第44話
よろしくお願いします。
「少し、話をしようか……」
どんな話が始まるのかと、緊張で普は唾を飲み込んだ。
_______________________________
暁闇は屋上に設置してあった自販機の前に行くと、黒い手袋をした手で懐を探り、長財布を出す。
何をするのかと警戒する普の前で、千円札を入れ、ピッとボタンを押す。
ごろごろと落下する音がして缶コーヒーが出てきた。
「な、何してるのよ」
困惑する普をよそに、暁闇は早速購入したコーヒーを一口飲む。
「おごってやる。好きなものを選べ」
警戒していたのに、少し拍子抜けする普。
「じゃ、じゃあ、紅茶」
『わ、私は冷たい林檎ジュースでお願いします!』
「いいだろう。買ってやる」
普と雪は、暁闇から手渡された飲み物を手に、目を見合わせる。
思ったより怖い人ではないのか? と首をかしげる普。
いや、毒が入っているかもしれないとペットボトルをじっと睨みつける。
暁闇は、コーヒーを飲みながら、口を開いた。
「【風神】は、いつ暴走してもおかしくない、時限爆弾のような存在なのだ」
「時限、爆弾……?」
暁闇はこくりと頷いて話を続けた。
「【神】と呼ばれる妖精がなんなのか知っているか?」
「……詳しくは知らないわ」
「【神】と呼ばれる妖精は、それぞれの属性を司る妖精の中で最も力の大きな存在である。よって、【神】が動けば影響は計り知れないものとなる。特に【風神】は、その影響が大きいのだ」
「……えっと、つまり?」
「【風神】が、長く一か所に留まることは出来ない」
普の瞳が驚きで見開いた。
それは、ずっと一緒にはいられないことを意味していた。
「……ずっと同じところにいられないって、どのくらい?」
普は俯きながら、小さく尋ねた。
「後一年もない」
俯いたまま、その目を見開く。
「【太陽神】の金烏や、【月神】の玉兎も? 雪も?」
口早に言葉が紡がれる。普の瞳が不安げに揺れた。
「当然奴らもだ。雪の場合は【神】と呼ばれる存在ではない。しかし、その力は決して弱くはない。なれば、多少なりと影響はある。
第一に妖精と人が永遠に同じところで暮らすことは不可能だ」
暁闇からの非情な宣告に、普の声が震えた。
「……そう、なんだ」
『あ、普、さん……』
気づけば、普の瞳からぼろぼろと涙がこぼれていた。
とめどなく溢れる涙に、普自身も困惑する。
雪が普の隣でおろおろと戸惑った。
まだ、数か月、もう、数か月。
風たちは、普のなかで、いつも一緒にいるとても大きな存在となっていた。
離れがたいずっと一緒にいたい、大切な、……友達。
けれど、ずっと一緒にいることは叶わない。
暁闇の言うことが正しいのならば、もう一年もない。
また、一人に戻ってしまうことに酷く悲しむ自分がいる。
「【風神】が同じ場所に留まれば、いずれその地の天候が荒れ狂い嵐が起こる。やつは一度嵐を巻き起こし、人々の生活を危険に晒した前科がある。だから、我は奴を邪神と言ったのだ」
暁闇は闇色の瞳を細め、険しい表情を作る。
「奴の場所を教えろ。このまま放っておけば、取り返しのつかないことになるぞ」
普は、手の中に納まった紅茶のペットボトルを見つめながら、じっと考える。
伯は、いや、風はどこかへ逃げて行ってしまった。
けれど、どこにいるのか、探そうと思えば見つかる気がした。
しかし、暁闇に教えてしまえば、風と碌に話すことなくお別れしなければならなくなる気がするのだ。
まだ、風には聞きたいことがある。
まだ、話したいことがある。
普は、顔を上げた。
「嫌よ」
その瞳の奥に決意の色を宿して、暁闇の頼みをはっきりと断った。
「ほう、小娘が。我の話を聞いておいて、まだ断るか?」
暁闇は、闇のオーラを放ち、普を威圧する。
普の手足が小さく震える。冷や汗がにじみ出る。
「私に攻撃でもしてきなさいよ! やってみなさいよ!」
それでも、意思は変わらない。
「教えないから。風とは、まだ話したいことが山ほど残っているのよ」
負けじと暁闇を睨みつける。
「あんたの出番は私の後よ! 出直しなさい!」
そして、
暁闇の笑い声が響いた。
「くはははははっ、ははははははっ!」
普は毒気を抜かれ、雪もぽかんと放心状態になる。
「ふん。大した娘だ。ここは下がろうではないか」
先ほどの威圧はどこへ消えたのか、暁闇の顔には凶悪ながらも笑みが浮かんでいる。
「どうやら、我の出番はまだ先のようだ。精々爆発しないよう気を付けるんだな」
そう言い残すと、暁闇の姿が煙のように消え去った。
残された普と雪は、気が抜けて膝で座り込む。
「あ、案外、は、話の分かる奴じゃ、ないの」
普の声はまだ震えていた。
『あのように笑っている姿は、わ、私も初めて見ました』
二人の頭上には、どこまでも青空が広がっているのだった。
A:どーもAでーすっ!
B:Bです。
A:前回のあとがきに引き続き、まだ真っ暗だぜ。
B:そうだな。
A:いつになったら電気復旧するんだ?
B:あとがきに電気は通っていません。
A:そうでした。って、それじゃあ、普段灯りどーなってんだよっ!
B:あー、魔訶不思議なあとがきパワーだよ、きっと。
A:あとがきパワー?なんだそれカッコいい!
B:いや、ダサいだろ。
A:みんな!オラにあとがきパワーを分けてくれ!
B:いや、何それっ!?
A:そうしたら、この部屋に電気がつく!
B:なんて馬鹿馬鹿しいパワーだ。
A:言い出したのはBだろ?
B:……否定しない。
A:あ、電気がついた! あとがきパワーが来たんだ!
B:……あ、うん。って、これ、あとがきなのかたまに分からなくなるな。
A:何言ってんだよ!正真正銘のあとがきだろ?
続く……?




