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結果から言うとあのあとメグメグに助けられた。不本意ながら。
あのとき出たのは『コプキャプフレーダ』と言うドデカ蝙蝠だった。雰囲気で言うとコウモリダコ。サーカスのドーム状のタコ。くそでかかった。
しかもランク3だしレベル15。ドロップアイテムは皮膜くらい。だが、攻撃手段が囲いこみからの内側にある消化液(強酸)でどろどろになったところを捕食のようだ。うちの子らじゃ喰われてまうわ。
それでいてダメージが入る場所は皮膜ではなく本体のみと言った初見殺しなので、ピンチを救ったメグメグはかめっちゃくちゃ鼻高々大天狗でふんぞり返りながら幌馬車に運ばれていた。
「昨夜メグメグが使った我々を吹き飛ばしていたあのスキルは『魔唱』と言うスキルで、今はあの爆音くらいしか出せないそうです」
「つまりくそうるさいマフラー状態ってわけか」
「でも、そのスキル掲示板には乗ってないですよね?」
「それは私たち以外に『歌唱』スキルをとっている人は少ないですから。さらにそこで『歌唱』スキル派生で『魔唱』スキルにするひとは彼女くらいですかね。私は普通に『歌唱Ⅱ』にしました」
一見無価値なような雑多スキルでも育てることにより、攻性スキルになるか補助スキルにするかはその人次第になる。俺も『手品』スキルを持っているが、俺のスタイルではバリバリ主用スキルである。
「それで、ここからさきはイベントは発生しないんだっけか?」
「はい。加速していても二三日の拘束は運営側も疲れるらしく、さらに日程を短くしてシステム上経過したという体をとるみたいです」
「まあ、三日間拘束されるのは加速していてもイベント以外はモチベが上がらないからな」
かくいう俺もちょいとダレてきた。馬車に並走しお茶汲みと会話しながら出てくるモンスターが普通のレベルになったので矢を射ってからウサギ達が倒していく。そうしているうちにヘベラスのレベルが上がったようなのでポイントを振り分ける。
[name:ヘベリス]
種:サヴラ Lv7(↑1)
STR:6
VIT:7(↑1)
INT:3
SPD:5
RES:7(↑1)
TEC:5
「見えてきました! あと少しでたどり着きますよ」
「本当だ。もう目の前に来ているのか」
あと数分もすれば到着するくらいの距離になってきたみたいだ。ここからはモンスターも出ないので荷台の後ろに腰かける。
「ど~よ、メグメグの実力。ぐぐっとちょっちょきぱ~ぺきにアンタのミスを帳消しにしてあげたわ。可愛くて頼りになっちゃうでしょ? ファンになってもいいのよ☆」
「うわ~、頼りになっちゃうなー。大変便利だなー。略して」
「略さなくていいです」
「そうか。んで、なんのようだ? 俺は忙しいんだけど」
「それよそれ。ちょっちょきにぱ~ぺきなトップアイドルのメグメグに興味がないってどうゆうことよ。ちゃんと崇め称えなさいよ」
「メグメグ、若干素が出てます」
「いいのよ別に。いまオフだしこいつらしか居ないんだから」
なんか変な擬音に記憶の一部が引っ掛かる感じがするが、数年前の使ってない記憶は消えてるから直ぐには思い出せない。バックアップからのサルベージが必要なくらいだ。
「あ、そう言うのはいいんで、さっきみたく横柄に座ってて貰えます? 忙しいので」
「そのウサギとトカゲ以下って扱いが気にくわないのよ!」
「ウサギとトカゲは可愛いし、裏切らないから好きだが、裏表が激しい女性はちょっと……」
「……なんか前にもそんなこと誰かに言われた気がするけど、アンタの性格が気に入らないから私の方も要らないわ」
「奇遇だな。俺もそんな言葉を耳にした記憶がある。それと、1プレイヤーに嫌われようと俺は俺で色々できるからあまり関係ないんだなこれが」
「くぅ~、覚えてなさいよ!」
「忘れなかったらな」
町に到着してからクエストが終わるまで終始睨まれ続けた。そのあと帰りの馬車(自腹)に乗り込む瞬間に思い出した事があったが、どうでもいいので放っておく。馬車が出発してから少し後に大音量が聞こえてきたが気のせいだろう。
[name:ヘベリス]
種:サヴラ Lv8(↑1)
STR:6
VIT:7(↑1)
INT:3
SPD:5
RES:7(↑1)
TEC:5
[スキル]
噛付き 潜伏 自切 属性:土 抵抗:火




