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愛ゆえに

作者: 東山ゆう
掲載日:2016/11/26

昔に書いて消した作品の再投稿です。ネタが古いです


「ッキャー! 食人よおー!」


 かん高いギャルの悲鳴が響いた。



「フン! この現代日本のいまどき食人なんてあるものか! これだからメディアに毒されたヤングどもは……」


 俺はまったりとアフタヌーンティーを飲み干すと、前髪を美しくかき上げつつ悲鳴の出どころを見やった。


 するとそこには、


 流れる金髪、魔女ルック。輝くばかりに美しい美少女が、ミニスカ女子高生を頭から丸呑みにしていた……


「……うっそおぉん……」

 俺はゴシゴシ目をこすってみた。


駄目だ、俺の目は今日も正常運転間違いなし。


えっと、どうしよう。

とりあえず、写メ撮っとこう。



 そうしている間にも美少女はごっくんと女子高生を飲み込み、続いて隣のイケメン彼氏を平らげ、次の獲物探しにとりかかった模様。


「ひぃー、お助けぇ~!!!」

 逃げまどう人々。


 丸呑み美少女は腰を抜かして動けないハゲ親父を一瞥し、よいしょと飛び越してまっすぐ俺の方角へ欽ちゃん走り。


 いやいやいや無いな、コレは無いな。


これだけ人間が居るのに、よりによってこの俺に狙いを定めるなんて猫の鼻にメンソレータム塗るくらい有り得ないな。

ってか欽ちゃん走りもかなり有り得ないな。


 いやはやしかし悲しいかな、どうやら美少女は俺にロックオンだったらしい。


何故ならばぐわしっと俺の肩が掴まれたからだ。


 ヤバい、写メなんて撮ってる場合じゃなかったよ~! 

 って俺、マジで食われる五秒前?


 俺の目の前で美少女が可愛らしくにっこりと微笑み、そして……

「ちょっ、タンマ、美少女さん、俺、美青年は美青年でも毒を含んだ美青年だからきっと食べてもおいしくないよ……?」


―――バクッ!


「ピギャー!」


俺の全身はなんか湿っぽい暗闇に包まれギュムギュム吸い込まれていった。


……ああ、俺はこんなわけわからん死に方で十七才ピチピチ童貞で死ぬんかい……。

日本人のカメラ好きDNAよ、許さん……!




うう、全身シェイプアップー……んぅ?

「……んぉう? 俺、生きてる……!? ここどこ?」


恐る恐る身を起こし、キョロキョロとあたりを見渡してみても、何処までも薄ぼんやりとした闇の世界が広がっているばかり。

「はぁ~~~~い!! ここはぁ~、私のお腹の中でぇっすぅ!!!」


「ああ~、そっか~、キミのお腹の中ですか……? ってギャァァァアア!!!!」


し、食人美少女、さっき俺を踊り食いした食人美少女が目の前にいるぅぅぅぅうううっ!!!!


「ギャアアアア寄るな見るな触るなあ―!! 食われるー! アレ? でも食われた先でまた食われるー! うわっ! エンドレスで食われる俺ェー!」


「お、落ち着いてくださぃ~、わ、私はぁ、YOUにお願いがあって……、食べるつもりは毛ほども無いんですぅ~……信じてください~!」


「ギュムギュム食ってたじゃねーか!!! 出せー! この変な空間から出してくれェー!」


困惑しきりの美少女そっちのけで俺はわめき散らした。

「あぁぁ暴れないで下さ……わ、私のお願いを聞いてくれましたら元の世界に吐き出……ゴホンゲフン、返してあげマスから~! だからぁ~、あの、あのあの、あー……人の話を聞けコノヤロウ!!!」


 じゅっ


 奇妙な液体がやわらかい地面(?)から滲み出て俺の靴底が溶けた。


「…………お兄さん猛烈に落ち着いたよ。君のお話が聞きたいな~。」


「はぅ!本当ですかぁ~! よかったぁ~!」

 人食い美少女がパッと顔をほころばせてピョコンと跳び、謎の液体が数滴はねた。

 悲しいことに、こんな状況でも美少女は美少女、とっても可愛らしかった。




「一目惚れなんですぅ。」


「は?」


「私ぃ~、エリザっていいます。え~と人間の言う、……鬼? みたいな一族なんですけどぉ、あ、普段はチベットの奥深くにひっそり暮らしてま~す。デモ、」

 あぁっ! と美少女エリザはピシャッとおでこに手を当てた。

「私、あんなド田舎でピチピチハチキレムンムンのボディ持て余して一生終えたくない!! ロマンス求めて日本キマシター。」


「なんでまた日本に……。」

「フジヤマ、スシ,とってもワンダホー。イエローモンキーみな優しかった。」

 ほぅっ、とため息がエリザの口から漏れる。

「絶対意味わかって言ってねぇだろ……」


「さっき、私にカメラを向けてるYOUを見てビビビッときたんですぅ~、嗚呼、私はあなたと結ばれる運命だなってビビビッ!!!」


 待って、どこら辺で?

 どこら辺で運命を感じろと?


