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弓兵はモンスターを駆る?  作者: 狭凪
第一章

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 MP回復アイテムを湯水のように使い何とか日付が変わる前に戦闘イベントを終わらせた。倒れた死骸や残骸から剥いでいるとゴーレムからランダムで鉱石が入っている土塊が入手できたらしく、俺がしたことからのせいもあるがあのミミズに一匹食われたのが痛い気がする。



『汝らの力量見届けたり』

『汝らの知恵見届けたり』

『我等の力量、汝ら超えたり』

『我等の知恵、汝ら超えたり』

『『この地の魔物汝らに敗れたり』』



 消えてしまったのもあるがアイテムをすべて剥ぎ終わるとインフォが届き、ゆっくり消えていく花崗岩と閃緑岩の巨人共。

 コレで戦闘イベントが終わったのか……。ようやくレギオンハウスに戻ってゆっくり出来るな。









「なんて考えると思ったか! 食らえやゴルァァァァァッ!!」



 疾風の投槍を取り出すと花崗岩巨人に向けて力の限り投げる。



「「ええええええええええええええええええええええ!?」」

「なるほど。如何にイベントといえどもモンスターということなら倒せる。私も試してみるか」



 ティグアも俺の思惑に気づいたのか閃緑岩巨人のほうに向けて魔法を放った。

 だが、ティグアの魔法は消えるまでに届かず、俺の投槍は何かに阻まれて弾かれた。どこかに飛んでいく前に取り寄せアポートで槍を回収する。



「くそう……失敗か。もうチョイ威力を高めにせんと貫けないかもな」

「判断が遅れた所為であたりすらもしないのか」

「いやいやいあ」

「クトゥルム・フグタン?」

「なんで邪神召喚の奴になるんだ! そこで!」

「なんでって、いあいあ言ってたから」

「あーもう! あれって常識的に考えて倒せないイベントモンスターでしょ!」

「いや、情熱的に考えて倒せなくとも届かせることは出来るだろ?」



 フィールドに出てくるんなら攻撃できるモンスターのはず! そのために特別製の矢を用意したってのに弓のほうが貧弱だから仕方なく投げたけど、次はもっと近づけさせる! そのために素材を取りにきた! そのためだけのためにだ!



「すごい執念なのはわかるけど……、はぁ、まあ応援しとくよ」



 呆れられた調子で応援の言葉を受けるがさっきも言ったがもとよりそれを目指している。



「んー、じゃあ回復も危ないだろうし、いったんレギオンハウスに戻ろう」

「そうだな。早速未鑑定の土塊がなんなのかとか、武器の強化を目指さないといけないからな」



 モニュメントに触れて町らしくなってきているところに戻る。時間はもう七時を回っていて空腹度も減っている。携帯食料を取り出して回復して作業に戻ろうとしたらディレンナとティグアに腕を掴まれて連行された。行き先は料理レギオンの器用な料理軍。そのレギオンハウスの前には長机が並んでおり、簡易料理施設、まあ持ち運びできるガスコンみたいなものを使って持込などの食料アイテムを調理していた。



「おい」

「時々でもいいからきちんとしたものを食べたほうがいい。それと、料理アイテムの効果を一度でもいいから試してみても無駄にはならんだろう」

「そうそう。あ、私五目肉そばとレミンジュース!」

「……チンジャオロース」

「では、この暴れ牛のステーキを」



 いち早く帰って武器強化に時間を費やしたいのだがそれを許してもらえなさそうだ。注文を受けている鳥族のウエイトレスに俺の分の料理を頼む。



「じゃあ、砲魚のムニエルとリニオのジュースで」

「かしこまりました! 四名様オーダー――--」

「あ、すまん。あと野菜盛二つ、果物も入れといてくれ」



 夜も更けてきたことからもそっと動き出していたことで起きてからメシを与えてないのを思い出し、追加で頼むとウサギたちが現れたことに驚いたがすぐさま注文を厨房に届けた。



