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弓兵はモンスターを駆る?  作者: 狭凪
第一章

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16

 イベント開始らしいが、なんともまあゲーム初期からの投げっぱなし姿勢で放り出してくれちゃって。



「……面白いじゃないか」


「お、おう……」



 なんか明星に引かれたぞ。俺今なんかした?



「さて、イベントが始まった訳だが、お前たちはどうするつもりだ? ウチのはこの通りやる気に満ちている」


「そうですねぇ……。パーティ登録でもします?」


「残りの枠二つの中に変態を入れるのはなぁ……」



 一パーティ六人で枠が俺、ティグア、ウサギ二羽だから二人を入れるとテイムができない。



「どうせ私がいるから組めないんですよ……。魔物相手とかgkbrで戦力にはなりませんし」


「コクーンの戯れ言だ。必要ならレギオンをすればいい」


「他にも仲間に入れたい奴がいるから最終的にレギオン化するだろうし」


「じゃあいいんですね! そっちからパーティ加入してください」



 パーティ加入を送るとパーティ欄に二人の名前が現れる。片方を解除しようとすると必ず両方が外れる仕組みになっているみたいだ。

 他の知り合いを探すために建物内を見回すと、半分のプレイヤーが建物から消えていた。すでに出ている連中がいたらしい。



「さて、出遅れたが俺らも外に出てみるか」


「そうしましょう!」



 マップを開いてみると表示される最初の地形はこの建物を中心に広い原っぱが円形に広がっている。確認している間に明星が意気揚々と扉を出ると俺の目が飛んでくる物体を見つけた。



「ティグア!」


「了解した! スタンバッシュ!」



 明星の後ろ側から技能を使い突撃し、転ばせた後で盾を構えると弾かれた物体が木の床に刺さる。



「敵襲! ベラは建物内、ティグアは防御、明星は寝てろ」


「ちょ、ひどっ!」


「コクーンは」


「倒してくる」



 レベ9のスキルは並じゃない。常時徒歩と常時全速力くらいの差があり、今の鷹の目の範囲だと走るとすぐに目的地に辿り着く。

 周囲のフィールドは建物を中心に空き地になっており、外縁部からはいきなり地質、地形が変わってそこから矢が放たれた場所の方向には木が茂っている。遮蔽物があり、望遠系のスキル保持をしていないと発見できなさそうである。


 狙ってきた敵は男二人、女一人、犬一匹? 獣人系のプレイヤーか。観測手ウォッチャーの犬、前衛盾職シールダーの男、回復職クレリックの男に狙撃手スナイパーの女で出待ちとか陰湿だな。悪職のPK連中だな。



「逃げない……か。まあ迫ってきているのが俺一人だから油断しているんだろうが、それは問屋がおろさないってね。ロングレンジ」



 初期武装の木の弓を構えて技能を呟くと矢の軌道が目に映る。その先は観測手の目を狙い、明星たちを狙わせないためだ。まあ狙撃手のプレイヤーが鷹の目と似たスキル持ってたら意味ないが、分業してることから持っていないだろう。



「狙い良し、ブレ多少あり。障害物クリア」



 全員が俺から目を離した瞬間に走ること、呼吸を止めて瞬時に放つ。木の弓のため威力は低いだろうが欠損ペナルティが発生するからよしとして置こう。矢が命中したことは確認せずにまた走ること再開しあいつらのところへ向かう。


 あと数mと言う所で俺の接近に気づき各々自分の得物を構える。犬のプレイヤーは目ではなく尖った犬耳に刺さったようで、痛覚まで入れていたのか耳を押さえてしゃがみ込んでいた。仲間のプレイヤーはその人を守る立ち位置にいる。 こちらもポーチに手を入れ縄鏢にしている縄を取り出す。短剣は腰のホルスターに填まっているがどう見てもリーチ不足だ。



「よお、お前らPK? 流れ弾だとしても弾かれて刺さるってのは完璧故意だと思うのだが?」


「違うよ。俺らは安全にモンスターを狩ろうと」


「まあ、そんなことどうでもいいんだが、俺の識別だとお前らえっと、盗賊バンデッド暗殺者アサシン蛮族トライヴァーに……異端者ヘレティック? 回復職が悪職になるとそんな職に変わるのか」



 神父やシスターがだいたい回復持ちだから、堕ちたみたいな感じで異端と設定したんだろうか。

 暗殺者の犬、異端者の男が一陣組で盗賊の女と蛮族の男が二陣の新規者なのだろう。回復職は副職でしか取れないと聞くからそうだろう。暗殺者は重複職を選択してエイム特化しているかもしれない。

