23
食べなれてきた保存食を口に放り込みガリコリと咀嚼して空腹をなくすと今回動くパーティメンバーに目を向ける。ティグアにタリス、ディレンナは料理人の職を持つプレイヤーの屋台で買ってきたのか肉の串焼きを頬張っている。
「あんたよくそんなの食っていられるわね。不味くないの?」
「単に口の中の水分を持ってかれてるだけだからな。味なんて食いすぎて慣れてきたところだ」
「慣れてきたって、料理人のジョブを取ったプレイヤーが出てきた段階で保存食を三食食べる奴なんていなくなってきているのに」
「毎回ではないぞ。NPCの作った料理もたまに食べていた。だが、値下がっているからと半スタック買いこんだから節約できるなら俺はそっちを取る」
そういうと、チョコ菓子の黒雷を三食にしていたことがあっただろと見破られてしまった。アレはアレで大丈夫だったんだがな……。
「それで、今回はどの方面にするか決めているのかね」
「ディレンナはどこに行きたいんだ?」
「南西方面の先にある岩肌だね。南西方面一マス目のボスはすでに倒されていて、その先に進めるようになっているってさ」
「そう言えば俺らがクリアした先のマップの確認をしていなかったな。どんな風になっていたのやら興味が沸くな」
「では早速行こうか」
ディレンナとタリスはダッシュの所持をしていないので今日中に行けるかどうか考えていたらイベント仕様でクリアしたシンボル、俺らで言うオベリスクまで村から戦闘フィールドに出ると転移するかどうか選択肢が現れると説明された。走って帰ってきた俺らの苦労はなんだろうか? 経験値が得られるからいいけど。
「飛んできて時間短縮できるのはわかったが、こっからどっちに行けばいいか知ってるのか?」
スタート地点からのジャンプ機能があることが掲示板経由で拡散しているからかちらほらと別パーティがいろんな方向に散っていっている。ここからじゃ山があるとか地層むき出しとか言う方面の場所が何らかの目印がないといけないと思うのだが。俺らが選んだ方向もマップ見て上が北だと決め付けていたが、マップには東西南北が明記されてないから全然わからない。
「ああ、それな、スキルに探索ってのがあってだな」
「……ボーナススキル、素材探す有効。方位知れた」
「なるほど。副次的な効果があるスキルを選んだのか。だから掲示板でも方位が同じだったのか」
「一応探索者ジョブの人は持っているらしいが、戦闘では役に立たないと嘆く声も多いそうだ」
スキル掲示板を見ない俺の所為みたいだな。俺以外は知っていたみたいで、タリスにいたっては初期ボーナスのときに取得しているみたいな口ぶりだ。
「今から行く場所は岩石系モンスターが多いと聞くが、私とタリスの武器はいいとして、ディレンナお前はどういった得物を使う」
「あ、私の武器? 見れば……あれ? 出してなかったわ。あはは。で、武器なんだけど、装飾で稼いだお金で買ったこれ」
「メイスか」
ドワーフ系となればハンマーとかかと思ったが、ポーチから出したのはメイスのようなものだった。しかも持ち手のところにはナックルガードが付いている。どっかで見たことがある気がするが、思い出せない。
「これはシャシブル。一プレイヤーが趣味で作ったみたいで、それが流れ流れて露店に流れ着いたところを安く買った。叩くだけじゃなく突けるんだぞこれ」
「シャシブル、シャシブルねえ。お前ンところに在ったかアレ」
「いや、同じ形状のものは揃えないと聞いている。メイスと似たようなものならば家には無い筈だ」
「そうか。メイスと混同しているだけか」
記憶の中に一瞬よぎったアレはメイスだったのか。そう言えばメイス作った時持ちづらくてそんな形に近くなったような? どうだったかな。
「んじゃ、早速走るか」
「いや、ゆっくり行きたい。何気に採取ポイントはあるみたいだから拾って行きたい」
「了解」
[今回の戦闘により種族レベルの上昇。スキルポイントを1獲得しました。現在5ポイントです。
能力値を1つ上げてください]
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv10(↑1)
職業:アーチャー Lv7
副職業:テイマー Lv7
STR:25
VIT:24(↑1)
INT:12
SPD:28
RES:17
TEC:31
[今回の行動で【弓】のレベルが上昇]
[今回の行動で【短剣】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鏢】のレベルが上昇]
[今回の行動で【縄】のレベルが上昇]
[今回の行動で【手品】のレベルが上昇]
[今回の行動で【アクロバティック】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鷹の目】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鷲の目】のレベルが上昇]
[今回の行動で【識別】のレベルが上昇]
[取得可能スキルが追加されました]
[無属性魔法が習得できます]
