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ハハッ、なにこの博士、言ってるかよく分からなかったんだけど? アラビア語かな?
「そこのプレイヤーたち、ボケッとしてないで助けてくれたまえ!」
焦った様子でやって来たプレイヤーはバキバキと木が砕ける音がする自分が出てきた方向を指差す。そこから顔を出したのは茶色いドラゴンの首だった。
次々に木が砕かれていき、肩、腕、胴体と見えてくる範囲が広がるにつれて完全にそれがドラゴンだと言うことが確認できた。
「どうする? 逃げる?」
「いや、そんな嬉しそうな顔をして聞かれましても、拒否したところで勝手に突っ込んでいく未来の貴方が目に見えると言うものです」
「いやぁ、ごめんね。さて、お前らは狙われないように適度に逃げておけよ」
さすがにドラゴンの相手を育て中の奴らがするのは厳しすぎるだろうから離れさせておく。
走ってきた博士スタイルのプレイヤーが俺たちの後ろに回るとすぐさまユニオン申請が飛んできた。かっちり俺のことを把握しているから走っていたわりに余裕があったのだろう。
そして、ユニオン申請を承認した瞬間にお行儀よく待っていたドラゴンが一息分の火炎を放ってきた。
おいこら、待てこら!
「ウォール!」
防御魔法をドラゴンの口の前に展開させる。見えずらい壁に当たった火炎の息は上下左右に散って防御魔法と共に消えた。一息分の火炎と防御魔法が相殺となると長く放って来られたら止められないな。
「さてドラゴンちゃん、お前の素材を置いてってもらおうか!」
「ドラゴンスレイヤーのアイドルって初だと思うよね。いないよね?」
なんだかんだで乗り気のラファロが支援魔法を発動したのか体が軽く感じられる。これは速度の向上か?
ドラゴンが息を吸い始め火炎の息を吐くのかと顔の向きから外れるように横に走る。しかし、口から放たれたのは火炎ではなく空気を轟かし地を震わすと勘違いするくらいの咆哮だ。ドラゴンは咆哮を放っている間動かないが俺を始め、ラファロと博士もステ異常『恐慌』が付いていたためその場所から動けなくなっていた。
恐慌が付くのは目の前にいる圧倒的な威圧感を放つドラゴンの咆哮により恐れを抱こうが、なぜ俺が恐れる? 死んでも生き返るこの世界の中で何を恐れると言うんだ。ベリハ? 鬼畜? 序盤でドラゴンが出てくる程度なんぞセーブを怠って進めてた時に来る初見殺しより楽な部類だ!
「うるせえんだよこのクソトカゲ風情ぇがっ!」
ステ異常が『恐慌』から『狂楽』へと変わり、取り出したアイテムを顔面にたたき付けると爆発が起こって咆哮が途切れた。いきなりの行動で二人が呆けてしまっている。
さて呆けてるところ悪いが、これからさらに度肝を抜いていこうか。
「かーっかっかっかっか!」
「あれの行動はいつも通りなのか?」
「さあ、顔合わせした程度だから詳しくは知らない」




