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深層世界  作者: NAAA
第一章 
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1

 まるで現実のような夢の世界。真実を隠すために作られた偽りの姿。なにかを変えなければと漠然と思っていた。




「エリア1の今日の天気は晴れ。高気圧の影響で雲の少ない気持ちのいい日になりそうです」


 テレビの音で目覚めた。昨日夜遅くまでテレビを見ていてつけっぱなしで寝てしまったようだ。


「降水確率は0%で……」


 時間を見ると朝の7時前、余裕で仕事には間に合いそうだ。テレビではちょうど俺が住んでいるエリアの天気予報をしているようだ。それを横目に見ながら作業着に着替え、テレビを消して一階へと降りていく。


「おはよう」

「あら永志、今日は早いんじゃない?」


 台所に立っていた母さんに挨拶をすると、ふきんで手を拭きながら彼女も応えてくれた。


「昨日は早めに寝たからね」

「あらそう、それはいいことね。お父さんもお姉ちゃんもまだ起きてないのに…………朝ご飯ちょうどできたから食べちゃって」


 夜更かししたあげくテレビの音で目覚めたと正直に報告する必要はない。いつも通り母さんは朝食の準備をしており驚いた様子で話しかけてきた。基本的に我が家族は両親が先に寝る。ついで俺、姉の順番で眠りにつくのだが、姉と俺は二階にある自室でテレビを見たり読書をしたりするので実際にはどちらが先に眠っているのか怪しい。よって起床する時間もいつも俺は最後か三番目なのだが、まあ違う日もあるということだ。


「いただきまーす。うんうん今日も美味しそうで美味しいんだ」

「はいはい、お世辞はいいからさっさと食べちゃって」


 母さんはいつも家族で一番早く起きて朝食の準備をしてくれている。そのことは感謝してるしいい母親だとも思う、ご飯も本当に美味しいと思ってる。


「ごちそうさま」


 言われた通りささっと朝食を食べ終え仕事にいく準備をする。準備といっても力仕事が大半なので作業着を着ていけば何とかなるのだが……。ケータイや財布、仕事の空き時間に読む本などを持てばすんでしまう。


「いってきまーす」

「いってらっしゃい、気を付けてね」


 玄関を開ける時二階で物音がしたから父さん当たりが起きたのだろう。せっかく遅刻に脅えることなく、かなり早く仕事場についてゆっくりできるのはめったにないことなので顔を見せずに家を飛び出した。

 どうせ、帰ったら会えるし。その時はそう思っていた。




 職場には自転車で行っており、約一時間で着く。公共交通機関を使う行き方もあるのだが、電車に乗ってバスに乗り換えたりとするのを俺はめんどくさく感じてしまう。そして実は自転車で裏道をつかいながら行く方が早く着くのだ。遅刻ギリギリが多い俺としては最適な手段なわけだ。今日は時間に余裕があるのでいつもつかう狭い裏道ではなく広めの道を選択する。鼻歌混じりで気分よく自転車にのっているとすぐに職場に着いた。


「おはようございまーす」

「お!なんだ永志、今日は早いな!」

「他のやつらとはやる気が違いますからね」

「そうだな、いつも遅刻ギリギリで来る誰かとは違うな」

「まったくです」


 そんな会話をして笑っているのは上司のジョンさんである。働き始めてからずっとお世話になっているので気安く話すことができ、相談相手にもなってくれている。


「じゃあいつも通り仕事をはじめてくれ」

「えー!仕事開始まで後40分近くあるじゃないですかー!!」

「馬鹿野郎、普通10分前には仕事を始めてるもんだ。開始時間ピッタリに仕事始めるのはお前くらいなんだよ。いつもの分を取り返せ!」

「…………分かりました」


 予定が崩れ去ったがまあ気分がいいので許そう。ジョンさんはいい人なんだけど、若者に厳しいというか、世話をやきたがるというか、なんというか……。持ち場につくと俺よりも早く来ている人が何人かいた。もし毎日この時間に来て仕事をしているのだとしたら真面目を通り越してバカだと思ってしまう。仕事に熱心な人達を非難することはできないが……。

 

 十五歳から始めたこの仕事はもう三年になる。仕事というのは主にゴミの分別で決められたゴミを決められたコンベアーに乗せるだけであり、よく分からない重い鉄製の部品などを持つのは大変だが基本的にはつらい仕事ではない。年の近い同僚も多くいるので話しながら仕事を進めると退屈とも感じが、文句をいうとしたら広い工場の中の99%が男だというところか。残りの1%も会うのは掃除をしているおばちゃんくらいだ。いつも道り仕事をこなしていくと、すぐに昼休みとなった。


「はー疲れたぜ」

「は? お前かなり休んでただろ」

「真面目にやってたわ……腹減ったから飯食いに行こうぜ」


 仲のいい同僚とそんな話をしながら食堂へと向かう。それにしても真面目に仕事しても休んでたと言われ、いつも遅刻ギリギリだと言われ、どうやら仕事での俺の評価はあまり高くないようだ……。冗談混じりの雑談を楽しみながらの昼食をとる。今日はカレーライスにした。味は、まあ普通だ。昼食を食べおわると眠くなってきた。やはり気分よく起きたとはいえ夜更かし+早起きはつらいものがある。


「は~、飯食ったら眠くなったわ。昨日あんま寝てないし」

「お前いつも昼は寝てるじゃん」


 確かにあまり眠くない日でも食堂の机で突っ伏して午後の仕事まで仮眠をとることは多いが決していつもではない!読書したり雑談したりもしてるだろう!

そんなことを思ったが、たしかに昼は寝ているのが多いので言い返しはしない……。あのまま昼寝をしてしまう方がずっと普通だったがその日はいつもと違う行動を俺はとる。その行動が先の未来を大きく変えることを知らずに……。


第一章です。よろしくお願いします。

感想頂けたら泣いて喜びます。

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