「ここでの支払いはどうなってるんだ? 自慢じゃないが金は少ないほうだぞ」

「食材アイテムが変わりに出来るってことだけど、何か持ってる?」

「猿とゴリラとトカゲとウサギとカラスにハトに」

「どんだけ狩ってるのよ」

「あと、さっき出た虫の皮。なんか食えるとか書いてあるぞ。不確定だが」



 でろんと出してみたら鳥の皮みたいにプルプルの物質だった。あいつらの皮意外と弾力があったから防具生産連中にでも卸したら高値になるかと思うが。



「うわっきもっ! 速く仕舞いなさい!」

「そう言えば私のほうにも出ていたな。まとめて持っていてくれないか?」

「ん? べつにいいぞ。この皮なんに使えるかわからないし、防具を一つ位作ってもらってみるか」


「はーい、お待ちどうさま。お先に野菜の盛り合わせとステーキです」



 話している間に出来上がった料理をエルフのお姉さんが持ってきた。木のボウルに入れられた様々な野菜と果物の盛り合わせをウサギたちの前に置いてやるとすぐに飛びつき勢いよく咀嚼していく。ステーキのほうはシュッっと滑らせてティグアの前に。



「? なんか用かなお姉さん?」

「あ、いやなんか食料アイテムみたいなのを取り出してたから、気になってね」

「虫の皮なんだけど、……食べるのか?」



 一瞬引きつった顔をするが、



「虫かぁ……ならゲテが欲しそうだよなぁ……」



 と呟いていた。



「お待たせしました。こちらムニエルとチンジャオロースです」

「ほら来たぞタリス。ムニエルはこっちだお兄さん」

「…………」



 受け取った料理を渡してやるとすぐに食べ始めたタリス。こちらも魚の身を解して口に運ぶ。

 お、美味いな。



「そうだね。君の分の勘定はさっき言った皮と、数品でいいかな?」

「ん? いいのかそれで」

「うん。うちのギルドで変わり者がいてさ。既存の食料アイテムを調味料以外使わない子がいて、そのこのためにあったらいいかなって」

「ふうん。ゲテモノ系の料理人ね。別にいいよ。今のところ使う予定ないし一枚くらい」

「ありがとう! で、ついでと言ってはなんだけど、フレンド登録しようよ」



 いきなりの申し出で驚いたが、料理レギオンとウチのレギオンにつながりが出来るんならと承認した。彼女の名前はシルビア。銀色の長髪のプレイヤーだ。



「そう言えばこのウサギたち君が召喚したの?」

「違う。作った」

「そうそう。こいつβで地雷の職業のテイマーを選んでてさ。って私の五目肉そばまだかー!」



 叫ぶバカを弓でぶっ叩き黙らせる。ちなみにこのゲームでの召喚士サマナーは初期契約一体から始まり、レベルが一定に上がっていくと契約できるモンスターが増える職業である。ちなみに召喚したらそっからMP消費はないらしいが、サマナーのスキルだか職業レベルのどちらかに比例して上がっていくらしい。モンスターに個別レベルはないとか。

 最近では契約士コントラクターが出てきて、こちらでもモンスターを従えらせることが出来るらしいが、レベル以下のモンスターは簡単に契約できるが、上位のモンスターとなると対価が必要になり、しかも扱いが悪いと契約が切れた途端襲われる。しかも、契約しないとスキルのレベルが上がらない上にHPがなくなったら契約がなくなりまた契約しに行かなければならないと言う俺よりもひどい仕様。正直こっちでもしてみたいと思った。



「なに? 従える系の職業に興味があるのか?」

「いやいや、私はコックだからね。モンスターにってよりは安定供給できそうな食材って方に興味があるかな?」

「食材って、掲示板を読んだからですか? まあ、精肉とか精乳などができる牧場を作れますが、今のところ牧場をあっちに置いてきているので増やせないのが現状だよ」

「というと、ゲームで言う預け場所的アイテムを表に置いてきたのか。それってギルド設備にはないのかい?」

「知らんね。あるかもしれないけど、今は施設は生産系の方に力を入れたいんでね。金かからずに施設が追加できるから」



 今必要なのは皮と宝石、錬金の施設が欲しい。あと3つ……いや、一個クリアしてきたからあと2つか。花崗岩巨人のとこの奥2つをクリアしたらできるな。たぶんあそこは物量と順番の場所だ。それで火成岩の方は不意打ちか頭を使わないとクリアできないって感じかな。

