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[イベントが開始されるまであと一時間となりました。集合地点に集まっていない参加者は不参加扱いとなります。ご注意ください]
イベントの集合地点はチェントロの端、何も建設されていない場所の一角。と言うより中心にポツンと建っていた公民館のような建物だ。
参加者以外は入れず、参加しなかったプレイヤーが外で入っていく俺らを野次馬していた。
建物の中はかなりの広さで空間をいじっているのは外見より窓の数が多い事でわかった。
「さて、そろそろだけどキチンと魔法上げてたか?」
「抜かりはないよ。金銭もほどほど稼いで、消費アイテムの個数もそれなりに持って来た」
「プレイヤーがすごい買い込んでいたから一時売り切れ状態になってたな。そのあとは値上がりしてたけど」
「そういうお前の方はどうなんだ? テイムモンスター連れてきて、もの凄い目立っていたな」
「そうか? お前とパーティ組むことになるからウサギしか連れてきてないが」
コートの襟の中、左右の肩で寝ているニハルとアルネブちょうど良くモコモコしているので気持ちいい。
「サモナーは始まってから召喚できるから一目じゃわからないが、ウサギ連れはお前だけだ」
「いーじゃん。こいつら強いよ? 夜だと」
「永久昼間フィールドだとどうするつもりだったんだ?」
「モコモコ要員にするだけ」
そうは言うが夜だけとか暗闇でしか活躍できないコイツらレベ上げ辛いんだから。
「おーっす! コクーンお久しぶり!」
「誰だコイツ。馴れ馴れしいな撃つか?」
「撃つなバカ。コイツはフレの変態一号だ」
「そうか。よろしく変態一号」
「明星です! 何ですか人を変態変態と。しかも一号とは」
「胸もませろと言ってきただろ」
「ああ、撃つか」
「ギャー!? 撃たないで!」
いつも通り騒がしい明星は装備が一新して短弓と長めの短剣を装備していた。
「そういえば、お前相方見つけたのか?」
「ちゃんと見つけたぜ! ちょうど友達に始めたけどどうすればって言うから、手伝ってお礼に相方になって貰った! それにしても、コクーンの相方さんすごいっすね。お二人で並ぶとツインタワーみたいな」
ティグアの身長は俺とほぼ変わらない。リアルでは俺の方が若干低い。若干な!
「そうか。でそのお友達は?」
「ちょっと待って……と、おーいこっちだよ」
「はひぃ……。なんすかこの広さでそれを感じさせない人数とか……。私を殺しに来てるよ」
暗い青の目隠れショートボブのなんかノットアウトドアと言うような外見の女の子がやって来た。種族は……ヒューマンか?
「この子が私の相方のベラドンナです」
「ベラドンナ?」
・ベラドンナ
イタリア語で美しい女を意味する毒花。花言葉は沈黙。
「指差しで決めた名前に嫌み言われるとかなんの罰ですかね……フヒッ」
「まあ、こんな奴だが仲良くしてやってくれ!」
「お前の友達なら何度か顔を合わせることがあるだろうからな」
「わーい、同情でフレンドが増えた……。ベラは明星のバーターだから当然ですよね」
「私の方からもしておくとするよ」
すぐに承認されたメッセージが帰ってくる。ディレンナよりは遅いがこれが普通だろう。
「コクーンに紹介したし、他にも知り合いを回りたいけど」
「そろそろ始まる時間だな」
[時間になりました。皆様静粛してください]
イベントが始まるようだ。
『やあやあ皆さんこーんにーちわー!』
いきなり女性アニメ声が周囲に響いた。
『あーれー? 反応が悪いなぁ。こーんにーちわー!』
一応こんちわ程度だが小さく返しておこう。こういうタイプはテンプレだとめんどくさいことになるから。
『よい子のみんなはありがとー! 悪いこのみんなはギールティー! ってな感じで〜、開幕挨拶はこのくらいにして、改めて初めましてプレイヤーの皆さん。私がゲームマスター6だよー? ろくちゃんって呼んでねー』
ろくちゃんと呼称しなければならない声の持ち主はゲームマスターと名乗った。つまり、ルール側の人間と言うこと。
『さてー、今回は第一回目のイベントが開催されると言うことなので、私が立候補した訳なんだけど取り合えず私の考えは参加不参加による格差だよーん』
格差、と聞いてもなにがどう格差するのかと言う疑問が沸く。
『今回のイベントは経験値ブースト。君たちまだスキル共々一桁だよね? だからある一定までは経験値がブーストして入ります! 9から育たないってことがあると思うけど、それは今回のイベントから10以降が解禁されるってわけー』
周りのプレイヤーからどよめきが生まれる。9でストップして上がらないプレイヤーばかりだったらしい。
『あと、しこーかそく? ってのを導入してみたから、ここでは一週間住んでもらうから。あと、ここでの掲示板は外部と繋がらないし、外のサイトは見れないから気を付けてね? あとの話は個々で【質問】ろくちゃんのお部屋【回答】で聞いてきてね! じゃあ、イベントぉ〜、スタートっ!!』
その瞬間にズズンと地面が揺れた。
それからゲームマスターの声は聞こえなくなり、建物内はプレイヤー同士の声で埋まった。




