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城壁に付いた門の横にある通用口を通り、街の中に出ると石造りの建物が並んでいた。建造物の外見はまちまちでレンガが使用されているものもあれば、切り出し加工しただけの石を使用しているものなどが多数だが、一部の建物は白塗の壁だったりコンクリっぽい造りとなっている。
「周りが荒野だから特産となるものがないから工芸に特化ってとこか」
鍛冶や石工が多く食事処はぽつぽつ飛び石間隔で設置されている。魚や肉の料理を食べてみたが少ししょっぱい。たしかイギリス料理が不味いってのは塩漬けの魚の塩抜きが下手とかなんとかで、だけどうなぎゼリーと星見のパイは知らん。
とりあえずギルドにでも寄ってこの辺りの様子でも仕入れるか。依頼書にはその地域の特色が出るだろうから見て損はないだろう。
「と楽観的に考えてる時期が私にもありました」
ギルドに入るとなにやら喧嘩の最中でした。耳を澄ませても入口付近では聞こえず、これは参加型なんだろうと判断しその喧騒の中に入っていく。
「アアン、なんだコラ! 俺らの作った武具がナマクラのガラクタだと!!」
「そっちこそ私達が製作した物が利便性に欠ける観賞用ですか!」
「見りゃわかんだろうが! そんな刀身や鎧に落書きを刻まれてちゃ本来の性能が発揮できねぇに決まってんだろ!」
「はあ? これだから頭まで筋繊維が詰まっている鍛冶師は……。これは装備すると能力を発揮する紋様で、鉱石から一辺倒に叩きつけて作った鉄の塊じゃだせない性能を発揮できるんです」
「鉄の塊じゃねぇよ! 鉱石から厳選して、魔物の素材を使い仕上げたモンだ! 並大抵のことじゃ刃こぼれしねえ!」
「そんな程度ですか?」
「ああん? やんのか」
もはやどちらの集団も一石を投げ入れると血を見そうなことになる雰囲気。これが一触即発って状況か。
片やガテン系鍛冶師のNPCたち。片や仕事人系付与師のNPCたち。どちらも口火を切っているのは女性である。まあ、職にそう言った性別の縛りがないのだが、ファンタジーのお決まりなのだろうか。
【『ベテルラニの職人事情』が開始されました】
やはりイベントのようだ。強制参加型の。
やいやい言い合っていたご両人が口を閉じる。これは俺が入って行かないと話が進まないのか?
「あの~すいまそん。俺、カウンターに用が……」
「埒があかねえ! いくらてめえらに言っても時間の無駄だ!」
「こちらもそう考え始めていたところです。そしてこちらにちょうど流れの職人の方がいらっしゃいますのでこちらの方に決めていただきましょう」
「職人って言われるほど職人ではないんだが」
「ああ、良いだろう! おいお前! このあたしが丹精込めて作ったこの武器と」
「私が研究を重ねて作った武器、どちらが優れているか判断してください」
こちらの承諾もなくどんどん進んでいく話に呆れ返りながらも二人の大剣を鑑定していく。両方同じレア度に攻撃力も同じ。耐久に差はあるが鼻くそ程度の差。どちらが優れているのかはわからないし、どちらに付いてもうまみは無さそうだ。
「うん」
「どうだ?」
「あなたはどちらを選びますか?」
「両方なかなかの武器だ」
率直な意見を口にして軽く頷く。付与されている特性もどちらが優れていると言えるほど特出、特化している訳でもなくまったくもって甲乙付けづらい物だ。
「んまあ、だから」
「「だから?」」
「取り敢えず両方ぶっ壊す事にした」