 他の巨人の情報はっと。今現在クリアされているのは最初の4エリアと花崗岩巨人とこ以外の奥一つずつがクリアされてるな。巨人の目撃情報は……なんだ、上げられてねえな。



「北東と北西のほうの巨人のデータがないな。戦闘に集中してたのか?」

「それは違うと思うよ」

「はあ?」



 ディレンナがなぜはっきりと言い切れるのか不思議だ。あれほどはっきりと見えていた巨人が目撃情報一つないのはそれ以外考えられないのだが。

 それまたなぜなんだ? と言い返そうとしたところで、



「巨人? 何それ見たことないけど!」



 シルビアが口を挟んできた。と言うか、聞いたことが無いと言う風に驚いた声だった。



「何それって、エリアの戦闘イベだか製作イベ? そんときに出てくる岩で出来た巨人のことだ。俺が見たのはえっと」

「南東のグラネイトジガンテ、南西のディオライトジガンテ。花崗岩と閃緑岩のゴーレムみたいな巨人だ」

「ありがとティグア。そんなのがイベント中の俺らを見ているようにずっと奥に突っ立ってて、終わったとたんに引っ込むように消えて言った」

「え!? そんなの初耳だよ!」



 本当に知らないらしいが、なら俺らの見たあの巨人は何がきっかけだったんだろう?



「たぶんそれあんたたちが取得している鷹の目スキルのせいだと思うぜ~。ちなみに最初見たときのレベルは?」

「7」

「5」

「それで、二次組みが来るまえにあったスキル取得とか職業見てた?」

「見てないな」

「弓兵三人。鷹の目スキル保持者は二人。つまりたぶんだけど、コクーンと明星だけが持ってたスキルって事が関係しているかも」



 かもとか曖昧すぎるが、それならありえるかもしれない。元から見えていたからアレは普通に見えるものだと判断していて、そういった可能性を見ていなかったな。ほら、どっかの話で主人公が見ているものがそばにいた子に見えなかったとかもあることだし、今度からはきちんと情報交換して何が見えてないかとか知ったほうがいいな。



「ところで、お前ら見えてたんだよな?」

「識別は遠くて遠くて効果を発揮しなかったけど、たぶんパーティ内の一人でも認識したら見えるようにでも設定されてたんじゃないか? そういったの見えてない状態からスタートしたわけじゃないし」

「ほう、多元宇宙論、違うな、認識によりそれがあると言った現象をこのゲーム内で起こしているのか。それがなんであれ、個人または団体の空論であってもそのことが成され、存在してしまえばそれは最初からあったと言うことになって個から他に広がり」

 ――ゴンッ

「あれ、今俺なにをどこまで考えていたっけな?」

「つまり、それが同じところを探していてもなかった失せ物がふと見つかるように、他人からの指摘でも認識してしまえばそこにある、あったと言うように見えてくるようになるというわけだな」



 商業病で物思いに耽ってしまったが、そういうことだ。見てしまえばそれはあるのだ。それがたとえ幽霊や妖怪の類であってもだ。恐怖と言う認識から生まれたものだからね。

 と、考えが逸れてしまった。



「んじゃ、鷹の目スキルを取れば見えるってわけか」

「さあ? そこのとこはレベルで見えるようになるのか、持ってるから見えたのか全然検討が付かないね」

「へえ、そんなこともあるんだ。じゃあ、鷹の目の打診でもレギオンにして検証してみるか。それに、よく見えるから素材とか発見できるよね?」

「識別が同時に使えたんだからそこらへんのスキルと併用も出来ると思うよ」



 ようやくやってきた五目肉そばを食べだしたディレンナは話から外れた。

 その後、食べ終わるまで少したわいない話をして時間を潰し、代金を払って俺らのレギオンハウスに戻った。



「そう言えば施設は誰のを増やしたり設置したりするんだ?」

「ええーっと……」

「……木工、部屋で」

「木工は自室があれば充分か。カワラギは?」

「今確認したけど、生産レギオンが施設作ったからそっちを使うみたいだ。私は研磨が出来る修繕場を使うから」

「あとは、……俺か。実際砥石が使える修繕場もあるし鍛冶も出来るし、錬金と彫金、あと飼育場? うーんと、……一番低い錬金の施設にするか。増築は訓練場にでもしておくか」



 次に設置するならなんかあった工芸場にでもして、ついでに増築してそこでいろいろなものを作ってみようと思う。たぶん皮でも木でもいけるだろう。なんてったって工芸だからね。

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