第2話
よろしくお願いします。
夢だろうか? いや、夢であってほしい。
いったい何? 透けている人間がいるわけがないのに。
どうなっているの? 人間が空を飛ぶの?
そんなわけがない!!
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あの後、何故かこの少年は普の後を付いてきていた。
普が後ろをさっと振り返り、ふわふわと浮いている少年を睨みつけた。
「いつまで付いてくるわけ?」
すると少年はにやりと笑い、
『さあネ~』
と、さして興味無さげに両手をぶらぶら揺らす。
『君に友達が出来るまでカナ~』
少年が何気なく呟いた言葉に普は耳を疑った。
「……なんで知っているの?」
『む?君に友達がいないこと?』
少年が顎に手を当てながら首を傾げた。
「君じゃない。私は、普。東間 普よ。」
『ふむ。知ってるヨ。高校生になったんだよネ~』
普は息をのんだ。
「な、何なのあなた……」
その言葉を待ってました! と言わんばかりに少年はくるっと一回転してみせた。
それと同時に暖かな風が普の体を包んだ。
『僕は、風。風の妖精だヨ』
自称【風の妖精】風は、ほほ笑んだ。
普はこの時、風の瞳が透き通るような緑色であることに気がついた。
見たことのない顔なのに、どこかで何度も会ったような気さえした。
「で、私のことをどうして知ってたの?」
長話をしても意味がないと思った普は、単刀直入に聞いてみる。
『え~、もうちょっと驚いてくれてもいいんじゃないカナ?』
「さっさと答えて!!」
めんどくさそうに頭を掻きながら風は答えた。
『君が教えてくれたんだヨ?』
「は?」
普は額に眉を寄せた。
「どういう意味?」
『そのままの意味ダヨ~。君は小さいころから友達がいなかったよネ~』
グサリとその言葉が普の心に刺さる。
『お友達がほしいよ~って泣いてた時もあったよネ?』
「っ!?」
『風みたいに自由になりたいとか、誰かとお友達になりたいってあの階段でいつも隠れて泣いてたこと、僕ずっと見てたんだヨ』
「そんなはずない! あそこは人なんて通らないし、居たとしても私が気付くはずだもの!」
彼女は赤面しながら大声を上げた。
『泣いてたことは否定しないんだネ~』
「うっ……」
かつてあの階段の隅で泣いていたことは本当だった。
だがそれは、何年も昔の話で彼女自身でさえ忘れかけていたことであった。
風は、顔を赤く染めた普に今までで一番悪戯気ににんまりと笑う。
『その時、君は言ったよネ。”かぜさん。お友達を作る勇気をちょうだい”ってネ』
辺りに散ってしまったはずの桜の花びらが風を中心にゆっくりと空を舞い始めた。
茶色に染まっていた花びらがじょじょに薄い紅色に変わっていく。
風を中心として回る桜の花びらは、普の周りをも回り始めた。
その光景に普は目を奪われた。
夕日に照らされた花びらは、ただただ美しかった。
『僕は君にその勇気をあげにきた妖精だヨ』
桜の花びらを自在に操る風は、普の目には本当に【風の妖精】に見えた。
『その代わり……』
『僕の下僕になってほしいナ~』
「はあ!?」
だが、それはこの一言で崩れ去った。
『友達を作る手伝いをしてあげる代わりに下僕になってって言ってるんだケド?』
「ふざけないで!誰があなたみたいな正体のわからない奴の下僕になったりするもんですか!!」
『だから~僕は【風の妖精】だってば~』
「信じられない」
普は風を睨みつけた。
「それに今の私には友達なんていらないの! もう、知らないっ」
『え~、そんな~』
普は後ろを振り返ることなく全速力で走り、家路を急ぐ。
家に入るとすぐに鍵を閉め、その場に座り込んだ。
「何だったの……?」
普は顔を横に振るとパンっと頬を叩く。
「しっかりしなさい……私!」
普は何事もなかったように忘れてしまおうと思ったが風の存在が頭から消えることはなかった。
「……あっ、事故から助けてくれたお礼を言うの忘れてた。」
普はため息をついた。
誤字・脱字等ございましたら、教えていただけると幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございます。




