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隠し火筒の籠手に爆石を込めながら戻ると、三人が座って待っていた。
「障害は排除、周囲クリア。オーバー?」
「状況を確認。オーバー」
「てかスゴいね、三人を倒すなんて」
「まさかのゲリラ弓兵とかテラ漫画の世界だし……」
「基本殴ってるからな。メインが短剣でサブが弓だから、弓より短剣の方がレベル高いよ」
弓で殴ったりしてるしそれ知ったら、どんな弓兵だよってマジレスしてくるだろうな。こんな弓兵ですがなにか?
少し空腹が見えたので携帯食を口に入れる。
「それでどうする? 行き先は四方向だがどこに行く」
「私はどこでも!」
「皆さんが行くところに着いていきます」
「うわ困るわそれ。俺もどうしたいか聞くつもりだったから」
一人なら勝手気ままに散策して東へ西へ、北南への大移動だが、あと三人が付いてくるから委ねたのだが目的が無いみたいだ。まあ、情報が無いから目的も目標も目指す先さえもありゃせんからな。
「じゃあこうしよう。マップはここ、仮に安全地域を中心に八方位から基本四方位以外の方向にマスが広がってる。なので、その方向に立って四人でじゃんけんする」
言った瞬間にバッと三人とも直感で好きな方角に移動した。
ティグアは南西、明星は北西、ベラは南東。残る北東は俺に決まる。
「じゃーんけーん」
「さーいしょーは」
「じゃんっけんっ」
「ちょっと待った!」
明星にいきなり止められた。まあ、あのかけ声ならそうなるだろうな。
「タイミングがバラバラでよくしようと思いますね!」
「あのまま行けばベラが最初に脱落しそうだったから」
「……そうですね、いいんですよ。いつものことです。ベラはいっつもハブですよ。マングースに標的にされるんですよ」
「さすがにこのあとずっとこれだと堪えそうだ」
鬱っ気がある人格のようだ。扱いを間違えたら一気に沈んで行きそうだ。
「んじゃ……、じゃんけんっ」『ぽん!』
じゃんけんの勝者はベラだった。なんか絶望した顔だったがそんなに勝つのが嫌だったのか? 二番目の負け抜けが迷惑とか目立つとかの理由でいいってのはわかるけど、本気の絶望フェイスだったぞ。
「さーて、なにが出てくるかな?」
足取り軽く先頭を歩く。識別が他のメンバーよりレベルが高いので罠探知&アイテム識別を行えるので必然的にこうなった。ただ人とか物を何度も識別してただけで上がるから、めんどくさがらなかったら俺並になってたはずだが……。
この方角はサバンナみたいに草が低く、葉が高い。鷹の目も障害物がないからフルで働いてる。
「さて、そう言えば明星はサブは何なんだ? 重ね職じゃないと思うが」
「そうだねぇ。重ねて強化とかも考えたけど、魔法職で遠距離と火力を強化したいってなったから神文字使いを選んだ」
神文字とは不思議な言葉だが、ルーンの言葉は知ってる。グレートブリテン及びアイルランド連合国、アイルランド辺りの神話や英雄譚に出てくる文字だ。三角やらFみたいな文字を使って魔法を発動させるとかのはずだった。
……間違って覚えてそうだな。
「どう言った力を持ってるんだ?」
「今は武器や防具、消耗品にMPを使ってルーンを刻み込んで一定時間底上げするってくらいかな?」
「バフとどう違うんだ?」
「さあ? サクサク倒せるくらいになった程度しかわからない。プレイヤー自身には使用できないから重ね掛けができるってことかな」
ルーンでの強化はバフより少ないが、四回でバフ程度になるみたいで、一回使ってから次使えるまでの時間が回数により伸びるが四回目までだと一分もかからないと。
これはバフとどっこいどっこいな感じがする。だがなんか見落としてそうだ。
「おっと、足元がぬかるみだした。気を付けろ」
「はーい」
「……い」
「了解」
このフィールドは湿地帯の中の森となるのか地面に水気が含まれだしたので、草を踏んで泥濘に足を取られないようにしながら前進していく。
「前方に敵2、名前は……マッドスライム。レベルは低い」
[マッドスライム]
種:物 エネミー LV2
ランク2
いまだ初見でのLV1は見たことがないのは俺だけか?
