第38話
普の家。
今日は両親どちらも家にいない。
帰って来るまでは十分な時間がある。
「適当に座って。で、腕出す」
普が救急箱を床に広げた。
伯はしぶしぶ腕を出した。
白かった。
色白。
「あなた、日焼けという言葉を知らないのかしら。なんて羨ましい」
もう堂々と普が恨み言をはいた。
伯はそれに苦笑いを浮かべる。
消毒液をコットンに染み込ませ、傷に当てる。
「っ~」
伯が顔を歪めた。
「我慢しなさい」
普はテキパキと傷に消毒液をつけていった。
「ねえ、伯。突然だけど」
「何?」
「髪、どうやったらそんなさらさらになるの! 枝毛の一本もないじゃない!」
普が真剣な表情でそう叫ぶ。
「え? 髪?」
対して伯はキョトンと首を傾げた。
「そうよ! 雪もさらさらだけど、それ以上に何この羨ましすぎる髪。これだけ長いのに全然傷んだ様子がないなんて!」
「そんな事、別にどうでもいいんだけどな」
「……髪は女の命って言葉を知らないのかしら?」
「特に何もやってないし、俺は男だ。女の事は知らない」
「髪を乾かす時とか大変じゃない?」
「別に。ちょっとこうすればいい」
伯が髪の根元に手を当てた。
ふわっと風が髪を揺らす。
一本一本が繊細な糸のように光が反射して光る。
髪は風に流されて、ふわりと右の方にすべて寄せられてまとまった。
「……こんな使い方初めて見たわ」
普はぽーっとそれを眺めていた。
風の力で乾かせばドライヤーより痛まないのだろうか。
「うん。教えてないから」
「え?」
「何でもない」
普は消毒液を塗り終わり、包帯を取り出した。
ふと、伯と目が合った。
風と目の色が似ている事に気がついた。
「……」
「えっと……どうした?」
伯にそう言われるまでのしばらくの間、何故か伯の瞳から目が離せなかった。
「あっ、何でもないの」
普は伯の腕に包帯を巻いていった。
「……綺麗ね。目も髪も」
若葉のような緑の瞳と、同じく緑の髪。その長い髪は光に照らされて白や青に見えるのがまた不思議だ。
「そんな事はない。この色は孤独の色だよ」
伯の返答の意味は普にはよく分からなかった。
丁度手当てが終わった時、普の家に誰かが入ってきた。
バタバタと慌ただしい足音が近づく。
普の部屋の扉が勢いよく開いた。
「あ、普さん! 風様、風様を見かけませんでしたか!!」
それは、いつになく慌てた雪だった。
走ってきたため、荒い息を吐き出している。
相当焦って走ってきたのだろう。
「風? まだだけど、どうせすぐ戻ってくるでしょ」
いつもの事だと普はけろっとしている。
「そ、それが、今日の天気の急変。あ、あれは鳴神様です。た、ただで済むはずがありません!」
雪は泣きそうになっていた。
心配の原因は風である。
雪を泣かせたあの餓鬼殴る。
と、雪は部屋にいた伯に気がついた。
「……あ、あの、この方は?」
色々な妖精やら神やら知っている雪だが、伯に向かっては頭を捻らせていた。
「伯って言うんだって、怪我してたから手当してたところよ」
「無理やりっぽかったけど?」
伯が口を尖らせて呟いた。
「余計な事言ってると傷口蹴るわよ?」
「……怪我人にそれはひどい」
普の威圧にすぐに黙った。
「伯さんですね。お見苦しいところをすいません」
雪は礼儀正しくぺこりと頭を下げた。
「それで、雪。鳴神様って?」
普の質問でここに来た理由を思い出し、雪は再び不安の表情を露わにした。
胸の辺りに両手を組み、祈るような姿勢をとった。
「ら、【雷神】です」
「また物騒なのが出てきた。どれだけ来れば気が済むのかしら」
普が深くため息をついた。
伯はそんな二人を余所に窓の外に吹く風に当たりながらぼーっと空を眺めていた。
「……風は自由で、どこまでも飛んで行けて……そして、孤独だ」
夏の生暖かい風がやけに冷たかった。
A:本編より面白いあとがきを目指して!アーユーレディー?
B:…………。
A:何か言えよぉぉおおお!
B:お前がそんな英語を知っているとは……。
A:このくれえ知ってるわぁあああ!馬鹿にすんな!
B:ではその意味は?
A:え、えーっと……イエーイって言えよ……的な?
B:うん、うん。よかった、よかった。
A:何がよかっただぁぁあああ!
B:ぐはっ!?
A:だってそうじゃん!みんなこのあと返事くれるぞ!
B:意味を間違ってるぞ。
A:どんな意味だろうが、返してくれんのには変わりないじゃん!
B:ま、まあそうだけど……
A:返してくれるなら、どんな意味でも良いんだぜ!
B:うーむ。馬鹿思考。これじゃ、本編より面白い話には一生なりそうもないな。
A:何か言ったか?
B:いや、別に。
続く……?