採取スキルに幸運スキルを持っている二人が採取ポイントで何度かアイテムを回収している間に寄ってくるモンスター――――ゴブリンとラフモンキ-と言うやつやそのほかが何度も襲ってきたから撃退しているうちにレベルが低い縄と鏢が上がっていっている。しかもその後その後でランダムに起こる断末魔によっていろいろな種類が引き寄せられているが、遠くで姿が見えるとティグアに撃ち抜かれ、隠れて接近する奴は五芒星超人よろしく立体起動で動いている俺の得物となって次々死んでいっている。
そして昼前に林エリアと岩肌エリアに辿り着いた。ここで二人づつ交代して満腹度の回復のために昼飯の休憩をいったん挟むことにする。遠くを見渡せる鷹の目スキルを保持している俺らは別々で休憩、先に俺とタリスが昼食を取る。口数が少ないタリスと一緒だと話すことがないなーと思っていたが、いつも食べるときは考えにおっ塔しているからそんなに変わらないと思い直して黙々と保存食を食べ進め水を一口飲み込む。
そのときを見計っていたようにタリスが口を開いた。
「コクーンさんって、鍛冶、できるんすよね」
「ん、まあ出来るよ。適当に作ってるだけだからそこらの鍛冶プレイヤーからしたら邪道に近い気もするけどな」
「それでもそんな鉄装備が出来るんすよね。それで十分じゃないっすか」
「そうか? でも、これら俺の使うもんだし、ティグアのは身内でさらに特殊なプレイだから作るだけだだからなあ」
「売らないんですか? 依頼とかも受けない気ですか?」
「受注は受けないつもりだし、量産品でいいならギルド依頼は受けるし。そいうか、タリス意外に饒舌だな。無口なのはキャラか?」
皆といるときはぼそぼそと区切って喋っていたが、二人きりになると喋りだすな。こっちが地な気がする。
「あー、実は俺女性の前だと緊張しーで、女性が近くにいるとどもってしまうから小さく区切って喋っているんすよ」
「あー。俺の知人にもそんなやつがいたわ。いつもならべらべらといらんことまで喋る奴だったが、ウチのが近くに来た瞬間に口数が減ってガクガクしてるからよくわかるぞ」
なんか異様に震えが大きいようにも感じるが、まあいつもいつも上司の愚痴やら世界の金銭情勢がどうのってネタになる話からいらん話まで多いからザマァって感じで気にしてないんだけど。
「……はぁ。で、この世界だと別の自分ってことで話す練習をしようかと思っていたんですが、この世界自分じゃないからと露出が増えててそっちに気が行きがちで……」
「ははっ。若いな少年。そんなもん年食えばいくらか耐性が付くもんだぞ。抗えないときがあるがな」
「そんなものですか……? あ、でもコクーンさんならなぜか話が出来るんですよね」
「まあ俺中の人男だからな。そりゃ平気だろうな」
「え?」
カワラギとディレンナ教えてなかったのかよ。たぶん内心面白そうとかでディレンナがカワラギに口止め頼んだって感じかな。
「見張りチェンジだぞー」
「現状遠くにはモンスターの姿は見えるが、こちらには近づいて来ないようだ」
「了解。ほらキリキリ動けー」
「……ああ」
お、無口モードになった。本気で話すのが苦手なんだな。ま、これはこれで面白いから放置でもしておこう。
周囲を見回して警戒していたがどのモンスターもこちらに気づかないというか気づけないようで、このフィールドの境界近くには索敵範囲から外れるって事になるみたいだな。イベントだけかもしれないが。
昼食を食べ終えた二人が集合のサインを出すまで何事もなく、近くのポイントから採取したら目的の岩場エリアまで駆けて足を進めをした。
着いたフィールドの様相は短い草がそこらに生え、所々に岩が露出していると言った具合の場所だった。周りはサイやアルマジロみたいなモンスターがいるが、アルマジロはエネミーとなっておらず、サイのほうは掲示板を見ていたディレンナが近づいたり少し離れた場所にいると敵対するようになっているらしい。
「ここからどの方向に向かうかは決めているのか? 適当な方向にでも進む気でいるつもりか?」
「お前が言うなと言うやつだがね」
「うっせ」
ディレンナとタリスが言うにはここから西の方向へ進んでいくと緩やかな山岳地帯が出てくるそうな。そこの木々や採掘場所だと木工用木材や鉄、宝石などの鉱石が取れるらしい。木材と鉄は俺も欲しいな。今のところくず鉄少々と単体では飾りにしかならない素材があるだけだから、弓用と強化用に二、三十ほどそろえたいな。
「ここから岩石系モンスターが出るから戦い方に気をつけろな」
「俺は破砕系の武器持ってないから後ろにいていいか?」
「囮にでもなればいいさ」
「りょーかい」
岩石系だから防御に特化していることだろう。それに鉱石系の自然な鎧もつけていることだろうし、縄鏢は使えない。作ってみた槍も使えないとなると、有効な手段は短剣の柄頭と殴りなれた初心者の弓だけだな。壊れないだけまだましな装備だろう。
奥に進んでいくとゴリラが現れた。
「平地にゴリラっているもんなんだね」
「平地にって言うよりは、森や林の木の上にはいない感じだな」
「猿は木の上にいるんじゃないのか?」
「一般的に体の小さな猿はな。ゴリラの移動方法は木々の上をぴょんぴょん飛ぶんじゃないから、ほかの猿にもいえるが、そりゃ平地に現れたって不思議ではないさ」
