71
上下左右斜め全てから来るものな~んだ?
正解は九頭○閃!
「いや、ただの肉の鞭だよ!」
びたんびたんと周囲を叩いていく肉触手は土を抉り、幹をも抉る威力で一撃食らうだけで数秒動けなくなってゲームオーバーになるだろうさ。
だけど面の攻撃ではないため数秒のズレから回避できる。そう、俺のスキルならね。
「『ステップ』『バックステップ』『サイドステップ』『サイドステップ』ローリング!『ステップ』『バックステップ』『サイドステップ』『サイドステップ』ローリング!『ステップ』『バックステップ』『サイドステップ』『サイドステップ』ローリング!」
タイミングを間違えればお陀仏、スキルの使用ミスでもお陀仏のルナティック難易度を求めてくる触手の動きから次に動く触手を見抜き回避する。伸びてくる触手は筋肉の塊みたいで注視すれば一瞬の硬直から動く触手がわかるが、転がって避ける中で視線が切れるのでそれが一番つらい。
「!? 『粉砕された箱は空』!」
転がった後にいきなり束ねた触手の薙ぎ払いが来たので手品スキルを使用し、ギリギリ俺の体が入る箱を取り出して飛び込んで蓋を閉めた瞬間に触手によって箱が壊れる。箱から箱へではなく箱が壊れることで移動するスキルなので、周囲に複数箱がないときにもってこいで、効果により肉塊の背後(?)に回ることができた。
だがしかし、回避することはできてもダメージが通らないからじり貧と言うか無理ゲーなのでダメージソースを持って帰るために何とかしたいところだけど……。
「肉塊だから死角はなく、斬撃は無効だし、火が一番効力があったくらいだけどバーが減らないからわかんねぇな」
回避、回避でほとんどスタミナが減ってきたので後少しで詰むだろう。その前にやれることはやろうかな?
薙ぎ払いのモーションに気を付けつつ持ってきた癇癪玉を溢して辺りに散らばらせると触手を叩きつける瞬間に幾つかの不発と癇癪玉の爆発が起きてその触手が跳ねる。焦げた所からは燻った煙がすぐに覆われて消えていく。ダメージは当たり前に無いようだ。
なに? 負けイベ? フラグはどこ? つらいつらいなぁ……。
「おっと、スタミナ尽きたぜ」
ここまでなるとは思ってなかったから携帯食料はここまで分しか持ってきてなかったからスタミナ0。移動スキルの使用が無理になったので触手がヒット、俺の行き先かなりバッド。
ゴロゴロと転がり虫の息になってしまった。近寄ってくる肉塊が怖いがベルトからアイテムを取り出して、他のモノはベルトごと木に投げつけて巻き付かせるとロストを回避させる。ちょっとこれはロストの範囲に入ると辛め気味。
「よし来いや! 俺はあと一撃で死ぬぞ!」
うねうねと触手を伸ばしながら近づいて来て、バンッと地面を叩いたと思ったら少し浮いた次の瞬間、真上から押し潰された。ぐねぐねと気持ち悪い感触が全身を包み込む。そして体重を少しずつ全身に押し付けてきて地面からも浮かばせられて肉塊の中に飲み込まれる。感覚としては水中にいるみたいな感じで普通に呼吸は出来るが声が出ない様になっている。まあリアルで呼吸できないと困るしね。
そして目の前に窒息まであと何秒とカウントダウンしていくメーターが現れた。これが水中だったり首閉めになったりすると出てくるものか。共通して最初に表示された時間から3分の1で行動にデバフがかかり、更に3分の1で昏睡、タイムアップでリスポーンってな訳。そして救出、蘇生されたときの残り時間で少しの間デバフがかかる仕組みだ。無駄にリアルだな。
「まあ今回は助けがいないし、情報も得られたからここで終わりかな?」
さっきベルトから抜き取った最後の手段の手の中に収まるサイズの円柱を口に入れて噛む。
目の前が真っ暗になった。
美少女変態的弓兵(INオッサン)
VS
名状しがたきピンクの肉塊
winner 肉塊
決まり手 丸呑み後自爆
千切っても斬っても叩いても刺してもダメージが入らないので現状弓兵ひとりでは捏ねれません。
ちなみに千切れてもその分の体積が補充される。しかもドロップアイテム以外は全て肉塊の分け身なので1㎜以下でも生きてます。一寸の肉塊にも五分の魂。
つまりこいつを食った奴らは…………。




