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深層世界  作者: NAAA
第一章 
9/65

9

 まっちゃんの話をまとめると大体こんな感じだった。


 一人暮らしをしながら働いていたのだがある時自分に家族がいないことに疑問を持ち、何か手がかりがを求めて各地を転々としていた。そんな時にあの不思議な六人組に出会い殺されそうになったがなぜか寸前のところで見逃される。その時を境にして身体の成長が止まり、周囲の人から忘れられた。それからシコウとアルに出会い家族を探しながらあの六人との戦いの日々を送っていた。


  まっちゃんは淡々と話していたが家族を探している時の話をすると感情を抑えられない様子で僕に尋ねた。


「……永志……俺の家族について何か知らないか? いたことは確かに覚えてるんだ。……いや、思い出したって言った方が正しいな……」


 少しの間俺は考えるが…………


「……ごめん……思い出せない……。でも、何回か俺も会ったことがある気はするんだ……」

「……そうか……いたことは覚えてるんだ! 一人っ子の俺を母さんと父さんは可愛がってくれてたことも……ただ名前も顔も思い出せないんだ!!」



 悔しそうに声を荒げるまっちゃんに俺は何もかける言葉がみつからなかった…………


 しかし、これで大体の事情はつかめた。

 ここからは俺の質問ラッシュである。


「あの六人、今はオーディンを倒したので五人だけど、いったい何者なの? ……人間じゃ……ないよね?」

「……分からない……俺はこの世界の神だと思っていた。……だけど今日違うことが分かった。神は、死なない」


 ここでまっちゃんは何かブツブツ言い始めた


「……今まで何しても効かないから電流流すだけの作戦用意したのに……」

「え? なんか言った?」

「い、いや、なんでもない……」


 まっちゃんが続けて言う


「だがこの世界の神に近い存在……。このおかしな世界の真実を知るための鍵であることも今日分かった」



 この世界はおかしい……。だけどそのことに気付かなかった自分が、気付いていない人々が、急に怖くなった……。



「……なんであの六人と戦っているの?」

「いや、六人といっても実際は一人だ。俺たちはオーディンとしか戦ったことがないんだ。他の五人は名前すら知らなかった……。今日あの眼鏡がクレイオだと分かったが……」


 じゃあ、もしかするとあの六人は一人づつでしか戦えない制約があるのかもしれない。クレイオも次は私だって言っていたし。


「……なんで戦ってるのかだったな。あいつらは人を殺す……。それもわざわざ俺達に見せつけるように殺すんだ……。そして殺された人は周囲から忘れられるんだ、まるで存在しなかったように……。永志はそれを見過ごせるか?」

「………いや、できないな……」


 シコウもオーディンとの戦闘中そんなことを叫んでたな。


「まっちゃん達にわざわざ見せつけて殺すの?」

「そうとしか考えられないんだ……。あいつらはどこにでも現れることができ、すぐに消えることもできるんだから……」


 確かにその通りだ。なぜそんなことをしてたんだろう? ……本人達でしか知りえないが……。


「……アル……さんとシコウさんとはどういった関係?」


 さん付けした方いいのか迷った……が、そんな時はたいてい付けることにしている。あんな戦いを一緒にくぐりぬけたのだから他人とは思えないが。


「特に関係はなかった。ただ三人の共通点はこの世界に疑問を持っていて、あいつらと関わり、生き残ったことだけだ。……そしてお前も……」

「……うん、だから生き残った俺達は世界から忘れられたんだね……。あいつらに殺された人達と同じで…………」

「そういうことなんだと思う……。アルとシコウについては本人に聞いてくれ……そろそろ着くぞ」



 はたして謎は増えたのか、減ったのか。車での一時間はなんと早く過ぎたことだろう。

 車が止まったのはつかわれなくなって間もないビルの前だ。


「悪いが永志、また後ろでくたばってる二人を運ぶのを手伝ってくれ」

「オッケー」


 俺はシコウよりは軽いアルをまかされたが……。


「……永志……やっぱそいつは置いて行っていい……」

「え?なんで?」

「いいから……そのまま衰弱死してしまえ」


 まっちゃんはそう言ってシコウを背負うと歩きだしてしまった。


「おいおい……」


 どうしようか考えていると


「あーーーやっぱりまっさんにはばれちゃったかーーー」


 背後でいきなり声がして驚いて振り返るとアルが目覚めていた。


「……えっと、永志っていうんだよね。僕はアル。ってもう知ってるか!」


 そう言って一人で笑い始めた。……ずいぶん元気な人だな……いつから起きてたんだろう……。

 笑い終えるとまっちゃんを走って追いかけていく。



 アルが振り返って元気よく俺を呼ぶ。



「ようこそ永志!君ももう立派な世界の反逆者だ!!」



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