15’
見渡すかぎり一面の荒野。今では遥か昔、ここには森があった。突如見舞われた地球の寒冷化によって木々は枯れ果て、青々とした緑はその姿を失い、茶色と黒が支配する世界となった。
「さて、この寂しい世界を変えていかないとね」
私が初めて荒野にでた時からなんとなく考えてはいた。いつか、ここに森を取り戻せたら、と。そのために森林の再生に関わる様々な本を読んできた。それに、夢の世界で今なお発達している林業、農業の技術がある。
「でも、いったいどれくらいの年月がかかるのかしら……。いきなり木の苗木を植えて成功するわけでもないし……」
一般的に木は数十年、中には百年以上の時をかけて成長するものがある。一つの森を一から作るとなると一体どれだけの時間がかかるのか想像がつかない……。
「でも私は、私のできることをやろう。幸い時間は十分すぎるほどたっぷりあるわけだし……。まずは木を植えるための下地をつくらないと。どうせつくる下地なら、なるべく綺麗に……」
そう、私があの日見た景色と同じような--------
「この世界で生きてるいるのは私だけみたいだし、私の好きなように作って問題ないわよね」
あの樹でも植えてみようかしら? 今ある知識、技術を総動員すれば一本だけならなんとかなるかもしれない……。
「ウィーン、ウィーン、ガチャ」
何かが私の肩を触れてきた。
「あら、あなた……」
無機質で固い手ではあるが、私にはどこか暖かさも感じさせてくれる。気づかわし気に私を見つめ、人工的な光がその目に宿るロボット達がそこにはいた。
「そうね、あなた達もいたわね。一緒に頑張りましょう」
荒野に向かって私はロボット達と歩き出す。いつの日かあった美しい光景を再現させるために、今なお眠りふける彼らのために――――




