19
日が落ちた後にオベリスクの戦いがあって、現在起きている時間を数えて21時間過ぎると十分ごとにステータスが1%マイナスされることがわかったから、これ以上マイナスにならないように蹴り起こしても大丈夫な明星を叩き起こし交代して眠りにつく。
「おい、時間だぞ。起きろコクーン」
「ん……、あと数分……」
「明星、コクーンが起きないから襲ってもよ――「起きた!」
寝起きの体に明星に体まさぐられるのはキツい。それでなくても明星が本気になりそうでやばい気がする。目が光ってた気がするし。
なに悔しそうな顔してんだ。刺すぞコラ。アァン?
「朝方起きていた時にインフォが来た。なにやら最初のところで何か起きたらしい」
ティグアに言われて見てみるとインフォのアイコンが光っていた。俺が起きていた時には出ていなかったので、だいたいプレイヤーが安全に行動を開始する夜明け頃に運営メールが届くみたいだ。三つ届いていた。
開いてみると最初いた場所にパーティ用の建物が建ったらしい。それとNPCがやって来たと書いてある。
これは何かある。完璧何かあるから。
「いったん戻ってなにが起こったのか見てみようか。攻略に関わるものもあるかもしれない」
「そうだな。この先にも行きたいが、確認は先にしたほうが良さそうだな」
移動するためにアイテムポーチから御輿を取り出すと、周りからベラが消えていた。帰るよりもここに残りたいとかどんだけ乗りたくないんだよ。まあ、そんなか細い抵抗は無視してっと。
「アルネブ、ニハル。ゴー!」
「あ痛ぁっ!?」
ウサギ達が匂いでを追って茂みに隠れていたベラを叩き出すと、流れ作業で出てきたベラを俺が転がして持ってきて明星が御輿に乗せて担ぐ。
「嫌だー! 降ろせー!」
「お前ダッシュスキル持ってないから俺たちから遅れるから無理だな。それに直ぐに取れと言ってもレベ1のお前と俺らじゃ速さが違うから無理。つまり無理。だいぶ無理、ぜーんぜん無理」
「まあ、諦めるんだなベラ」
「いやだー……」
明星がうなだれるベラを容赦なくぐるぐる巻きにして、安全ベルトと言う名の簀巻きをする。これで準備は完了。ウサギたちを御輿の上に乗せて担ぎ上げる。
「え~、本日はご乗車ありがとうございまぁす。ベラドンナ急行は九時二十八分、中央の町に向け発射いたします。発進時には衝撃がございますのでぇ、しっかりと固定していてください」
「自分から乗車してない上に、固定も何も縄で御輿と一体化してるから出来ないね」
「出発しんこーぅ!」
明星の言葉で走り出す。元来た道を逆走して真っ直ぐスタート地点に向かい、弱いモンスターを轢き撥ねていく。撥ねたモンスターは最後尾の明星がHPバーを割っていく。
[今回の戦闘により副職業レベルの上昇。スキルポイントを1獲得しました。現在6ポイントです。
能力値を1つ上げてください]
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv9
職業:アーチャー Lv7
副職業:テイマー Lv6(↑1)
STR:25
VIT:23
INT:12
SPD:28
RES:17(↑1)
TEC:31
[今回の行動で【ダッシュ】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鷹の目】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鷲の目】のレベルが上昇]
[今回の行動で【識別】のレベルが上昇]
[取得可能スキルが追加されました]
帰る際には行きの倍のモンスター量のように感じたが、これは昨日のエリア戦が関係していると思われるな。行きの際のモンスター編成は大体二、三匹程度だったのが今じゃ戦闘に出てきたゴーレム以外の編成で五、六匹現れているのがその証拠といえるだろう。ただの勘違いかもしれないけれど。
さて、スタート地点に戻ってみたらかなり様相が変わっていた。
まず第一に最初の建物。その建物には注視してなかったから最初から付いていたかわからないが、ギルドの看板が掛かっていた。中には受付嬢がカウンターに鎮座していて、元の場所のギルマスじゃない案内役の好青年がなにやら対応していた。壁には依頼ボードのようなものがあり、依頼のための用紙が何枚か張り出されていた。受付嬢に話を聞いてみると大体のルールは元のとこと同様であり、違うところといえば副職業の設定がこの場所では出来ないという点と、納品物以外は買い取ってくれないというところだろう。
