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外に出ると両端に五人掛けの席が付けられた幌馬車があり、それを引く動物はのっぺりとした顔のオオトカゲだった。種類的には竜と言えなくもないが、もっと西洋ドラゴンのようなカッコいい面したやつかと思っていたのでちょっとがっかりだ。
「こいつらはレッサーズドラゴン。ウルフの牙や石の鏃程度は鱗の前では歯が立たないし草食だ。群れで生きているが弱い魔物なら寄ってこない」
「レッサーズドラゴンですか。竜種のなかで簡単に倒せるくらいだったはずです。でも群れが10、20以上で、攻撃を食らうと30㎞まで届く声を発してそのあと大群でやって来るそうです」
「一撃で倒すか、一頭だけ倒して逃げるかってことか」
「そうですね。でも周囲には竜種は見当たりませんから先のことになるでしょうね」
竜種が現れる場所はまだわからないが、その下位種に当たるであろう蜥蜴種、又は蛇種は確認されているのでそう遠くない時に判明するだろう。大穴で鳥種だったら広範囲に分布しているから完全にどこに出るかはわからなくなる。
「メグメグがいっち番乗り~♪ 一番景色が見えるところがいいなぁ~」
「……はぁ」
ハイテンションで幌馬車に乗り込み窓用に幌が切られている場所に陣取りに行ったメグメグ。それにため息をつきながらも幌馬車に乗り込むラファロー。そしてお茶汲みが足を掛けたところでこちらを振り返った。
「コクーンさんは乗らないのですか?」
「多分乗り合い馬車くらいなら走っても並走出来るし乗ったらあのアイドル女に絡まれそうで嫌だ」
「……そうですね。僕は並走出来ないので馬車に乗ります」
しぶしぶといった感じで馬車に乗り込んでいく。御者に俺は並走すると伝えると了承して竜車を走らせ始めた。
「みなさん、魔物が現れました!」
「○イダーキック!」
街道の横に生えている茂みから複数の弱いウサギとイヌが出てきたので速度を上げて飛び回し蹴りを放つと背の高いイヌがくらい吹き飛んだ先でゲージを全損させて消えていった。
そして肩から降りたアルネブとニハルが器用にウサギをパスで繋ぎ、ヘベリスが体当たりして倒した。イベント中扱いなのかウサギのドロップが表示された。
「えっと……」
「気にするな。この程度ならすぐ終わるから止まる必要はない」
「は、はい」
魔物が出たからか竜車を止めていた御者は直ぐに走らせ始めた。ガタゴトと普通の車輪が出す音を聞きながら出てくる魔物を蹴散らす。
「おかしいですね」
「どうした。アイドルコンビの漫才が壺にはまったか?」
「いえ、あの二人はただやかましいだけですのでそんな面白くは。そう言うわけではなく、純種ではないにしろ竜種が引くこの竜車を小型の魔物が襲うと言うことが変だと思いまして」
「そうだよな。説明が嘘でなきゃこんな頻度で出てくるわけはないし。なにかに追いたてられているか、引き寄せるなにかがあるとしか……」
そんな話をしているとお茶汲みの横が開かれてメグメグの顔が出てくる。
「ごめ~ん♪ それ~、メグメグのスキルなの♪」
「「……はぁ?」」




