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「コクゥゥゥゥゥゥーン」
「いきなりなんだ変態2号」
ファームに戻った瞬間ぐしゃぐしゃな泣き顔でこっちに向かってきた明星の顔に鉢を被せた。
「――…………――――………」
「HAHAHA、なに言ってるのかわかんね~や」
「――――――!!」
鉢を被せたためくぐもった涙声が全然聞き取れなくなったので、その変な衣装になった明星をアメリカンスタイルで笑う。
抱きつきながらいつまでも泣きわめいている明星をいい加減五月蝿いので引き剥がして壁に叩きつけた。鉢が割れて涙で汚くなった顔でフラフラしている明星を尻目になにか事情を知ってそうな、……いや一人しか知ってそうもないが、知っているかどうかすらも怪しいが一応は聞きに行こう。明星よりはましだろう。
「と言うわけでベラ」
「カッカクシカジカ、しかし分からん」
「いや、わからんのなら無理やり合わせなくてもいいから」
「んー、その場にいた訳じゃなく又聞きだから詳しいところはわからないのだよ」
友達というのは仲良く一緒にいるものではないのか。……まあ、こいつの場合どこか別の場所で一人楽しくしているんだろうが。
「ざっくり言っちゃうとかわいい子が男の娘だったってこと」
「そーなんですよ! バ先のかわいい後輩を眺めながら仕事してたんですけどつい先日告られてぇ! ノーマルな振りをしつつ友達でって言ったら?顔で、僕男ですけど? って言われたんですよぉ~!!」
「いじゃないか。俺だって中身男なんだから。別に男嫌いって訳でも無いんだろ?」
「そ~ですけども! コクーンさんはここでは完全に女の子の体じゃないですか。私は今は女の子がいいんです! 柔らかいのがいいんです!」
なんか村襲って村人むっしゃりな怪物みたいなこと言ってんな。
「なんか村襲って村人むっしゃりな怪物みたいなこと言ってんな
」
「あ、それ私も思いました。人喰いの化け物ですね。それだけ聞いたら」
「なんで! いや、冷静に考えたらそうですけど! 私まだ華の二十代! 可愛い子を愛でていたいんです!」
「まあ、俺も嫁さんいなかったらそんな妄言口走りそうだからわかるけど、あんまり邪険にしてやるなよ。別に嫌じゃないんだろ?」
「嬉しさ半分困惑半分で困っているんだよ~。どうすればいいと思う?」
「慣れれば良いと思うよ。と言うわけでなんかファームの前でうろうろしていた子を紹介するよ」
扉の影から出てきたのは小さめの子が出てくる。見た目少女のような容姿をしているが、プロフィールでは男と表示される間違いなく中身男性プレイヤーだ。
「えっ、はっ? なんでここに、……えっと」
「あ、ネットマナーで本名は駄目って教わりましたので、自己紹介します。キャラネームはお茶汲み童子って言いまして、あのからくり人形からが由来です! 職業は武士です!」
「で、なんで君がここにいるのかな?」
これをやっていることは話してなかったのだろう。なのにやり始めて明星を見つけるなんてすごいな。
「明星さんがゲームを買っていたのは知っていましたが、やり始めたのはついこの前で遅れての開始なんですよ」
「ん? なんだ後発組なのか」
「いえ、ゲームは最初のうちに買ってたのですが、いろいろとしていて始めたのは二回目の発売がされる前でして、中途半端な時なんです」
「そうなのか。なんで遅れたのかとか聞いても?」
「えっと、これを買うのに少々無茶をしまして、それに追われていたわけなんです」
金銭関係で東奔西走でもしてたのか? まあ機材にソフト込みでかなりの額になるから学生だと痛い出費になるからなあ。
「で、お茶汲みは明星のことが好きってことだったよな」
「はい。好きですから告白しました」
「んで、明星はまだ彼氏はいらないと」
「そうです」
「んじゃ、テンプレ通りにお友達からってことでフレンド登録でもして、そっからゲームを通じて知っていくってことでいいんじゃね?」
それで付き合う付き合わないを決めるまで行かなくても親交を深めるのは良いことだろう。登録をし終わった明星は直ぐにログアウトしていった。
「ってことにしたけど良かったのか?」
「はい。明星さんがコクーンさんと仲が良かったので恋人なのかと思ってましたけどお友達でしたんですね」
「まあ、最初のフレンドだし、必要な情報は集めてくるしで助かってるから親友って感じだな」
「そうですか。良かった」
好きな人が知らない場所で恋人を作ってたら精神的に滅入るし、諦めなきゃなんないからな。一安心ってところか。
「……もしものときの為に用意した山奥の建物とか道具を使うことにならなくて」
「よし、お前変態3号な!」
ヤンデレ気味なプレイヤーとフレンドになった。