 蛮族だけがなにかあるかもしれない。



 ???[蛮族]プレイヤー

 種:人 中立



 敵対ならエネミーがあるはずだがなく、代わりに中立の文字がある。



「なに? 俺がどうしたんだ」


「いや……、バックダッシュ! 別にっ!」



 後ろ数mの位置に移動するだけの技能のバックダッシュで目の前を通過する矢を避ける。



「何やってる!」


「だってただの弓兵でしょ! ここで倒して変装し直せば大丈夫じゃない」


「普通に逃げれば良かったんです!」


「だってワンちゃんが射たれたんだからやっても良いはずでしょ!」



 へえ、話せる奴いるじゃん。職業が異端者な癖に始めに会話を持ってくるなんていい人じゃないか。



「話してだめならやりましょう。目の前の1人ですし。それでだめなら逃げますよ」



 あ、同じ人だったわこの異端者。PK職に染まってるよ。



「では見逃してくれませんか? 狙ったのは謝りますし、こちらも負傷しましたから」


「うーん……、まあその女の人を1キルさせてくれたらいいよ?」


「そうですねぇ……」



 俺の提案に無傷な二人が彼女を注視する。どうしたものかと考えているみたいだ。

 彼女は集まった視線に困惑している。



「それでペナルティがいつものだとしたら受けてましたが、イベント中ですしイレギュラーがありそうですから勘弁してください」


「まあ、そうなるね。だったら戦う?」


「ほどほどでお願いしますね!」



 異端者のプレイヤーが薙いで来たのは警棒ほどの鉄の棒。見た目は棍棒かそこらだが、しなっている。たぶんだが鞭、それも鎧相手でも十分に威力がある鉄鞭だ。

 回復職なら細剣やロッド、スタッフでも使ってろよ。



「瀕死で止めておいてやるよ」


「それはありがとうございます」



 鉄鞭をよけながら肘から上を軽く上げて人差し指で前を指す。

 目の前の異端者はそれを一瞥しただけで鉄鞭を上から振り下ろしてくる。俺はバックダッシュで下がると地面に伏せる。



「うあぁっ!!」



 するといきなり異端者の彼が燃え上がった。

 その隙に縄鏢を取り出して刺さらないよう注意して顔面に叩きつけると、ぱったり倒れ気絶状態になった。



「鉄防具付けているのにあの威力の魔法だと!?」


「魔法のスキルを取っているのか。気を付けろ、体術の中で使ってくるかもしれない」



 そう考えるかも知れないが、完全に的外れである。なにせさっきの火魔法は俺ではなく、ティグアの狙撃なのだ!

 無論俺が作った杖に鷹の目、狙撃スキルのレベル9の相乗効果である。 集魔の結晶の効果である魔法の収束なのだが、弾丸サイズ、口径以内の大きさで火魔法レベル1のアグニショットを通常の5、6mから0二つほど足した位まで伸ばした。しかし、その最大距離だと風だったり障害物だったり、距離で威力が落ちるなど問題点が多かったらしいが、狙撃を取得した瞬間に安定し始めただと。俺も取れるようになっていたが、今はいらない。



「そうか、魔法か」



 蛮族のプレイヤーが遠くを見て呟いていた。しかし、直ぐに腰を落とし大盾を構えて仲間の前にでる。



「うわぁ……、遠距離と盾持ちだと攻撃しづらくなった……」


「クイックドロウ!」


 大盾の後ろに隠れながら矢を射ってくる女プレイヤーは、こっちが狙いを定める前に大盾の後ろに隠れて攻撃できない。

 犬のプレイヤーは女と一緒の時にちょっとだけ顔を出して確認してきている。若干面白い。



「でもま、二つ一遍に攻撃すれば良いだけって事だ」



 次に出てくるときに合わせて両手を片方ずつに向ける。

 バンッ! と音が鳴った瞬間に三人のプレイヤーが仰け反った。

 一人は右肩に何本か棘が生えた女プレイヤー。一人は破片で額を切った犬プレイヤー。


 で、も一人が俺、投げナイフと鉄の矢を白煙上がる籠手で受けて仰け反っただけだが。



「はあ、これで多分そこのと同じ量のHP削った気がする。逃げて良いよー」



 よっこらせと上体を戻して視線を向ける。



「トドメを刺ささないのか?」


「なに? デスペナ欲しいの?」


「いや、刺さないならそれでいいけど……」


「こんなとこでPK狩ってこれ以上時間費やしたくないし。じゃっ!」



 結局準備してた縄使わなかったな。試作品の籠手だけであとはなにもしてないし。

 さっさと戻ってイベントを楽しもう!


