♯1 ドラゴンボールを一度は欲しいと思ったことがあるよ
「制服解禁日?何だよそれ?」
「いやぁ、私もよく知んないけどね」
「はぁ?」
「だからね、聞いた話さ。何でもその、制服解禁日ってのは――」
「おーい、席着けー。チャイム鳴ってるぞー」
「んー、また後で」
別にどうでもいいけどな。
しかし、興味がないってわけではない。だけど、意味分からん。何だ、制服解禁日って?今着てる制服のことか?それともなんか特別なやつか。
しかしながら、授業に集中してしまい、制服解禁日の”制”の字も忘れてしまった。ま、実際のところ、俺にはそれだけの事にしか捉われていなかった様だ。
帰り際、幼馴染でもなんでもないが、たまたま帰る方向が同じということだけで、一緒に帰ってやっている、八重が声を掛けてきた。
「よっ、昶。一緒に帰ろっ」
うし、帰るか。
こいつと一緒に帰っている理由。別に友達がいないという訳ではないが、高校に上がってから出来た奴らばかりなので、帰り道がばらばらである。しかも、特に仲良しの2人のうち、1人は彼女持ちという、なんとまぁ、ハイスクールライフを満喫しているのだろう。八重とは特別な関係はないのだが、こいつは個人的な意見で、かなり可愛い。みんなもそう思っているだろう、それほどの可愛さ。しかしながら、ショートカットというのが残念なところでもある。それ以外はパーフェクト。胸もあるし、成績もいい。彼女にしたい人の5人には入るだろう。それでも、そこまで関心はないのだが。
帰り道。
例の、制服解禁日のことについて聞いてみる。
「なあ、八重」
「ん?なになに。昶から話しかけてくんなんて珍しいねぇ。なんかあった?」
「いんや、それほどの内容でもないけど。制服解禁日ってのはどんなのかなーってね。気になってたし、結構」
一瞬止まった。何かいけないことでも言ったか、俺?
「あ・・・・・なんかまずかった?」
「・・・・・・・・・・・・」
あぁー。そういう沈黙は、俺が一番苦手としていることだ。なんか世間話でもしなくちゃか。「あー・・・・・・うん。そう・・・・・・最近なんか暑いね」
苦しい。間が持たん。気の利いた話ってなんだ?いつも八重が振ってくるから気にしてなかったが。うーん。なにがいい?知りもしない政治の話でもしてみるか。こいつなら知ってそうだし、1人でべらべら喋ってくるだろう。知ってたらのはなしだけど。
「そういえば・・・・・・なんだっけ?・・・・・・そうそう、選挙凄かった――」
「よく聞いてね」
はい?人が喋ってるのに割って入ってくるな。で、なんだ?
「制服解禁日はね、文字通りある制服が、解禁される日なんだけどね」
まぁ、それぐらいは分かるかな
「それで、その日に解禁される制服が、問題なんだよ」
「なんか特別可愛いとか?」
「いや違うの。その制服を着れば、なんだってひとつ願いが叶うんだって」
「ほう、それはそれは。一度着てみたいものだ」
「えっ?ちょっとそれは・・・・・・」
「そんなの冗談に決まってんだろ。だいいち夢ってのはだな――」
って聞いてねぇし。もう心は制服に移ってるな。
「で、その制服解禁日ってのは、いつなんだ?」
「あっ、そういえばいつだろ?」
おいおい知らんのかよ。かなり重要じゃないのか。
「ま、お前にとっちゃそれだけのことさ。だいいち、お前がかなえたい夢ってのはなんなんだよ?」
「はぅ・・・・・・そ、それは・・・・・・」
「決まってないの?」
「いや、決まってるんだけどね・・・・・・うん」
「なんだよ。言えよ。気になるじゃん」
「えぇ、うん。・・・・・・んー、じゅ・・・・・・じゅ――」
「ん?おい、八重。赤信号だぞ」
「あっ、ありがと」
「それでなんだよ」
「ん、ふふ」
なんだいきなり、気持ち悪い。
「ひ・み・つ」
は?おい、ちょっと待て。
「じゃぁね」
お・・・・・・ぃ。くそ、憎たらしい奴め。逃げやがった。しかしまぁ、他人の夢なんてもんに干渉してはいけないと思っているし。だいいち、この世に叶えられない夢なんて皆無だ。人間やる気になりゃ、なんだって出来るもんさ。
それより、9月だっつーのにこの暑さは何だ?異常気象にも程がある。あー、帰ったらシャワー浴びよう。
この小説に興味を持って読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
サブタイトルについては、テキトーに付けているので、どうぞ御構い無く。なお、こんなタイトルを付けて欲しいお思いの方(いないと思いますが)は、タイトルを教えていただければなと思います。
これからも精進してゆくので、どうぞよろしくお願いします。