「ベラ行くか?」
「ベラは生産職志望だから戦いません。戦いたくありません。戦ったら負けだと思ってます」
「寄生か〜。まあ明星の友達だから邪険にしないけどさ」
「俺もそう思うんだけど、痛いのがいやだとか死ぬのがいやだとか言ってたし」
なんでコレ始めたし。
「ティグアは……」
「仕留めたぞ」
「おい……」
こっちはこっちでなにいきなり仕留めてるんだよ……。
全員が解体系スキルを持ってないので代表して俺が解体する。
[スライムグラベル]
マッドスライムを構成していた一部。小さな石や砂が混ざっている。
道具を作るのに向いている。
グラベル? 説明からして砂利か砂だと思う。セメントに使えそうだな。けどセメントってどう作ったらいいのだろうか。
モンスターが出てきたから何かないかと周囲を見てもらう。基本のフィールドみたいに何か広げるためのなぞがあるに決まってる。
「どうだ? なにかそういうのが見えるか?」
「こっちは何も」
「私のほうには……、いや、レベルが上がって薄っすらとだが何か建造物みたいのが見える。アレかもしれない」
ほう。俺もその方向を見つめると湿地の森に似つかわしくない石で出来た何かが見える。
たぶんアレがそういったものだろうが、天辺の三角の部分しか見えないが、距離は近いものではないのだろう。それでも行ってみる価値はある。
「はひぃ……ちょっと疲れました……。休みまそうよ……」
「なんで疲れてるんだ?」
「ヒューマンで俺らと違ってダッシュが無いからじゃないからってことでしょう」
「あれスタミナアップもあったっけ? なら仕方ないな」
「じゃあ……」
「こんなところにいい感じの丸太が」
「へっ?」
「そうだな。いい感じの丸太だな」
「何を……」
「ロープは足りるだろうか?」
良いところに人がぶら下がっても折れなさそうな細めの丸太が転がっていた。これでベラを運ぶとする。
「獲物的な運び方はいやですよ! せめて籠にしてください!」
「? 何を言ってるんだ? そんなことするわけないだろ」
「囮とするならまだしも仲間を逃げづらくするわけが無いだろう」
原始的な運び方やお猿の籠屋じゃほいさっさとするわけないだろ。1人だけおいて逃げることになるだろう。 と言うわけで丸太は何本かあるので作り始める。
[今回の行動で【工作】のレベルが上昇]
「よし、出発するぞ」
「降ろしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
上に乗っているベラが顔を隠して揺れている。
「暴れるな。移動しにくいだろう」
「こっちはこれ作ってたから時間が多少圧してんだよ。今日までであの石のなんかの所まで行きたい感じなんだよ」
「それでももうちょっと形ってのがー!」
「ダッシュのレベルが上がった。もう少し速度を出しでもって大丈夫だ」
「ヤー」
上でウダウダ言っている御輿を無視して早歩きの速度を上げる。
ベラを乗せているのはさっき言ったみたいに御輿。二人で担げるみたいな小さな御輿で、神を入れる場所を椅子にして縄をシートベルト代わりにしているので神体もどきのベラは揺れるくらいしか出来ない。
あの建造物付近にあるだろう謎をサクッとクリアして奥の方へ言ってみたいぜ。
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv8
職業:アーチャー Lv6
副職業:テイマー Lv5
STR:22
VIT:22
INT:11
SPD:26
RES:15
TEC:29
[スキル]
弓Lv6 短剣Lv9 鏢LV3
鷹の目Lv7 梟の目Lv5
アクロバティックLv6 ダッシュLv10
手品Lv9 識別Lv9
鍛金Lv7 錬金Lv3 鍛冶LV7 工作Lv7(↑1)
耐毒Lv1 耐暑LV5




