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夢のような現実。これが世界の本当の姿。現実を受け止めることから私の世界は始まった。
ああ、眠い……。それに少し寒い、かな。ここはどこかしら?
――――私は、誰かしら?
「…………ス!…………リス!…………エリス! 起きるのじゃ!」
誰かに呼ばれて私は目を覚ました。
「うーん……まだ眠いわ……」
「……エリス。起きてくれ。お前しかわしが頼める相手はいないのじゃ……」
「うーん……」
目をこすりながら声のする方向を見るとそこには老人が立っていた。頭髪は全て白く染まっており、顔のしわも深い。かなりの年齢のはずだ。
「あなたはだーれ?」
「わしは……名前はもう忘れてしまった…………“おじいさん”と呼んでおくれ」
名前を忘れたの? 変なの。そう思ったけど、私も自分の名前が思い出せないことに気付いたの。
「分かったわ、おじいさん。あと……私も自分の名前を思い出せないの……。おじいさんは私の名前をしらないかしら?」
「なんじゃと……。いや、大丈夫なはずだ……。このような症状は時間が経てば治るはず……」
おじいさんは何かぶつぶつ独り言を言っていた。よく分からないけど、私の名前を知ってるなら早く教えてほしいわ。
「おお、すまんすまん。お前の名前はエリス……。エリスというんじゃ」
「エリス…………」
ああ、そういえば誰かにそう呼ばれていたような……。私は寝ていたところから起き上がる。そこには変な機械がたくさん付いていた。
「なにも心配することはない。あやふやな記憶もいずれ思い出す……忘れてしまった記憶は必要ないということじゃ……」
必要ない? 本当にそうなのかしら……。でも、大人の人の言うことはよく聞きなさいって誰かに言われていた気がするし……おじいさんがそういうのなら正しいことなのだろう。
「そう……。じゃあここはどこ?」
辺りを見渡して私は聞く。
「ここかい? ここは……」
おじいさんは少し言葉に詰まったようだった。一瞬の間が空いた後、私の目を真っ直ぐに見つめて言う。
「ここは“地球”だ」
「地球…………」
――――――――地球
第二章です。よろしくお願いします。




