第4話
よろしくお願いします。
この辺りから本格的?になってくると思います。
朝の騒動が終わり、休み時間に風を叱りつけてみたがあまり反省していないようだった。
全く、先が思いやられる……。
とはいえ、許可を出してしまったのは私。迂闊に他人に頼った罰なのかもしれない。
……あれ?
そういえばコイツ、私を下僕になれとか言ってなかったけ?
……きっと冗談だよね。
たぶん。
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四時間目の終了を告げるチャイムが学校中に鳴り響く。
無事、午前中の授業が終わり普は屋上でお弁当箱を開けた。
「ねえ、私思ったんだけど、……あなた幽霊?」
普はいままで少し思っていたことを風に訊ねてみた。
すると風はほっぺを膨らませた。
『むあっ、失礼な! 僕は【風の妖精】風。何処が幽霊に見えるのサ?!』
「いや……透けてる所なんて特に……」
普が透けている風の体を指差した。
風は自分の体をみつめ、
『うわっ。透けちゃってる!?』
突然大声を上げ、空中で手足をバタつかせる。
どうやら、本気で驚いているようだ。
「えっ、気付かなかったの?」
『あっ、わざと透かせている事忘れてタ~』
風は舌を出して拳をコツンと頭に当ててみせた。
「……あっそ」
騒々しい風を冷たくひと睨みしてから、普は卵焼きを一つ口の中に放り込んだ。
いつも通りのお母さんが作ってくれた卵焼きだ。
だが、いつもよりなんだか美味しく感じた。
いつもと特に何かを変えたわけではないようだが……。
そういえば誰かと話しながらお弁当を食べたことなんて久しぶりだなぁ
こういうのも悪くない…
普は次に白ご飯を口に運んだ。
ふと、さきほどのことへの疑問が浮かんだ。
「はれ? わばほふはへてふの?」(あれ? わざと透かせてるの?)
不意に浮かんだ疑問を問いかける。
『ねぇ~僕が言うのもなんだけどちゃんと食べてから喋ろうヨ。行儀悪いヨ』
普は羞恥で顔から火が出そうなほど真っ赤に顔を染めた。
一番言われたくない相手に…こんな正体のよくわからない奴に言われるなんて!
……原因を作ったのは私だけど何か嫌。
赤面しながら普は白ご飯を飲み込んだ。
「……で、さっきの続きなんだけど、どうしてわざと透かせてるの?」
気を取りなおし、普は風と向き合った。
『こっちの方が他の人に見えないから移動しやすいしぃ~それに』
「それに……?」
普はごくりと唾を飲み込む。
風はいつもの笑顔とは違い、初めて真面目な表情を浮かべた。
『悪戯するには最高の状態なのダ』
「……え? い、悪戯?」
『そう! これだと姿を見られることなく悪戯し放題なのダ!!』
風は堂々と言った。言いきった。
「ふ~ん。そうなのね……」
普は呆れたとばかりに深い溜め息をつく。
『もちろん透けないようにできるよぉ~。僕は【風の妖精】だからね、この体は風が集まって出来ているようなものだから~』
風が両手を横に広げ、目を閉じる。
勢いのある風が風の手から吸い込まれていく。
普はその様子に目を奪われ……
「あっ、お弁当が吹き飛ばされちゃうじゃないっ」
ることなくお弁当をいそいそ閉まった。
とんっ
屋上のコンクリートに誰かが足を着けた。
もちろん風である。
違うのは、その姿が透けていないことだ。
丸い緑色の瞳が一層輝きを増している。
「じゃーん! 実体化ダヨ!」
普は改めて風をまじまじ観察し、指先で風の頬をつついてみる。
ふにっ
「お~ぷにぷに~」
子供らしいすべすべの肌だった。
思わず普は風の頬へ両手を伸ばした。
風は頬を触られるのがいやなのか、不機嫌丸出しの顔で普を睨んでいる。
「む~。どこが楽しいのか僕にはわからないナ」
普は聞こえている風の声がいつもと少し違うことに気がついた。
風の声はどことなく普通に聞こえてくるものとはちがっていて、頭の中に流れ込んでくるような声だったのに、今は耳からはっきり聞こえている。
「なんていうか……色々すごいわね」
「むふふっ。【風の妖精】だもノ~」
風は小さな胸を張った。
「で! 下僕になる決心はついタ?」
「……はいっ!?」
風はにっこりと邪悪とも言えそうな笑顔を浮べた。
キーンコーンカーンコーン
「ふざけるなぁぁああっ!!」
屋上で普が一人叫ぶのと予礼のチャイムが同時に鳴り響いた。
***
とある薄暗い部屋の中に人の姿はしているものの、人ではない不気味な雰囲気を漂わせる二人の人物がいた。
『奴は……奴の行き先は掴めたか?』
黒いマントを羽織った大柄な男が傍にいる妙齢の女性に感情の籠らぬ声でそう言った。
低く唸るような声は獣のようでもあり、夜を包み込む闇のようであった。
『雪が行方を追っています。もう少しは時間が掛かるものかと思われます』
女性はその揺れる胸を押し上げるように腕を組んだ。
『……申し上げにくいのですが、暁闇様』
『どうした? 遠慮するな。申せ』
女性は眉間にしわを寄せる。
『なぜ奴は……風神は禁忌を犯したのでしょうか?』
二人の間でしばらく、実際はほんの数秒程度の沈黙が訪れた。
『奴が、邪悪な存在であるからだ』
男はマントを翻し、闇の中へと溶け込み、部屋からゆっくりと出て行った。
誤字・脱字等ございましたら、教えていただけると幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございます。




