)の事を知っている?

予想外の人物から(ふう)の名前が出たことに、(あまね)は驚きを隠すことができなかった。

_________________________


風の吹かぬ屋上で、長い沈黙が訪れる。

「…やっぱり、し、知っていますよね」

(せつ)は普の表情を見るなりそう言った。

顔に出てしまっていたようだ。


何故その名前を知っているのかと普が(せつ)に問いかけようとした矢先、(せつ)が叫んだ。

風様(ふうさま)の居場所をど、如何(どう)か御教え下さい!」


「……え、(ふう)さ、様!? あんな奴に様付け?!」

(せつ)は真剣だったのだろうが、チビでなんか透けていて、騒がしく、下僕になれと言ってくる奴が様付けされていると知ると、笑いが込み上げてきた。


すると、突然風が吹いた。

暖かい風が普の目の前に降りてくる。

『ねぇ~、笑うなんてひどいナ~。うんうん』

勝手に消えて勝手に現れたのそいつはやはり(ふう)だ。

なぜだかいつもよりさらに体が透けている。


(ふう)様っ、此処に居られるのですか? 答えて下さい!」

(せつ)は屋上を見回した。

(ふう)のいる場所は普と(せつ)のすぐ傍だというのに(せつ)は辺りを必死になって捜している。

「見えてない……?」

普は(せつ)の反応からそう考察した。


『そのと~り! よくわかったネ~』

(ふう)がにっこりと普に無邪気な笑顔を向けた。

「よくわかったね、じゃないわよ! ちょっと説明して!」

(ふう)とは対照的に普は(ふう)を睨んだ。

『むぁ~、面倒くさいナ~』

そんな普を余所に(ふう)はいつも通りというべきか、空中をくるくる回る。


「……普さんには(ふう)様が見えているんですね」

(せつ)は普の視線の先を見つめた。

(せつ)は何かを決心したように一度深呼吸をする。


「……し、失礼いたしますっ! 【解放】!」

(せつ)がそう叫ぶと同時に(せつ)の体に変化が起こり始める。

ショートボブの黒髪は雪を思わせる真っ白な髪へ変化し、茶色の瞳は黄金へと変わる。

ふわりと冷たく白い光が包み込み、光が収まると、

雪のような純白の着物に身を包んだ(せつ)がそこにいた。


『【雪波】!』

(せつ)が両掌を(ふう)へ向け叫んだ。

突如発生した大量の小さな雪の結晶が(ふう)に目掛けて放たれる。

波の如く唸りをあげながらそれは、(ふう)を飲み込んだ。


(ふう)っ!!」

普は(せつ)のほうを振り返った。

「なんて事するの!!」

普はいきり立って(せつ)を責めた。しかし、(せつ)の瞳はまっすぐと(ふう)のほうを見ていた。


『この位で倒れるような御方では、あ、ありません。そ、それに…』

(せつ)はどことなく悲しそうな表情を浮かべる。


『このままでは、いけないの、です』


眉をさげ、俯くその表情はいまにも泣きだしてしまいそうだ。

そんな(せつ)に普は黙ってしまった。


『むぅ~、ひどいナ~命令してるのは暁闇(ぎょうあん)だよネ?』

そこに、(ふう)の緊張感の欠片もない声が聞こえてくる。

普と(せつ)が同時に(ふう)を視界にとらえた。

(ふう)の姿が先ほどよりもはっきり見て取れる。

(せつ)にも見えるようになったらしく、(ふう)をその黄金の瞳で見据えている。


『あ~あ、せっかく薄めたのに戻っちゃったヨ』

自分の手足を見て、(ふう)は頬を膨らませた。


普は(ふう)の無事を確認し、ほっと胸をなでおろした。

(ふう)様。如何してこの様な事をな、為さったのですか!?』

対して(せつ)(ふう)に怒りの感情を向けていた。


『……どうせ、暁闇(ぎょうあん)に僕を捕まえろとでも言われたんだろうケド、僕は戻らないヨ~』

(ふう)の周りを風が力強く回り始める。

『どうしてもと言うのなら…僕は本気で君を相手にするからネ』

姿は小さな子供のはずなのにその瞳から感じる殺気は、辺りの空気を震撼させた。


いつもの笑顔はその顔になく、普は(ふう)が別人になってしまったようにも感じた。

声を掛けたくても言葉が頭に浮かばない。


『どうしても、ですか?』


『どうしても、ダヨ』


『……わ、わかりました。(ふう)様が其処まで仰るなんて、余程の理由がある、と存じます。この(せつ)【雪の妖精】の名のもと(ふう)様にしばらくの間お仕えさせていただきます』

(せつ)が半分諦めたように呟いた。


『むふふっいいよ~これからよろしくネ~』

先ほどまでの殺気がふっと消え、(ふう)は子供らしい笑みを浮かべた。


普は何が何だかわからず、ただ茫然とそこで突っ立っていた。



誤字・脱字等ございましたら、教えていただけると幸いです。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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