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あのあとファームでログアウトして、少しだけ外で時間を過ごしてからインし直す。
[フレンドからメッセージが届いてます]
相手はカワラギと明星だった。カワラギからは試作の鞍とレギンスができたとのことで来てくれらしい。明星の方はイベントの相手が見つからないって愚痴だった。そんな事でメールしてこないでくれ。
とりあえず、カワラギに頼んだものを貰いに行くためキタルファと一緒に走る。
「さっそく来たのか。てかレベル上がってねえのな」
「そんなレベ廃みたく一昼夜レベリングしてるわけじゃないからな。昨日は新しいスキル習得イベみたいなんをやってたから時間が潰れてな」
「まーた増やすのか。お前みたいなのは装備を俺らに任せてフィールド走ってるイメージなんだがな」
「俺は流されるままにやってるだけだ」
鍛金は間違えて取っただけだし、鍛冶は誘われて。今の彫金だって変だと言われて勧められた奴だ。
「で、鞍と俺のズボンは?」
「それなら、ほらよ」
アイテム袋から出して渡される。
[馬の鞍:試作]
VIT+2 耐久90 重量2
【均衡】【馬術】
・馬の皮で作られた鞍。試作のため様々なものが低い。
[ホースハイドのレギンス]
VIT+8 耐久80 重量1
・馬の皮から作られたレギンス。伸びが良く、動きの邪魔にならない。
試作という割にはうまくできている。少しばかり能力が低いと言うのが試作たる所以だろう。
ウィンドウから装備を開き、ズボンを変える。なかなかいい履き心地だ。
「履き替えは一瞬なんだな。しかも変わる瞬間は初期骨格のモジュールだから生足は見えない」
「ここはAコードのゲームで、服装は最低限のスキンだから当たり前だろ?」
「そうだな。不意に見えてしまってBANされちゃたまったもんじゃない」
ヤレヤレと頭を振って苦笑いを浮かべる。
「ところで試作ってことは正規も作るんだろ? いつになる」
「そりゃイベ後だろ。俺もそろそろレベル上げせんとな」
「そろそろだっけか? 頑張れよ」
「おう」
カワラギも忙しくて装備をイベントが終わるまで作らないみたいだ。コートの中の服はまだ初期装備だからどうにかしたいんだが、いっそのこと買おうかな?
「初期服より強い服ってないか? まあ狩ってないから皮は増えてないから出せないが」
「前貰った分でいい。それでちょっとした分なら出せる」
[ウサギの冒険服]
VIT+3 SPD+2 耐久20 重量1
・ウサギの皮から作られた簡単な衣服。
[蛇革のベルト]
VIT+1 耐久20 重量1
・蛇の皮から作られた丈夫なベルト。
[牛皮の靴]
VIT+2 耐久20 重量1
・牛の皮から作られた靴。履き心地は良い。
本気でちょっとしたもんだな。毛が生えた程度か。まあ、今はこんなもんか。
「んじゃ、俺は相方の装備作っから」
「そうか。俺の方も相方のために集めるよ」
「またイベント中に」
「ああイベント中に」
イベントに向けて次の場所である鍛冶屋に行く。
カワラギの相方は知らないが、俺の相方の方は我が儘を最低限通してやらないと後々嫌がらせしてくるからさっさと作るに限る。昨日はついつい潰してしまったが、他の依頼品も作らないと素材がな。
[風切のプレート]
VIT+14 耐久60 重量5
【風属性:小】
・烏の風切り羽根を使用して作られた防具。
金属で作られているが、属性によって金属ペナルティが減少される。
[上質なショートソード]
ATK+12 耐久74 重量3
[上質なメイス]
ATK+14 耐久80 重量6
・上質な鉄塊で作られた普通の武器。
[今回の行動で【鍛冶】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鍛金】のレベルが上昇]
[今回の行動で【耐暑】のレベルが上昇]
「よし! 最低限ラインでできた!」
「ぶはっは! 最低限とかひどいな!」
「欲しいもんがあったら依頼じゃなく直接持ってきたら考えてやんよ」
「そうだな! 誰でもいいからと言うのは、そこらの素人が素材を使いつぶしても文句言えねえもんな!」
いつの間にか後ろにいたディルマのオッサンが賛同の声を笑いと共に言う。
「おっと、忘れちゃなんねえ。お前さんに客だよ。ここらじゃ珍しい竜人の男だ」
「たぶんあいつだと思うが、竜人って……ホントにレア引くな」
プレイヤーで竜人の種族は開始するとき入力するシリアルコードで既に決まっていると引いた奴が書き込んでいた。必ず竜人を選べる以外に変わりはないが、いつか普通のプレイヤーも竜人になれるみたいだが、初期稼働から脱していない今じゃ全然わからないってこと以外わかってない。
