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「よーし、全員肉塊を中心に集めるんだ。準備ができた。渡したアイテムを全部使ってでも中心に集めろ。ケチって一匹でも残したら討伐失敗になるかもしれんからな!」
ボイスチャットから大次林の呼びかけで中心に向けてタンクが盾で弾いて集め、丸太と巨岩を使って纏めて押し込んでいたり、少しばかり縮んだ白い巨人が投げ飛ばして山積みになっていたらお互いを捕食し始め最初より二回り小さい肉塊に戻り蠢いていた。
「皆は中心に押し込みつつヘイトを回して、魔法組は火属性の魔法を打ちつつHPを徐々に削っていってくれ」
「俺は?」
「EXTスキルの準備をしてこれを背負っていてくれ」
「これは……、火薬?」
「近くでEXTスキルでそのかばんを投げつけてくれればいい。そのスキルでアイテムの効力を倍増できること知っているだろう。それで焼却するのだよ」
「……? そうなのか」
説明する目にそれ以外の何かもあるぞと言っているが、火力に自信も疑心もないので従うしかないが……、火薬に肉塊に近づくって完全にフラグにしかならないが……。
そういいながらも背負う俺も俺だが。
「よし、準備は出来たな。全員、麻痺毒を投げつけろ!」
号令と共にアイテム袋から次々に投げられる薬瓶は肉塊に当たったり当たらなかったりしているが、割れて当たったところから動きが鈍くなっている。循環器がない肉塊だからか、モンスターの性質なのか部分部分で麻痺を起こしていて圧迫で痺れた人体の筋肉のように時折痙攣している。
「コクーン君ゴー」
「アイアイ」
許可が出たのでダッシュスキル全開で走り出した。こっから何が起こっても可笑しくはないと思っておこう。悟りの境地だ。
「今です! 全員EXTスキル、道具強化を自立走行爆弾の前に重ねろ」
事前に俺以外に通達していたらしく、俺の目の前にEXTスキルの輪が連なって現れる。思い返して見れば道具を通せば強化すると言うことと、自身のみの強化と書かれていなかった事から他人に掛けられると言うこと。すなわち自爆特攻させられると言うことだ。だがしかし、気づいた時には時既にお寿司。地面に設置されていた輪を踏んだことで止まることが出来なくなっていたので悟りを飛び越え虚無である。
「くそぉぉぉぉぉぉ!! 流転の八重に栄光あれぇぇぇぇぇぇ!!」
「総員対衝撃防御態勢!」
最後の最後に悪足掻きでロンダートからのバク転連続の俺もEXTスキルを発動し飛び蹴りの態勢に移行すると、流星のように肉塊に突き刺さり中心辺りでカバンの爆薬が炸裂する。
「へっ、案外(HPゲージが)削れるじゃねぇか」
視界が光で埋まり何も見えなくなると爆発の衝撃が襲ってきた。
光で目が潰れているのでどの方向に飛んでいるのかすらもわからない。でもそのあとわかった。落ち始めたから。
「てか死んでねえな」
普通ならあの爆発でリスポーンしてるはずなんだが、俺の体は元気に自由落下中である。
手足をばたつかせてみる。可能だが何も起こらない。
スキル使用。手にナイフが出てきた。
うーん、視界はそろそろ戻りそうだが、マジで着弾5秒前だったらヤバイからスキル用の道具を取り出す。マジックボックス(鉄製)に入り、別の箱を取り出すと蓋を閉めて発動。少し上空の落下傘が付いた箱に移動すると鉄の箱は先に落下。視界の状態異常が治ったので落下傘の方の横壁を開けて先に落ちていく箱を見届けると壁を閉じて発動。ミス。ミス。ミス。成功。鉄の箱の方開けてたなあいつら。
蓋を軽く開けて周囲を確認。全員が落下傘に注目してるうちにスキル発動。外に出るとタイミングを計る。
「全員、警戒態勢解除! レイドモンスターは完全に沈黙した模様」
『うぉぉぉぉぉ!!』
参加者全員に討伐証明になるドロップ報酬を示すウインドウが開くと大次林から戦闘終了の声がかかった。
近くのプレイヤーと健闘を讃えあい、どんな物がドロップしたのか情報を交換して和気藹々となっているなか、一人になっている大辞林に音を消して駆け出す。
「喰らえ、ブレイジングアフロボンバー!」
「その攻撃は読んでいた!」
俺のアフロによる頭突きが当たるのととアースウォールが生えてくるタイミングが重なり、片方は横に、もう片方はまた上に吹き飛んだ。
状態異常:アフロ
一部の自爆系スキルにて付与される状態。HPが1で止まり、真っ黒焦げの姿でギャグ漫画のように巨大なアフロを被った姿になる。リスポーンするか全回復するまで治らない。
[爆炎無効]




