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深層世界  作者: NAAA
第一章 
7/65

7

 今日はもう仕事など手につかないだろう。そう思って、仮病でも使って帰らせてもらおうと考えてふと時計を見る。


「あっ、やべー……昼休み終わってる…………。まっちゃん、その二人はあそこの木陰にでも隠してて。すぐ休みもらってくる」


 このまま帰ってしまってもよかったのだが、わりと律儀な俺である。

 ふとまっちゃんを見るとなぜか悲しそうな顔をしている。


「永志……その必要はない……」

「は? なんでだよ?」

「……多分永志は忘れられている……お前を覚えてる人は、もういない」




 まっちゃんは何を言っているんだ? そんなことを言われても納得できない。


「……自分で確かめてみた方がいい。誰か……そうだな、家族並に関わりが深い人には話しかけるな。その人もこちら側に引き込んでしまう可能性がある。まあ、職場の人なら誰でも大丈夫だと思うが……」


 まっちゃんにそういわれて俺は走ってある人物を探す。……見つけた


「ジョ、ジョンさん!!」


 ジョンさんが振り返り少し息を切らした俺を怪訝そうに見つめた。


「えーと…………どうしたんだい?」

「えっと…………すいません、体調が悪いので早退したいのですが…………」

「そうだねー……君はどこで働いているんだい?そういうのは自分とこの上司に言わないといけないんだが…………」


 ……覚えていない。


「あの……俺のこと知りませんか?」

「あれ?会ったことあったけ?そういえば私の名前も知っていたねー。まって、今思い出すから」


 うーん、と唸りながらジョンさんは考え込む。


「……いえ、すいません。俺が勝手に知っていただけです……失礼します」


 俺はその場から走り出す。忘れられるというのはこんなにも悲しいものなのか。この前泣いたのはいつだっただろう、涙が、溢れ出た。


なんとか涙を止めてまっちゃんのもとに戻る。目が赤くなっていたらばれていたかもしれないが…………。


「……確かに忘れられていた」

「……すまん」


 まっちゃんが謝る。


「俺と会わなければこんなことにはならなかった」

「………………」

「……すまん」



 まっちゃんが謝る理由はどこにもない。ただ、それを否定する言葉を言うことはできなかった……。


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