ずっしずっしと重低音を響かせながら現れたそいつに識別をする。
[ストーンコング]
種:獣 エネミー Lv1
ランク2
おお! ついに初見Lv2から抜け出したぞ! これで安全に観察が……って安全にとは行かないか。
ストーンコングは三体で現れた。二体は重撃どもに任せてもう一体はこちらで受け持つか。ウサギたちは昼だから役に立たないしな。
「そっち二つは任せた」
「えっ! 本格的に一対一で倒せたことないよ私!」
「耐えて削れ」
ゴリラ特有のナックルウォーキングでこっちに向かってくる。その瞬間に俺も走り出し三番目のゴリラのアゴにドロップキックしてのけぞらせる。そこにアグニショットが当たる。
「俺に当てるなよ」
「それはフリという奴か?」
「お前の威力にそれは笑えんぞ」
上がっているスキルとレベルに俺の作った杖も加わると威力はバカにならん。駆け出しプレイヤー程度の俺の装備じゃ一発食らうと気絶判定が発生するレベルまでHPが低下するから本気でやめてほしい。ファンブルでもしたら死んでしまいます。
「良し、解体っと」
[未鑑定の鉱石]
・石の塊に見えるがきちんと精錬または研磨することでどのような鉱石かが判明する。
なんだろうか。識別してもわからないものが出てくるなんてな。鑑定してもわからないものだとランクが1だ。出てくるものが金属系だといいな。
「そっちが終わったのならこっちも手伝って欲しいかな?」
「すまんな。すでに終わってたかと思った」
転がってきたディレンナにそう言ってやるとだいぶ削れてふらふらになっているゴリラ二体に目を向ける。あ、一体沈んだ。
「もうそろそろ終わるじゃんか。適当に矢撃っとこ」
パシュッ コンッ パシュッ コンッ パシュッ コンッ
取り出しては撃って当たって落ちる動作を繰り返して弓のレベリングをしているとメイスの一撃でゴリラが沈んだ。
[今回の戦闘により職業レベルの上昇]
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv10
職業:アーチャー Lv8(↑1)
副職業:テイマー Lv7
STR:26(↑1)
VIT:25(↑1)
INT:13(↑1)
SPD:30(↑2)
RES:18(↑1)
TEC:33(↑2)
[今回の行動で【弓】のレベルが上昇]
[今回の行動で【短剣】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鷹の目】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鷲の目】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鑑定】のレベルが上昇]
器用値が三十台に突入したぞ。速さもあと少しで三十台に入りそうだ。しかし、賢さが一番低いな。
……そう言えば無属性魔法がどうたら言ってたが、なんだろうか?
0ポイントで取得? レベルでの開放なのかわからないが取れるんなら早速取っておこう。ま、上がるかどうか知らないから未来の俺が育てていることを思い描いて任せていようかな。
[今回の戦闘によりアルネブのレベルが上昇。
能力値を2つ上げてください]
[name:アルネブ]
種:ゲッコーラビット Lv6(↑1)
STR:10(↑1)
VIT:10(↑1)
INT:5
SPD:10
RES:4
TEC:4
[今回の戦闘によりニハルのレベルが上昇。
能力値を2つ上げてください]
[name:ニハル]
種:シャッテンラビット Lv6(↑1)
STR:10(↑1)
VIT:7
INT:4
SPD:12(↑1)
RES:5
TEC:6
順調に育っていくウサギたちに満足だが、まだ弱いな。いつ俺の半分まで到達するんだろうか?
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv10(↑1)
職業:アーチャー Lv8(↑1)
副職業:テイマー Lv7
STR:26(↑1)
VIT:25(↑2)
INT:13(↑1)
SPD:30(↑2)
RES:18(↑1)
TEC:33(↑2)
[スキル]
弓Lv11(↑2) 短剣Lv12(↑2) 鏢LV5(↑1) 縄LV3(↑2)
無属性魔法Lv1(新規)
鷹の目Lv9(↑1) 梟の目Lv6 鷲の目LV4(↑2)
アクロバティックLv7(↑1) ダッシュLv12
手品Lv10(↑1) 識別Lv13(↑1) 鑑定Lv5(↑1)
鍛金Lv7 錬金Lv3 鍛冶LV7 工作Lv8
耐毒Lv1 耐暑LV6(↑1)
スキルポイント5
[name:アルネブ]
種:ゲッコーラビット Lv6(↑1)
STR:10(↑1)
VIT:10(↑1)
INT:5
SPD:10
RES:4
TEC:4
[スキル]
体当たり 反光 薬草探知 夜目 夜行性
[name:ニハル]
種:シャッテンラビット Lv6(↑1)
STR:10(↑1)
VIT:7
INT:4
SPD:12(↑1)
RES:5
TEC:6
[スキル]
体当たり 順闇 警戒 夜目 夜行性




