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この廃ビルはまだ電気も通っているらしい。しかもちゃんと掃除をしていたのか結構きれいだった。
ビルは四階建てで一階が共同のスペース、残りの三階を三人でわけているようだ。
今日はいろんなことががありすぎた、もう疲れたよ……。この廃ビルに四人で入るとすぐに全員一致で(シコウはまだ気絶してから起きていないので関係ないが)睡眠をとることになった。……が、
「ベットが、三つしかない…………」
そういったのはいったい誰だっただろう。この状況でベットがあるのとないのでは野宿と高級ホテルのフカフカベットくらい差があるように思える。
まっちゃんが誘惑を振り切るように僕達に宣言する。
「……シコウは……ベットで寝かせる……」
さすがに反論できない。
残り、二つ。
アルが本気で残念そうにつぶやく。
「あのまま気絶してたらよかった……そしたらベットは労せず僕のものに……」
アルはチラッと俺を見て提案する
「じゃあ、まっさん、あれにしよう! ジャンケンで決めよう!」
それでいいよ、と俺が答えようとすると
「アル…………ジャンケンだったら永志が100パーセント負けるだろう」
なるほど、まっちゃん達の身体能力の高さを忘れていた。驚異的な動体視力で俺の手の動きを見て勝つように手の形を変えるのだろう。アル……結構腹黒いな……さん付け取り消し。
「アル……は何歳?」
「16だよ」
なんだ年下か、下手すりゃ年上だとも思っていたんだけど……。まあ、まっちゃんのことも「まっさん」って呼んでたしな。どうやらこの場にベットを譲るほど大人な人はいないらしい。
「くじで決める……。二人とも文句ないな」
あるはずがない。くじなら関わる能力は運の強さのみ。俺にも見込みは十分ある。
そしてくじの結果は……
「やりーー!! はい、まっさん、残念でしたーーー」
「まっちゃん。お前ならどこでも寝れる! 大丈夫だ!!」
「……お前ら……覚えてろよ…………くそッ。しょうがない、俺は車で寝る。じゃあな!!」
まっちゃんがふてくされて出ていった。
アルがあくび混じりで話しかけてくる。
「ふぁ~~。永志、僕らも寝よう。話を聞きたいこともあるけどそれはまた後ってことで。じゃあ、お休み」
「そうだね、お休みアル」
そうして割り当てた階に別れる。俺が三階でアルが四階だ。
家以外で寝るのは久しぶりだな。寝れるかな……自分で考えて笑ってしまう。寝れるに決まってるだろう。ほら……もうこんなに眠い……。
ベットに横になってわずか1分。俺は眠りについた。




