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深層世界  作者: NAAA
第二章 
17/65

2

 そうだ、俺達がいた世界は――――







「この丸いのってなんだろうねー?」


 アルがお札をいじりながら質問してくる。


「なんかお札の中心に青い丸が書かれてるんだよね。なんか変な模様も付いてるけど……」


 確かにこの丸いマークがなぜお札についているのか分かっていない。お札だけででない。この世界には様々な場所や物にこのマークが付けられている。誰に聞いてもマークの意味を知らず、疑問に感じていない。


 三年の時が流れていた。


 俺は21歳になった……はずだ。といっても体は三年前と何も変わらないからだ。なるほど、あの時シコウが言った「体の時が止まっている」の意味が体感してやっと理解できた。三年前から俺達は真実に近づけているのだろうか? 新たにこのマークは何かと疑問に思ったくらいしか変わっていない気がする。

 相変わらず四人での旅は続いている。この三年間はあの不思議な五人……奴らから狙われた人々を助けたり、この世界から生じる違和感を探す毎日だった。


 狙われる人々を助ける……。そうは言っているが本当に助け出せた人はいったい何人だっただろう……。女の姿をした奴らの仲間に体を触れられると人は眠るように意識を失っていった。戦うというより狙われた人を連れて奴らから逃げ出す、といった方が正しい。狙われた人を女に触れられる前に逃げ出すことすら難しいのだが……。奴らは俺達が逃げ出すと戦いをやめる。追いかけるということをしないのだ。それなのに俺達が戦う意志を見せると本気で応戦してくるのだから訳が分からない。逃げれば戦いは終わるので決して負けることはない戦いなのかもしれない。だが、オーディンがなぜ倒せたのかも分かっていないので勝つこともない戦いとも言える。真実に辿り着くには奴らを一人ずつ倒していかなければならないのに……。


 俺達の戦う相手はオーディンに変わってあの眼鏡、クレイオになっていた。他の四人はいたとしても傍観しているだけ、それに最近はクレイオと女くらいしか現れないようになっていた。女が触れる前に助けることができた少数の人はクレイオや常人とはかけ離れた身体能力を持つ俺達に疑問を持ちつつも普段の生活に戻っていった。俺達に深く関わると世界から忘れられてしまう可能性がある。あまり深入りさせず、元の生活に戻ったほうが幸せだろう。俺達とクレイオの戦闘を偶然見た人達はすぐに何があったのかを忘れてしまうようで、こちらも俺達が接触しなければ問題ないだろう。


 狙われる人たちの共通点は分かっていない。まっちゃん、シコウ、アルの三人だったときはわざと見せつけるように人々を殺していったらしいが……。そんなこともなくなっていた。変わりに渡されたブレスレットが奴らが次に狙うおおまかな場所を教えてくれるようになったからだ。しかし考えようによっては以前に比べ、より俺達に誰かが死ぬところを見せたがっているようにもとれる。誰が狙われるかは奴らが現れるまでは正確に分からない。だから俺達はいつも対応が遅れてしまう。


 殺す、という表現も微妙なところがある。狙われた人々は眠っているだけのように見えるし、その手段として女が触れてるだけだからだ。やはりオーディンが言っていた「世界から排除している」という言葉がしっくりくるような気もする。


「ちょっとー。みんな聞いてるのー? この丸いマークなんだろうねっ!」


 アルの質問には答えず俺、まっちゃん、シコウは思い思いの行動を取っていた。まあ三年も行動も共にしてればいちいち構ってやるのも面倒になる時がある。


「その話は結局、結論が出ずに終わっただろう」


 まっちゃんが答えた。これは珍しい。まっちゃんが一番アルを無視するからな。たぶんアルに構ってやるくらいには暇なんだろう。


「それはそうだけどさー」  


 アルが不服そうにお札をひらひらさせるのを見てシコウが注意する。


「アル、お金はしまっておけ。なくしたら大変だ」

「大丈夫だよー。なくしたとしても僕がすぐに稼いできてあげるから!ここの宿泊代だって僕が払ってるわけだしー」

「…………」


 い、言い返せない……。シコウも黙り込んでしまった。他のことならアルの言葉に僕達の口を閉じさせる力があるとは考えられないが、ことお金に関することだと……。

 なぜか。それはアルがお金を稼いでくれるからだ。三年前からずっとシコウの貯金に頼っての生活を続けられるわけがない。俺達はなんらかの手段で収入を得る必要があった。



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