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フィールドに出ると街中でも見えていたが、綺麗な蒼で染まった空が頭上に存在している。
ああ〜、浄化され〜……るとゲームが出来ない! 取り合えずば、町周りを散策。
「おんや?」
早速と言っていいほどに向こうから走ってくる何かを捉えた。かなり識別範囲外なのかなんにも見えない。
そして、ようやく入った瞬間に識別され、隠されたデータが表示される。
[ドギィ]
種:獣 エネミー Lv2
初めて犬のタイプでLv2か〜……。そいつの姿勢は半二足歩行と言っていいような、ナックルウォーキングっぽい移動の仕方をしている。
まずは動きの見極めからっと……。短剣を逆手で抜いて身体の前に両方で構える。
「……ん? うおっ!?」
体の前で交差させた腕がなんか柔らかい物に触れて驚いた。
「うわっと! あっぶね!」
現実では付いてないもんに気を取られて、ドギィの体当たりを躱すのが紙一重になった。
ここらへんリアルだなぁ。完璧に勝手に性転換させられたみたいな反応してしまった。
いかんな。テクスチャ貫通と違うから気がそれる。集中、集中。
「だいたい攻撃の癖が見えたかな」
ドギィの距離をつかず離れずで維持して10分くらいかな? 攻撃の前行動がだいたい見えてきた。
このモンスターの場合、首の動かし方で攻撃方法がだいたい決まってる。上に反らすと体当たり。下に落とすと噛みつき。ほかには助走を付けると突進。それくらい。
だいたいと言うのはかなりたまに攻撃が違っているってくらいだ。それに、ナックルウォーキングに使ってる手は使わないみたいだ。
「よし、反撃開始!」
組んでた腕を垂らし体を低く、クラウチングのオンユアマークに近い体勢になる。
正面に相対するドギィは頭を下げて、噛みつきの体勢だ。
「……3、……2、……1」
カウントと同じくらいで飛びかかってきたドギィに向かい、こちらもドギィに向かって飛び出す。
後ろに流れた手で矢筒から一本抜き出して、ドギィの目の前で上に跳ぶ。
ドギィを跳び越した先のドギィのいた場所に着地し、振り返り弓を腰から取る。矢筒から一本抜き、弓につがえる。
「弓の構え方って水平でもいいっけ?」
短剣を持ちながらの構えじゃ完全におかしいけど、映画じゃこうしてたし別にいいよね?
振り返った先にいたドギィは地面に倒れていて光エフェクトの血を吐いていた。口の中には矢羽根が覗いている。
「喉なら木の矢でも十分にダメージがはいるのか」
ドギィの口から覗いている矢は、最初に矢筒から抜いたやつだ。跳び越すと同じ時に投げ入れた。それだけでドギィのHPバーは四割近く減っている。
「んじゃ、バイバイ」
ドギィの頭を踏みつけて短剣で喉を引き裂く。これだけでHPバーは三割まで削れて、徐々に減少して行っている。
流血か窒息かわからないが、減っていくHPを見ながら五分を切る瞬間に目に矢を射る。それでHPバーが消え去った。
「えっと、解体の方法は……」
ウィンドウを開きヘルプから解体の仕方を見つける。
[ヘルプ:解体]
HPバーが消えたモンスターの体に触ると解体が行える。
触れる……か。データと言えグロ物に触れるのは抵抗あるだろ。と、グロ物化したドギィに目を向けると、綺麗な状態になっていた。
綺麗って言っても剥製みたいな状態で、矢が刺さっている。
触れてみると解体の確認のウィンドウが出たのでYESと選択する。後にはなにも残さない。
……不発?
「ログを見てみよ」
行動ログを呼び出してみると、ドギィを解体の後にはなにも落とさなかったとも表示されてない。ドロップなし? 野犬見たいなものだし、皮とか落とされてもなぁ……。
あと弓矢の方の依頼が完遂されていた。後は短剣だな。
「ドギィ来ないかなぁ?」
行動パターンが読めている敵の方が楽なんだけど。
待ちぼうけでちょっと遠くに来てみた。ほんの100mほど移動した程度。町はまだ見える距離だ。
そしたらいきなり背中に衝撃が来た。痛みはない。しかしHPバーが半分持ってかれた。
「感触がキモい! 感覚の設定どこだ!」
周囲に目を向け、安全か確認しながら感覚設定を発見。痛覚しかないが、これが感覚器のやつだろ。それを上まで跳ね上げる。
「よし、背中ど突いたやつどこや!」
さっきは感覚が鈍かったからわからなかったが、こっからが本番だ。
かすかだが、遠くに風切り音が聞こえる。周りを確認するが敵の赤のマークが見えない。
「と言うことは上! ビンゴ!」
空に黒い点が浮いていた。エネミーマーカーは見えないがあれが攻撃してきたやつだ。ヘイトマーカーがロックしている。
黒い点は若干ずつ大きくなっていることから急降下している。次食らったら死ぬ!