「私の種族、強ぉ―い愛を感じた相手はとりあえず食べちゃうんですぅ。人間、よく、食べちゃいたいくらいスキっ! て言いますよね~? ソレをマジでやってるんでーす。」

「わかった、もうおまえら絶滅しろ、頼むから」


 エリザは俺の哀願をまったく無視してうっとり夢見心地に話を続けた。


「意中の人を体内に取り込んで愛の告白……。はぁぁあん、ロマンティックですぅ~! 乙女の憧れですぅ~!」


 謝れ、全国の乙女の憧れに憧れる男たちに泣いて謝れ。土下座しろ、という俺の力いっぱいの心の叫びは届かなかった。


「ねっ? 私、YOUに愛の告白がしたかっただけなんですぅ。取って食べちゃう怖ぁ~い鬼さんって訳じゃないんですよ~!」

 そう言うとエリザは長い金髪をフワンッとなびかせ、きゅるんっと急接近して上目使いに微笑んだ。


物凄~~~く可愛く、不覚にも思わず胸が高鳴ってしまう。

あわてて下へと目をそらせば、両肘に挟まれ巨大な胸がぷるるんとこんにちは。


ぐぼっ……。


「あ、あの、あれ? じゃあ君が最初に食った女子高生とその彼氏もここに居るの……?」

「あ、あれはぁ~、私のお昼ごはんですう~、アン、いやだぁ、そんな、気にしないで下さい~。もぉ消化しちゃったんでここには居ないですから~! 二人っきり、で・す・よぉ☆ ……ゲップ」


 かつて無いほど嫌な二人きり!!!!!


「うふふ、ドキドキしちゃいますねぇ~~~」

 いや、別の意味でものっそいドキドキの非常事態だから。


素っ裸のターミネーターに服よこせ言われた時くらいの非常事態。


俺が石のように固まってしまったので、エリザも流石にドン引きされている事にうっすら気付いたらしい。


「あ、あぅ……あの、…やっぱり……駄目ですか? 私のこと、嫌いですか……???」

眉をきゅっと下げ、エリザの悲しそうな顔がドアップで迫ってきた。


ウルウル揺れる瞳の端にはキラリと光る女の子の武器がスタンバイ。


「う……っ」

 かっ、可愛い……


な、なんだ!? この押し寄せる時代の波のような愛しさは……?


 いやいやいやいやいやまてまてまてまてまて俺、相手はアレだ、人食い鬼だぞ!?


 ……でも可愛いなァ……


お昼ごはんに二人ぺろりだぞ!? まるで魔人ブウだ! 魔人ブウと恋愛とか絶対成立しねぇだろ! 


……でも可愛いんだなぁ……


「うううぅぅぅぅうう……だぁっ! やっぱ無理無理!! 魔人ブウ無理! うん、人はやっぱ見た目より中身が大事だよね!!!」


「はぅうっ……!! そんな……酷い!」

「酷くねぇ!! 大体君ねェ、見た目と中身のギャップ甚だしすぎ!! もっとこう……メガネ学級委員なのに実はドジとか、そういうのが俺の理想なわけ! それくらいで抑えといて欲しいわけ! わかる? わかんないかな~?」

 おぉ、我ながら一部の特殊な人にしかわからん例え。


「……どぉぉ~しても駄目ですか?」

「どぉぉぉ~~~おしても駄目!! ダメダメダメー! 無理! 不可! ……うぉ。」

慌てて俺は言葉を切った。

エリザがポロポロ泣き出したのだ。


「う……、な、泣いても駄目だぞー……」

「……っ、ぅ、わ、私が人間じゃないからですか……?」

「い、いや、そういう訳じゃ……ん? そういう訳なのかなー?」


「うわぁあああ――――――――――――――んっ!!!!!!!」


はぎゃわあああぁぁぁ。


ヤバい、このままでは乙女の涙パワーで押し切られてしまう。一刻も早く泣き止んでもらわねば。


「あぁっ! ゴメン、ゴメン、よぉーしよーしよしよすぃよっしゃしゃしゃ……」

 俺はエリザの頭をムツゴロウさんもビックリの神速で撫で撫でした。


「はうぁ…ひっく……うぅ……良いんです、突然、ムリ言った私が悪いんですぅ……。」

良かった。なんとか納得して頂けたようだ。ちょっと頭焦げたけど。


「いやいや、俺もちょっとツッコミがキツすぎたわ、ゴメン……。あの、そろそろこっから出してくれないかなー?」


「……残念ですけど……実は…もう晩御飯の時間なんです……」


 エリザはしなやかな指先で涙を拭いながら言った。


「はぁ。」

「私、あなたに愛される事は諦めます……ひっくゅ……でも、私はあなたを愛してる。この気持ちはヘヴィーですぅ。アッチッチですぅ。誰にも止められません~」


「……はぁ。」

 あれ? なんかいやな予感。

フランクかつフレンドリーな会話なのにそこはかとなく漂うこの緊張感はなんだろう。


「こうなったら消化せずにはいられません~。」


じゅわ。


謎の液体、アゲイン。


……これってまさか……まさか消化液?


