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空に浮いてる人がいたのだ。それも一人ではない。五人もの人が工場の屋根より高い位置で浮いている。果たして彼らは人なのだろうか、五人全員がただの人とは思えない雰囲気をかもしだしていた。五人のうち一人は女で白銀の髪、人間とは思えない美貌だということが遠目からでも分かった。
「な……」
言葉を失い、時を忘れ凝視していると屋根から聞こえる音でやっと五人から目をそらし、音のする方向を見る。
「っ…………」
また言葉を失う。屋根の上で四人が激しい戦闘を行っていたのだ。なるほど、音の正体は四人もの人が屋根を走り回る音だったのか。一つ謎が解けた。解けると同時に把握しきれない数の謎が増えたが…………。
屋根の上の四人はどうやら三対一に分かれて戦っているようだ。一人の方はマッチョな男で浮いている五人と同じ雰囲気をまとっているので仲間か何かだろう。その一人に対して普通の人に見える三人(三人とも男だ。こちらは小柄な人もいるがどの人も平均的な体つきだ。)が屋根の上を走りながら銃を発砲している。
…………あれ? 今弾当たらなかった?
マッチョな男の方は何も武器を持っていない。素手である。弾が当たったように見えたのだが……気のせいなのか……一瞬立ち止まったあと何事もなかったように銃を持った1人に駆け寄りみぞおちにパンチをはなった。
クリーンヒットである。倒れてしまった。屋根を転がり落ちる……落ちる!!??
何とか着地したがすぐにその場に倒れてしまう。俺のすぐ近くに、だ。とっさに身体が動きその人のもとに駆け寄る。建物の三階相当から落ちて着地を成功させるのだから、彼も同じ人間と思えないが……
「だ、大丈夫ですか!?」
「うっ……」
うめき声をあげるが命に別状はなさそうだ。この人あまり俺と年変わらなくないか!? 15,6歳に見えるぞ!? 髪は金髪で、一瞬苦しそうに歪められたまぶたから覗く瞳は薄い茶色をしていた。俺が起き上がらせようと頭に手をそえた瞬間に彼はガクッと脱力し、気絶してしまった。上を見ると仲間と思われる二人が飛び降りて助けに来ようとしている。
1人飛び降りた……
残った1人は殴ったマッチョに銃で二発撃ったのち飛び降りた。(また弾が当たったように見えたが……)
俺としては気が気でないのだが二人はまるで猫のようにあっさりと着地に成功する。
そして二人のうち発砲した後に飛び降りてきた人、俺より小柄な彼の顔を見てさらにもう一つ謎が増える。
「…………まっちゃん?」
「…………永志?」