矢をつがえた弓でその点に狙いを付ける。悪かったらデスペナ、良ければ討伐。
「南無八幡大菩薩」
って違うか! 仏様の真言を使うってほどの大物じゃないだろうし。
でも当たった。ありがとう八幡大菩薩様! デジタルの中まで出張してきてくれて!
ちょうど手羽に刺さったのか暴れながら落ちてきた。短剣で羽を落として飛べなくすると識別をかけた。
[ピジョン]
種:獣 エネミー Lv2
またLv2……。しかしピジョンって、えーっと……鳩。見た目通りだな。凶暴性が増した鳩。
とりあえず短剣を構えてサクサク、サクサク。HPバーが消えた。解体はYESっと。
[鳩肉]
・普通の鳩の肉。
肉だ。鳩の胸肉。つまり鳩胸。くるっくー。
売りだな。
[両の依頼をクリアしたことから携帯食料が配布されます。受け取りますか?]
貰っとこう。小腹がすいたら食べよう。たぶんこう言うのは不味いけど。
さて、食料を得た事だし次の敵を倒そう。
[今回の戦闘により種族レベルの上昇。スキルポイントを1獲得しました。
能力値を1つ上げてください]
[取得可能スキルが追加されました]
レベルが上がったのか。さてどれを上げるかな?
うーんと……、魔法抵抗でいっか。
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv2(↑1)
職業:アーチャー Lv1
副職業:なし
STR:10
VIT:15
INT:5
SPD:17
RES:8(↑1)
TEC:20
うん、1程度じゃ変わらんよな。
で、スキルポイントは……なんだ?
ヘルプ読みました! スキルポイントってのは行動によって増えた取得可能スキルを得るか、能力値に振って強化出来るらしいです!
現在の俺の取得可能スキル。
コスト4:カウンター、地形把握
コスト3:剥ぎ取り、解体、鷹の目、回避
コスト2:精神集中、器用、手品
……いや手品ってなんだ? 剥ぎ取りと解体って被ってると思うんだが。
「とりあえずは保留っと」
[今回の行動で【アクロバッティック】のレベルが上昇]
[今回の行動で【ダッシュ】のレベルが上昇]
スキル取得のウィンドウを閉じるとまだ残ってた。スキルって行動することであがんのな。
とりあえずまだ時間あるからレベ上げすっか。
この世界ってウサギも好戦的なんだな。ドギィをハメる為の溝を削ってたんだけど、背後からラビットって種族のウサギが体当たりしてきた。お返しにふんづかまえてコキッと首折ったら一瞬でHP消し飛んだ。
解体したらドロップしたのはウサギ肉。売り!
そしてピジョン、ドギィ、ラビットを倒していたらレベルが上がった。アーチャーの。
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv2
職業:アーチャー Lv2(↑1)
副職業:なし
STR:11(↑1)
VIT:16(↑1)
INT:6(↑1)
SPD:19(↑2)
RES:9(↑1)
TEC:22(↑2)
アーチャーのレベルアップはスキルポイントと能力値上昇の選択がなかった。その代わり全体的に能力が上がった。
つまり、種族が能力値上昇の選択とスキルポイントの取得。職業は能力値の底上げってところか。じゃあ副職業は?
「副職業の取得はっと」
ヘルプの方を探すも無かったからゲーム付属の掲示板で探す。あった。
「職業レベルが5になるとギルドでできる……か。遠いな」
今日はこのくらいで止めよう。自宅仕事だとしても睡眠時間が削れるのはヤバい。
街の宿に泊まってログアウトログアウト。
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv2(↑1)
職業:アーチャー Lv2(↑1)
副職業:なし
STR:11(↑1)
VIT:16(↑1)
INT:6(↑1)
SPD:19(↑2)
RES:9(↑2)
TEC:22(↑2)
[スキル]
弓Lv1 短剣Lv1 ダッシュLv2(↑1) 工作Lv1 識別Lv1
アクロバティックLv2(↑1) 耐毒Lv1