「うぉっちょっ、待て待て待て待て! 俺今めっさデンジャー? てか死ぬぅ! 死んじゃう!!!」


「あなたは私の血となり肉となって生きていくんですね……! はぁあん、愛する人を吸収するなんて、これはこれで超ロマ~ンティックですぅ~溶ろけますぅ~。」

「微塵もロマンティックじゃNEEEEE―――――――――ッ―!! 間違ってる、あんたのロマンティックはバブル時代の金銭感覚ぐらい間違ってる!!!」


 じゅわじゅわ。


「うあ熱ぢぢぢっ! 足が溶けちゃうーっ! ゴメンナサイ神様、溶ろけるような恋がしたいとか思ってゴメンナサイもういいです!!!」


 う……


……このままでは本当に死ぬ……死んでしまう…………。



――いいじゃないか。



ふ、と心の中に声が響く。

いいじゃないか……こんな死に方でも……。

こんな世界にも、俺なんかを好きって言ってくれる奴がいたんだ……。

 俺は抵抗を止め、目を閉じる。このまま死ぬのも良いさ……、と、その時……。


どこからか、聞こえた。俺の、生きる目的……。

 

――――冗談じゃない、今日は、ガ〇ダムSEEDの最終回じゃないか――――!!


「うぉお俺はまだ死ねねぇ―っ!!!」

俺は渾身の力をこめてエリザに突進した。


 ドガッ!!


「がごふっ!!」

 見事に腹に決まってしまった。


 不意を突かれたエリザがぺしゃっと水溜りに尻餅をつき、うずくまる。見た目は可愛い女の子なだけに心が痛むが、その百倍くらい防御本能が働いたのだから仕方ない。


「あいだだだ……っ、ふにゃぁ……おぷ、おなか痛いですぅ…………うえっ。」


よっぽど効いたらしく、腹を抱えて痛そうに痙攣し始めた。な、なんだか様子がおかしいぞ。

「お、おい、だいじょうぶか……? ……!!?」



ドクン


ドクン



な、なんとエリザの痙攣と同じリズムで、空間が波打っている。

「……気持ち悪いですぅ…―――ぅオエ」

「おっ!? うわわわ!!!!」


ざざざざざざざざざざざ。


文字通り世界が揺れ、物凄い勢いで地面が揺らぎ波うち、トランポリンのように俺の体はあっちゃこっちゃポンポン跳ね飛ばされた。


ずごごごごごごごごごご…………。


間髪入れずこれまた凄まじい風が吹きすさびモミクチャにされ、俺の体は木の葉のようにくるくる虚空へ吸いこまれていった。


くるくるくるくるくるくるくるくる……


「しぃえええええ―――――――――っ!!! 二時間かけてセットした髪型がああぁぁぁぁぁぁ………………。」




「げほっ、げほげほ………うあうぉえぇぇ……にゃ。」


「……た、助かった……のか?」


ヘアスアイルはスーパーサイヤ人みたいになっちゃったけど。

おお、なにやらわからんが元の世界に戻れたらしい。


夕暮れお日様が目にしみるぜ。


はっ!!


うかうかしてられん。さっさと帰ってガンダム見ねば。

「ま、待って……」

子猫のような弱々しい声が聞こえた。


う。



「お願い……待って下さ……あなた無しじゃ私生きていけない……」


うう。


「大丈夫! 君は俺の悪夢の思い出ナンバーワンとして生き続けられるから!!! 永久に!」


振り返るな。きっとまた泣いてるぞ。

振り返らずに、行くんだ……。

足を速める。



「……待っ……………て……………。」



行け。




「……………………待っ………………て………………………。」

だんだん声が遠くなっていく。




行くんだ。






「………………………………まって……………ぇ…………………………。」








畜生バッキャロウ、大好き、だあぁ―――――――――――――――――――――――――っ!!!!!!!



俺はクイック&ターンでエリザの元へ猛ダッシュした。


 いつの間にか集まってきていたギャラリーの拍手喝采を背に浴びながら……。




「はぅ……戻ってきてくれたんですねぇ……嬉しい。」

 涙と鼻水とその他もろもろの液体でぐちょぐちょで、でも本当にうれしそうな顔をするエリザ。

「まぁ、なんだ、運命感じちゃったしな……運命感じちゃったら逆らえないよなー。もうワンマン社長の会議での発言ぐらい逆らえねーよな。」

「ふふ。」


 おずおずと手を取り合い、夕暮れの町を歩いた。

 エリザの手は冷たくて、温かかった。


断層ぐらい価値観がズレている彼女。

でも可愛い彼女。

愛の伝え方が猫に芸を教えようとする人ぐらい見当違いな彼女。

でも一生懸命な彼女。


運命の手にかかれば楽しい異文化コミュニケーションに早変わりだ。




その日、俺は結局ガ〇ダムは見れなくて、でも、もっと大切なものを手に入れた確信があった。

そうそれはディスティニー。

ガン〇ムSEEDディスティニー。

いや、別に関係ないけど、言ってみただけ。




それが俺と彼女の、衝撃的な出会い。

あ、ちなみに今では町一番のラブラブカップルです。





                             おわっとけ


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