[今回の行動で【ダッシュ】のレベルが上昇]

[今回の行動で【手品】のレベルが上昇]

[今回の行動で【鷹の目】のレベルが上昇]

[取得可能スキルが追加されました]



――――――――

――――――――

閑話 白煙上げた籠手


 いろいろと試作品を作る時々に出てくるガイドに沿いながら、ティグアの杖を作り上げたのだが色々と貰ったりした素材が余った。その中で火薬一瓶をぜんぜん使わなかった。



「一瓶程度だと六発にも満たなそうなだよなぁ……」



 ランプの光に当てて火薬を空かしてみている。ただ考えてるだけの格好付けポーズをしているとティグアが狩りから帰ってきた。なにやら思案顔で杖を見ている。



「どうした? 何か問題でも起きたのか」


「いや、そういうわけではなく、なにやらダメージが定まらない。レベルが低いからなのか、ほかの要素を育てなければならないのか……」


「ん……?」



 どう見てもおかしなところはなく、俺の杖も万全、魔法スキルも持っていた火と取得した水は順調に育っている。最近は狙撃を育て始めていて、レベル9になると鷹の目を取るそうだ。

 てか、先に始めた俺よりレベルが上とか、レベリング場所どこだよ……。


 まあ、ログイン時間の三分の一近く鍛治に打ち込んでりゃそうもなるか。



「で、どう違うんだ?」


「遠距離からと接近してからのが一番違うな。何というか、接近するとダメージが一割ほど違う」


「普通近距離からのが強いと思うんだがなぁ」



 初速度と到達点とじゃ速さが違ってくる。そう思うんだが……。



「やはり構えながらは無理があったか」


「構えながらって、なにを構えてた?」


「もちろんお前が作った盾だが?」



 はぁ……。とため息を吐いて肩を落とす。何を勘違いしているのだろうかこいつは。



「金属装備ペナルティは重なるんだぞ? 杖自体が鉄な上に盾を構えるなんてペナルティが悪化するに決まっているだろう」


「そうなのか。覚えておこう」


「それを回避するためには俺の手甲や彫金付与で属性を与えてやるって事だが」


「ならそれを貰う」



 振っていた手に着けてていた籠手を直ぐに外され奪われた。何という早技……。



「じゃなくて、俺の装備とんなよ!」


「なにを言っている。お前の物は私の物、私の物はお前の物といつも共有しているじゃないか」


「譲歩したジャイアニズムを掲げてたなそう言えば。だけど俺の籠手一対しか無いんだけど」


「なら作ればいい私と対になるものを」



 そう簡単に言ってくれちゃって、作るこっちの身にもなれよってんだ。



「弾丸の方はどうなっている」


「薬莢は作ったが、一発分が瓶の五分の二くらい使うからそんなに量産出来ない。精々デリンジャーの近距離ショートレンジだ」


「あの爆発する砂利で代用出来ないのか?」


「ありゃ信管だ。火薬並に入れると爆弾に早変わり。使えんよ」



 爆弾で思い出したが炸裂外装リアクティブアーマーってのがあったな。装甲を爆発させることで相手を攻撃したり攻撃を防御するとかなんとか。

 多分低い効果の試作品か失敗するだろうが作ってみるか。

 ついでに火属性の籠手も。




[今回の行動で【鍛金】のレベルが上昇]

[今回の行動で【手品】のレベルが上昇]

[今回の行動で【工作】のレベルが上昇]

[今回の行動で【鍛冶】のレベルが上昇]

[今回の行動で【錬金】のレベルが上昇]

[今回の行動で【耐暑】のレベルが上昇]



 最近なぜか手品に経験値が振られているのか、手品のレベルが上がっている。思い当たる節はディルマのおっさんが、「お前の鍛冶は手品みてぇにぽんぽんできるな」と言ったくらい。



[緋鱗の籠手]

 VIT+20 耐久80

【火属性:小→中】

付与【火属性:小】

・属性蜥蜴の鱗をふんだんに使われた籠手。

 金属で作られているが、属性によって金属ペナルティが減少される。


[隠し火筒の籠手]

 VIT+17 耐久80

【隠し火筒】

付与【消費低下】

・籠手の中に火筒が仕込まれている。一回一回爆石を仕込まなければならないが、その分威力、距離とも十分である。




 ……………………あれぇぇぇぇぇ?

[name:コクーン]

種族 人間 女 Lv8

職業:アーチャー Lv6

副職業:テイマー Lv5


STR:22

VIT:22

INT:11

SPD:26

RES:15

TEC:29


[スキル]

 弓Lv6 短剣Lv9 鏢LV3

 鷹の目Lv7(↑1) 梟の目Lv5

 アクロバティックLv6 ダッシュLv10(↑1)

 手品Lv9(↑3) 識別Lv9

 鍛金Lv7(↑1) 錬金Lv3(↑2) 鍛冶LV7(↑2) 工作Lv6(↑1)

 耐毒Lv1 耐暑LV5(↑1)

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