「って、竜人なのにその名前か?」
「ああ。私にはコレとお前以外はないからな」
「ああ、そうかい。そりゃ嬉しいな。またよろしくティグア」
「当たり前だコクーン」
訪ねてきた竜人プレイヤー――ティグアの姿は頬や首、手足にある鱗が紫色、浅黒い肌の180近い姿だった。
「それはそうと、私の盾と武器はちゃんと出来ているのか? 弓と短剣じゃどうも違和感がなくならない」
「これから作るつもりだったんだ。依頼達成できる品を作ったんで素材がいまちゃんと俺のになったからな」
できた武具を納品設定すると余っていた素材に付いていた依頼用の文字が消えるので、既に設定して俺のものにしている。
「ふぅむ、だが銃は作れないのか? あれがないと私と言えないのだが?」
「STGじゃないんだからそうほいほいと作れたりしないし、火薬も、それの元になる硫黄に硝石も確保できてない」
「そう……なのか。ならば変わりになるものを使えば」
「それが出てくりゃ問題ないが、ディルマのオッサンが持ってたりくれたりするわけ」
「クズの鉱石ならあるが、なにが欲しいんだ?」
「フラグ乙」
「フラグ回収乙」
そのまさか起こっちゃった。
「衝撃で爆発するとか、撃つ瞬間に衝撃出すとかだけど」
「ああ、マジックシューターの連中みたいなんを求めてんのか。ならこれらだな」
奥から小間使いに言って持ってこさせたのは色とりどりの砂利と火薬。
「火薬があるのかよ」
「まあ素材で使う奴だ。一瓶だけくれてやる」
「胡椒瓶程度貰ってもな〜」
錬金を使ってなんか出来そうなんだが、今すぐできるって訳ではないからな。
「ディルマのオッサン、放った魔法を鉱石から一方向に飛ばすって奴はないか?」
「あるにはあるが、なにするつもりだ?」
一応爆発するクズ鉱石とさっき言った鉱石を受け取る。爆発する方は爆石、もう片方は集魔石と出た。集魔石の方は1cmが150とちょっとした出費になった。
材料も揃ったことだし、作るとしますか。
[今回の行動で【錬金】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鍛金】のレベルが上昇]
[今回の行動で【鍛冶】のレベルが上昇]
[今回の行動で【耐暑】のレベルが上昇]
「てーれってれー」
[重圧な鱗の堅盾]
VIT+21 耐久94 重量13
【火属性:小】【水属性:小】
付与【物理抵抗:小】
・属性の鱗を使用して作られた重い盾。鱗が様々に使えることから後も手を加えられる。
金属で作られているが、属性によって金属ペナルティが減少される。
[狙撃の杖]
INT+9 RES+7 耐久50 重量8
【火属性:小】【射撃向上】
付与【耐久性上昇】
・遠距離から狙う事ができる杖。集魔石によって魔法を威力、距離を高める。
金属で作られているが、属性によって金属ペナルティが減少される。
「杖って……」
「まあそうなるだろ。引き金があっても弾倉や弾丸を込める場所を作ってないんだから」
「漫画でみたことあるが、構えても見た目銃なのに杖なんだよな」
形状はスナイパーライフルだが杖。スコープはレンズの関係上作れてない。
「ふむ、まだレベル、STR共に低いから重いな」
「お前そう言えばジョブはなんなんだ? 傭兵? 歩兵?」
「弓兵だ。命中補正がかかるだろうし、ずっとSTRに振っていてもSPDは上がるのだろう?」
まあ上がるけど、やっぱり前々からの呼び名が気に入ってるんだな……。
「これから魔法のレベルを上げに行くのだが、一緒に来るか?」
「行かねえ。まだ作りたいものがあるんでね」
「そうか。ならファームを持っていると言っていたな。そこで待つ事にする」
「するって……」
「なので、入場許可を出していてくれ」
「それならフレから出来っからホレ」
「わかった。では行ってくるぞ」
「行ってこい行ってこい」
俺が渡した武具を装備してさっそく経験値狩りに出て行った。
「えらいのと知り合いなんだな」
「まーな。んじゃ、まだここ借りとくな」
「構わんが、少しばかりこっちにショバ代くらい渡さんか?」
「ソノウチナー」
その日は竃の火を落とすまで鍛治を繰り返して、ログアウトするまで武器を数点作った。
[name:コクーン]
種族 人間 女 Lv8
職業:アーチャー Lv6
副職業:テイマー Lv4
STR:22
VIT:22
INT:11
SPD:26
RES:15
TEC:29
[スキル]
弓Lv6 短剣Lv9 鏢LV3
鷹の目Lv6 梟の目Lv5
アクロバティックLv6 ダッシュLv9
手品Lv6 識別Lv9
鍛金Lv8(↑2) 錬金Lv2(↑1) 鍛冶LV7(↑2) 工作Lv5
耐毒Lv1 耐暑LV6(↑2)




