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眩しい……ここは……そっか、まっちゃん達の基地だ。朝……だ。いったい俺は何時間寝てたんだ……。でもすっかり疲れはとれたな。そう思って俺は一階へ降りていく。
降りていくとシコウ一人しかいなかった。
「おはよう。シコウさん」
「おはよう、永志。さん付けなんかしなくていい」
笑いながらシコウは答えてくれる。こんな風に自分から言ってくれると楽だよな。
「じゃあシコウ。他の2人は?」
「正隆は朝ご飯を食べたあとよく眠れなかったと言って俺のつかってたベットに寝に行った。アルは知らん。遊びにでも行ったんだろう。すぐフラフラとどっか行くからな」
「ふーん。シコウはもう身体は大丈夫なの?」
少し照れたようにシコウは答える。
「ああ、恥ずかしいところを見られてしまったな。少し油断した。感情に流されてしまったんだ」
「そんなことない。シコウも強かったよ!」
「ハハ、ありがとう。……そうだ永志、なんか食うか?」
そういえばあのカレーライス以来食事をしていない………。思い出すと猛烈にお腹がすいてきた。
「食いたいな………。物凄くお腹すいた……」
「待ってろ。今作ってやるから。今はチャーハンくらいしか作れんが……」
「助かるよ! いつもシコウが食事担当なの?」
「あの二人が料理するように思うか? ……分担制にしようとしたんだがあいつらが作ったのは料理ですらなかった」
俺としてはあまりシコウも料理できるには見えなかったが、確かにアルとまっちゃんには任せられなさそうだ。
すぐに俺達はこのビルの食堂へと移動した。シコウが厨房に入っていき慣れた手つきでチャーハンを作り始める。その間俺は色々と質問させてもらおう。
「シコウ。シコウはいったい何歳?まっちゃんを見てると見た目で判断できなくて………」
苦笑まじりにシコウが答える。
「まっちゃん、か…………ずいぶん子供らしい呼び方をするな」
「俺はこれで慣れちゃてるからねー」
「そうか。俺は正隆を子供だと思えないからな。あいつの戦闘技術や判断力は目を見張るものがある」
「確かにまっちゃんは強かった……。そうだ、だからまっちゃんがリーダーなの?」
「いや、リーダーとかは決まっていないが……。そうだな、あいつがいつも俺達を引っ張ってくれてるな。この中で一番経験も豊富だ」
俺とは強さの次元が違うので分からないが……。シコウが言うのならまっちゃんはかなり強いのだろう。
「なるほど。……ってちがうちがう。シコウは何歳か、だよ。」
「ああ、そうだった。俺は25歳だ。成長が止まって2年だから身体は23か?」
やはりシコウがこの四人の中では一番大人だな。年齢的にも精神的にも。ベット争奪戦はシコウがいれば起こらなかったかもしれない。
「成長が止まるって……。23歳と25歳なんて変わらないじゃん」
俺は苦笑気味にシコウに言い返す。
「それはそうだが…………。だが明確に身体の時が止まっていることはわかるんだ。永志は髪が伸びるだろう?」
「うん、当たり前じゃん。伸びすぎたら切るけど…………。今はまだ全然切らなくてもいいな」
「俺はこの髪の長さままだ。二年前から髪が全く伸びないんだ。爪なんかもそうだが。永志もその髪型から変わんないぞ。良かったな、もう床屋へ行く必要はない」
なるほど……。嬉しいような嬉しくないような……。
ここである恐ろしいことに気付く。もし、もし、髪を切られちゃったら?そのまま伸びないのか?抜けるなんてしたらずっと……ハゲ……
「シコウ。髪を切られてしまったらどうなるんだ……。正直に答えてくれ……」
「うん? そしたらまたこの長さまでは伸びるんだ。どうかしたか?」
ここでシコウがチャーハンを作り上げてくれた。俺が座っている席に持ってきて向かい側に座る。……それにしてもよかった。ハゲることに脅えずに生活できる……。
よかったことがもう一つ。シコウが作ったチャーハンが驚くほど美味しそうなのだ。
「うまそう……」
「そうか? まあ早く食え」
「……じゃあ、いただきます」
そして一口食べてみると。
「うまい!!」
「なら良かった」
いや、これは本当に美味しい。空腹であったことを抜きにしてもずば抜けて美味しい。……これは母さんもかなわないな。
その後も無言で食べ続け、完食した後少しの間放心状態となった。
「……なんでこんなに美味しく作れるの?」
「俺は普通に作っているだけなんだが。気に入ってもらえたなら良かったよ」
そういえば中華鍋も慣れた様子で使っていた。これはまっちゃん達はわざと作っていない可能性もでてきたな……。
「ごちそうさま。本当に美味しかったよ。……じゃあ話の続きね。シコウはどういった経緯でこうなったの?」
「………………」
シコウは悲しげに、なにかを思い出すように視線を俺からそらした。
「あっ、もしかして思い出したくないことだった?それなら無理に話さなくても……」
「いや、大丈夫だ」
視線は俺からそらしたままだ。だがシコウは思い出すのが辛いであろう話を俺に聞かせてくれた。




