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弓兵はモンスターを駆る?  作者: 狭凪
第二章

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『さぁ〜いしゅうっ、イベントー! はーっじまーっるよー!』



 その言葉を皮切りに地響きが大きくなってくる。Xとズィーの報告では既に多方からモンスターが迫ってきていたらしく、それぞれの移動速度に違いはあるが小型の動きが速いモンスターの先遣は時間ちょうどに来ると予想していた。

 そのモンスターたちの大行進をレギオンハウスの屋根の上から眺めている。開戦と同時に血気盛んな戦闘職プレイヤーがぶつかり合った。敗戦するとイベント中で上がったスキルレベルが下がるペナルティが発生するのでレギオンに入っている、入っていない関係無しにプレイヤー同士が連携をし合って壁を作ったり後衛職がモンスターの後続を魔法なりでHPを削っている。

 うちのレギオンのメンバーは戦闘職が少ない。と言うか、半分が生産職で一人以外後衛の職業だから今ごっそりとぶつかり合っている中に突っ込むのは悪手だろう。あんな密集していたら俺の速さも生かせないだろうし、射線が通りづらい。



「ティグア、敵の種類はわかるか?」

「だいたいが情報に載っている通りのモンスターだ。小型、中型ばかりで今は手前マスのモンスターばかりだ」

「こっちも大体そんな風だ。草原に良く見る連中ばかりが押し寄せてきている。まだスタートしたばかりと見るか、奇襲でくると見るべきか……?」



 見える範囲の敵の観察をしながら長距離射撃を行い奥の方に居るモンスターの脳天を貫いていく。スキルの発動準備をすると撃たなくても矢が通る射撃の線が現れるから鷹の目を合わせるとかなり狙いやすくなる。



「ステンバーイ……、ステンバーイ……」

「ビューティフォー」



 こぼした独り言に反応してくれたティグアの方に手を上げるとハイタッチを返してくる。やっぱり長い間連れ添ってるからお互いの考えがツーカーに近い状態になってるな。



「今何匹倒した?」

「21匹。いま22匹になった」

「勝った! 俺24匹!」

「……『ツインバレット』」

「負けたからって余分にMP使うなっての。ほら、マインドポーション」



 持っている中で渡した最低品質のマインドポーションをティグアは握り潰してMPを回復させる。ポーションを飲むほかにアバターに触れると回復するシステムと聞いたのでティグアはそうしてるみたいだ。俺も手早く回復が出来るからしたいのだが、コレすると空瓶が手に入らないので生産も出来る俺からしたらちょっと考え物だ。



「ふむ、……小型中型しか来ないのを見るに、コレは波と見るべきだろう」

「そうだな。斥候している連中も大型を捕らえたが進行が遅いと漏らしている」

「ならば、今の段階は私たちは温存していたほうがいいらしいが、どうする」

「そうだな。いまは後衛らしく撃ち漏らしを除いていようか」



 俺が作った鉄矢、属性矢は耐久があるので何回か回収できるが、そこそこ削れるのが早い。今はタリスが沢山作っていた木矢を撃ち込んでいる。

 前線から取りこぼしたのが出てくるからHPが削れている奴だから、木矢でも装備依存で強化されたダメージで沈むから楽で良い。



『コクーン! 今北西で戦ってるんだが、巨人見えるか?』

「明星か。巨人は……、四体とも見えない。ちっ、いつ終わるかも分からないから最初の内に確認しときたかったんだが」

『こっちも見えてないから気になって聞いてみたんだけど、スキルレベルが高いコクーンでも見えてないのか』

「報告はそれだけか? そっちの勢いはどうなんだ?」

『こっちはまだ死に戻りのプレイヤ-は出てないな。こぼれたモンスターに対しても俺が倒しているから街に行った奴はいないぞ』

「そうか。じゃあ、引き続き頼むな」

『ああ』



 イベントごとに見えていたから最終イベントでも現れるかと期待していたが、まだ現れてないみたいだな。今回は特別な弓矢を用意したから届くまでは行って欲しい。



「コクーン、そろそろ討伐数が10%に達する。周囲の警戒を忘れるなよ」

「まったくだれに物を言っている。俺がそんなポカやらかすわけないだろ?」

「この前頼んでいたもの忘れたくせによくそんなことが言えるな」

「あれは、……限定版がその……あの……えっと、ごめんな?」



 意気揚々と言ってみたものの、数日前にやらかしたことを掘り返されてしまった……。

 話している間に討伐の%が10を越える。そのときに周りを見渡してみるが、目立った様子はまだ見えない。つまりは10%程度では状況が変わらないと言うことか。コレばっかりは波の回数が示されていないから%で判断するしかない。何人がそのことに気づいているかは知らないが、想像の範囲でレギオンのチャットに入力して余計な案件を増やすわけにはいけないと考えている連中が居るかどうか……。まあ、それに対してはほとんどサボりのような俺らが目をかけていればいい話だな。


 生産レギオンのところに貸し出しているベラからメールの入電が入り、こんなときにメールをしてくるなんて何の用事かと開いてみる。


『助けてください!! 何人もの人が私は対応係でもないのに話しかけてきてそれを無視していたらいきなりプレイヤーが  てんやわんやしているうちに私の錬金が失敗して毒の――』


 そのメールをそっと見ないように閉じた。

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