そして次に露天商が現れたこと。ここに放り出された状態では手持ちの回復アイテムや食料品、その他には限界が出てくると当たり前に考えられるが、この露天商が現れたことにより手持ちのアイテムの補充が出来るようになった。だけど、それにはデメリットがあり、いつもの値段設定から食料品と回復アイテムが二倍、その他の消耗品に関しては1.5倍と求められる金銭が増加しているということだ。まあ、この露天商では買い取りもしていたらしいが、さすがに買い取り価格が一定ではないらしい。まあ、別々の物品を取り扱っている露天商に畑違いの分野の鑑定はさすがに出来ないのだろう。こぼれ聞こえるほかプレイヤーの言葉でそう考える。
最後に、インフォにもあったとおりの、なんと言うか、パーティハウスというものだろうか。それが出来ていた。しかもご丁寧に入り口の上に掲げられている看板には四人の名前が記入されている。そして、当たり前にその建物の周りにはほかのプレイヤーが物珍しそうに入り口付近で覗き込むようにたむろしている。一通りこの周辺を回ってみたのだが、この建物はここあわせて二軒しか経っていなかった。二軒ともある程度の余裕を持って設定されたのか、建物の周りに柵がぐるっと設置されていて、若干の畑が作れそうな土地があった。
「どう思う?」
「簡単に言えば、畑を作れとも、修練に使えとも取れる広さだな」
「建っている方向的には俺らが解いてきたなぞのイベントがあった場所の方角だな」
「………………」
そう言った方で聞いてないんだが、そう思うのかお前らは。ベラは現在の最高速で走っていたため、ダッシュの恩恵がない身ではあの速さは毒になるみたいで失神している。
俺が見た様子では何人かが柵をどうにか越えようと試しているが、柵を掴もうとする者、助走をつけて飛び越えようとする者、二人で組んでさらに上から飛び越えようとする連中がいるが、すべてその手前で勢いや衝撃みたいな運動エネルギーが消失したみたいに柵の5cmくらい手前で見えない何かに阻まれ停止して止まったり、止まって落下していたりしている。
「たぶん、俺ら以外、厳密に言えばイベントに挑むときに組んだパーティ、またはレギオンを組んだ連中しか入れなく、中で何かしらの設定が出来るんだろうさ。俺のゲーム勘がそう唱えている」
「そうなる感じだろうな。これら一帯のプレイヤーが進入拒否されていることがその証明になるだろう。しかし、どうやってこの人ごみを抜ける」
「俺らダッシュスキルで無理やり……、ってのはさすがに人が多い。逆に弾き返されそうだ」
野次馬根性でやってきたプレイヤーの数が多すぎて潜り込める隙間が見当たらない。肉の城壁だなまるで。
遠巻きにその一部にならないように眺めていると、いきなりプレイヤーの中から光のエフェクトが数箇所で上がった。初めて見るが、アレが死亡エフェクトなのかプレイヤーが消えたのが良く見える。その立ち上ったエフェクトの下にPKされた証拠である、やられたプレイヤーのドロップである光の玉が浮いていた。
そんなに密集してるとPK職に狙われるのは当たり前だよなー……。PKって識別とか掲示板の被害のとこで言ってた看破のレベルが偽装より高くないとなかなか見破れないと来たもんだ。それにそんな密集しているとさらに見分けづらいだろうな。
「俺らのギルドハウスの前で殺人起きてるよ。お巡りさんこっちでーす」
「いや、ここにやってきたNPCに同心は来てないから呼んでも意味がないぞ」
「同心とかお前警察を言うときいっつもそれだな。気にしてなかったけど、明星がお巡り言ったときに聞くと若干違和感覚えたぞ」
「そうか? 私が使う呼称は爺殿の影響が色濃い。修行中はいつも爺殿と一緒だったためにな」
「修行って、リアルでも鍛えてるってことですか? それなら戦闘時間短いことに説明つくな」
「ちなみにだが、そこのもそこそこは鍛えているはずだが?」
「俺は必要最低限に健康に必要な分あればいーんですー。そんな自分鍛えてますからとかアピールしませんからねー」
今の職業が出不精になりやすいから腹筋は一応割れてるように保ってる程度だけどな。
腕の筋肉とかは音ゲーしてたら勝手に鍛えられていくから楽。
「……っは!?」
「おーっし、ベラも起きて、野次馬も捌けてきたからホームに入ってみるぞい」
遠巻きに見ていたため下ろしていた腰を上げて、自分たちのための建物に向かい歩いていく。えっと、イベント日数は、あと……五日半くらいだっけかな?
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv9
職業:アーチャー Lv7
副職業:テイマー Lv7(↑1)
STR:25
VIT:23
INT:12
SPD:28
RES:17(↑1)
TEC:31
[スキル]
弓Lv7 短剣Lv10 鏢LV4 縄LV1
鷹の目Lv8(↑1) 梟の目Lv6 鷲の目LV2(↑1)
アクロバティックLv7 ダッシュLv12(↑1)
手品Lv9 識別Lv11(↑1)
鍛金Lv7 錬金Lv3 鍛冶LV7 工作Lv8
耐毒Lv1 耐暑LV5
スキルポイント6




