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深層世界  作者: NAAA
第二章 
25/65

10

 ようやくマリアが登り終わったのを確認し、俺とアルも塀を登っていく。塀の上ではマリアが興奮したようにはしゃいでいた。


「やった、やったわ! 時間はかかったけど自分の力だけで登りきれたわ!」


 運動をして体温が上がったせいか彼女にほほは赤くなっていた。はしゃいでいるところ悪いがあまりのんびりもしてられない。


「ああ、よくやった。ご褒美に降りるときは一瞬ですましてやろう」

「えっ……それってどういう……」


 俺はマリアが言い終わらないうちに再びお姫様抱っこし、塀の上から飛び降りた。他の三人も俺に続いて飛び降りる。


「キャーーーーー!!!」


 少女の声が静かな夜の街に響き渡った。



 ※


 屋敷から出てしまえばもう見つかる心配はない。急いで車が停めてあるところまで戻り、利用していたホテルに向かう。その車の中でマリアに謝ったのだが、彼女は一言も口をきいてはくれなかった……。

 ホテルに着いてしばらくするとやっとマリアも機嫌を直してくれて、話を聞くことができるようになった。聞きたいことはたくさんあるが、一つ一つ聞いていく他ないだろう。


「マリア、君はあの眼鏡達のことを知っていたか? 今までに何か奴らと関わったことあるとか」


 今まで奴らがマリアほどに興味を示した人はいなかった。俺がそのことに疑問を持って尋ねると、マリアは少し拗ねたように言った。


「いろいろ聞きたいのは私も同じです。まだあなた達の名前も知らないんですけど! あなた達は私のことを呼び捨てにするのに……」


 ああ、そう言えば自己紹介すらまだだったな。そう思って俺が皆の分をまとめて答える。


「俺は永志。そして体格がいいあのお兄さんがシコウ。少し怖い顔をしてるけどいい人。あのちょっとお馬鹿そうな顔をしてるのがアル。見た目に騙されるとひどい目にあう。そして残った小っちゃいのがまっちゃんだ」


 俺が適当に説明するとまっちゃんが怒ったように言う。


「おい、まっちゃんはやめろって言ってるだろう。それに小っちゃい言うな。俺の名前は正隆だ」


 いや、まっちゃんはまっちゃんだから却下だ。マリアはうんうんと頷きながら確認してくる。


「あなたが永志で、彼がシコウさん、そしてアル君に正隆君ね。分かったわ」


 マリアがそう言うと、まっちゃんがまた文句を言ってきた。


「君付けはやめろって……」


 するとマリアは不思議そうな顔をする。


「なぜダメなの? 年下の方に君付けするのはおかしくはないでしょう?」

「…………」


 まっちゃんは言葉につまり、肩を震わせたあと、諦めたように脱力し「勝手にしろ……」と言った。その様子を見て俺はニヤつき、シコウは必死で笑いを堪え、アルはまっちゃんの肩を叩いて慰めていた。頑張れまっちゃん! 負けるなまっちゃん!


 自己紹介が終わったので、仕切り直しだ。


「それで、マリアは奴らに関わったことがこれまでにあったのか?」

「いいえ、彼らに会ったのは今日が初めてよ。それなのに排除するとか言われて凄い怖かったわ……」


 そうか、やはりマリアも彼らと何かしらの関係があったという訳ではないようだ。


「じゃあ君が“指導者”と呼ばれていたのはなぜだい?」

「そんなの彼らが勝手にそう呼んでいただけよ。彼らが何か勘違いでもしたのでは?」


 うーん。こちらも心当たりがないようだ。となるとなぜ奴らがマリアにこれほど関心を示したか、なぜ今回はクレイオに攻撃が聞いたのかをを知るすべはなくなった。俺達が質問を止め、考え込んでいると、マリアは今度は私の番だとばかりに俺達に聞いてきた。


「ねえ、私も色々と混乱しているのよ。私にもいろいろ説明してちょうだい」


 確かにここまで連れてきてしまってなんの説明もなしという訳にはいかないだろう。俺は奴らがこの世界の人々を「排除する」といって人々を狙っている人、狙われた人は眠ったように死んでいき、世界からまるでいなかったかのように忘れさられること。俺達は奴らを追って、なんとか人々を救えないかと戦っていることをかいつまんで説明した。マリアは最後まで口を挟まずに聞いていたが、俺の話が終わったと知ると確認するように質問してきた。


「じゃあ彼らは人間ではないのかしら? 正隆君に剣で切られても血はでないで光が溢れ出していたようだし……」

「それは俺達にも分からない。俺達も奴らが何者か知りたい」


 マリアは顔を雲らせなおも質問を重ねてくる


「じゃあ、なぜ彼らは私の名前を知っていたのかしら? それと私ががエリア0に向かう予定があることも……」

「それも分からない。奴らはなぜか色んなことを知っているようだ。エリア0なんかに向かうというのも本当なのか?」

「ええ、エリア0で働いている兄からつい最近呼び出されて……。何の用事なのかは行ってみないと分からないけれど……」


 この世界は9つの小さな正方形が集まり、大きい正方形となる構造をとっている。北西の正方形がエリア1、北がエリア2という風に呼ばれており、エリア0とはエリア5の中心部分にある地区のことをいう。つまりエリア0はちょうどこの世界に中心に位置することになり、場所だけでなく政治や経済の中心ともなっている。このエリア0にはこの世界の情勢を決める限られた人しか入れないようになっていて、当然俺も入ったことはない。マリアの兄とやらがエリア0で働いているということはこの世界でそれなりの地位を持っている人なのだろう。現在いるエリアはエリア9。北西に向かって進めばエリア0に到着する。

 シコウがマリアの言葉を聞いてぼそりと呟く。


「エリア0か、俺は行ったことないな……。行こうとして行ける所でもないが……」

「僕もない! 一度くらい入ってみたいねー」


 アルもどうやら入ったことがないようだ。しかしこいつの場合記憶が自分の名前くらいしかないようだから、確実にエリア0に入っていないとは言えないのではなかろうか……。まっちゃんもくびを横に振っている。どうやら俺達のなかでエリア0に入ったことがあるのは誰もいないようだ。


「どうする? 俺らもエリア0に向かう? あの隻眼の男もエリア0で待ってるって言っていたし」


 マリアのことを任せたというようなことも言っていた。俺がそう提案するとまっちゃんは少し考えてから言う。


「……いや、クレイオが他のの奴を狙う可能性もあるだろ。むやみに移動するのは……」


 確かにまっちゃんの言う通りだ。ということはマリアとはここでお別れということになるのだろうか……

 そう思案しているとマリアはまだ気になることでもあるのか、俺達を呼んだ。


「最後にもう一個だけ質問をさせて。 ……あなた達は何者なの?」


 えっ、俺達が何者かだって? そりゃあ……


「…………」


 俺達を一言で表す言葉が見つからない……。あれ、俺達って何者……なの?


世界のエリアの配置はこんな感じです。


123     

456  

789 

 ↓

 ↓拡大

 ↓

555

505

555

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