11
誰もマリアの問に答えられないのを見かねて、シコウが言った。
「まあ、最初に正隆が集めてできたメンバーと言えるな……」
アルもそれに乗っかる。
「そうだねー。まっさんが僕達を集めたんだもんねー。“世界を守るまっさん団”とかって名乗っておけばいいんじゃない?」
いや、なんだそのダサい名前は……。
「おい、俺のせいにするのは止めろ……」
まっちゃんが呻くように言うと、マリアは呆れたように溜息をつく。
「はあ……。あなた達、自分が何者かも分かっていないってどういうこと? 何か自分達を言い表す言葉すらも持たないでどうするの……」
マリアの言葉に俺達は押し黙ってしまう。まあ、そのうち考えよう。俺達が何者なのかってことを……。
すると、この空気を嫌ってか今度はアルがマリアにくだらない事を質問し始めた。つまり、好きな食べ物は? とかそう言ったたぐいのものである。マリアはそれに聞いたこともないような料理名で答えていた。いや、そしてシコウさん……別に作り方とか聞かなくていいから……もう料理スキルあげなくていいから……。
俺がぼんやりとその光景を眺めているとまっちゃんが少し離れた位置から俺を呼んできた。
「永志、ちょっと……」
俺は近づいて、何事かと尋ねる。
「なんだよ、まっちゃん」
「いや、今日はもう遅いからマリアを家に送り返すのは明日でいいかと思ってな。その役目はお前だ。シコウは無口で愛想が悪いし、アルは馬鹿だし、俺は……その、まあ、あれだから……」
まあ、俺になるんだろうか。このメンバーだと……。まっちゃんはなおも続けて言う。
「それでだ。マリアを送り帰らすのはいいが、もしかしたらマリアもこちら側に引き込んでしまっている可能性があるぞ……」
確かにまっちゃんの言う通りだ、俺もまっちゃん達に関わったことで世界から忘れられてしまった。マリアほど俺達に深く関わった人はこの三年間にはいなかった。
「……もしそうなっていたらどうする? 連れて行くのか?」
「まあ、そうなるだろうが……。まだ可能性でしかない話だ。考えるのはそうと決まってからにしよう」
この時俺は心のどこかではマリアとまだ離れたくないと思っていたのかもしれない。しかしマリアが俺達同様に世界から忘れ去られることはあまりにも悲しすぎる。でも、もし時間が許すなら、もう少し彼女と…………。
俺の思いはつゆ知らず、マリアは以前としてアルのくだらない質問に答えていた。つまり、料理は作れるの? とかそう言ったたぐいのものである。それにマリアはある程度の物は作れる、例えばカレーとかってな風に答えていた。いや、そしてシコウさん……別に中華料理なら教えれるとか言わなくていいから……マリアの料理スキルをあげようとしなくていいから……。
そんな彼らに近づきそろそろ切り上げようと告げる。まっちゃんと話したように明日の朝屋敷まで送っていく旨をマリアに伝える。
「ええ、私もこんなに夜更かしをしたことなかったからもう眠いわ。少し休みたい……」
マリアも了解してくれたので、新たにマリア用の部屋を借りた。
「じゃあ、おやすみマリア」
俺がそう言うとマリアも笑顔で応えてくれた。
「ええ、おやすみなさい、永志さん」
そしてマリアは部屋へと入っていった。俺も自室に戻り、シャワーをぱっと浴びてすぐにベットに潜り込む。今日は疲れたからよく眠れるだろうと思っていたが、なぜか妙に胸がそわそわして眠れなかった。眠りに落ちるその瞬間まで頭にあったのは俺に向かって柔らかに微笑みかけてくる少女のことだった。




