(5)
そんなの躊躇してられっかよ。嫌いなギャルでも女だ。これで見て見ぬ振りは男じ
ゃないよな。そして、男の拳が碧波の30センチ手前。
「ひっ」
碧波の声にならない悲鳴を上げた。
ガシっ!
「「「「「!!!!!」」」」」
周りにいた不良も、クラスの人も、そのほかのやつも、そして、この赤目の鬼さん
偽物も驚いている。ああ、やっちまった。
右側にいた碧波を右手で抱き、左手でやつの拳を握っている。
「貴様・・・・・」
「あ、えと、いや、あれだよ、女に手を上げるのは男じゃないでしょ」
とか、冗談交じりにいい、拳から手を離す。碧波はまたもや何が起こったかわから
ないって顔で見ている。そこで正気に戻る。
「な、なんで、だってこの人、こ、こんなひとじゃないって・・・・」
碧波の表情は恐怖でいっぱいだった。こいつの理想崩す訳にはいかないよな、だっ
て赤目がこんな噂って流れたら俺が叩かれてるみたいじゃないか。
はぁ、ちょっとだけ言い返すか。弁明のためにな。
「貴様、何者だ」
と、偽赤目。なんだこいつ、喋り方。
どこの漫画だよ。
「な、何者だって言われてもね」
「俺の拳を止めた」
ああ、やっぱりそこ付いてくるのね。
「む、昔にちょっと格闘技を」
はい、嘘。
「それだけか?」
「え、ってそ、そんなことより、その目・・・・・・本物じゃないよね?」
そう聞くと周りの人たちは驚く。
碧波も俺を見る。多分周りの奴いらはこう思うだろう。この状況でそんなことを聞
くなんて正気じゃない。 まあ、そうだろうな。
てか思ったがこの学校になんでこんな奴いるんだよ、ここ結構上の進学校だぞ。
「俺の目が偽物だと・・・・証拠はあるのか」
「カラコンじゃないのかな?」
「なぜ、そんな回りくどいことを」
「だってさ、本物の赤目を俺は知ってるから」
「「「「「「「「!?」」」」」」」
不良グループと、こいつ、そして碧波が俺を一斉に見る。本当に何者なのか、
というように。
「う、うそつくなよ」「だって、なぁ」「嘘だろ」
とか不良グループは言ってくる。
「なぜ知っている」
「そ、そうよ、なんであんたが」
「俺は蒼中出身だからだ」
そう、単純な理由。これが本当の理由になるだろう。別に嘘じゃない。俺は嘘はつ
かない。まあ、俺自身なんだけど・・・・・・一応嘘じゃないよな。
「・・・ああ、たしかに俺は本物じゃない!」
「えっ!?」
碧波の共学な声、不良グループのざわつき。
やっといいやがった。
「な、なんでこんなこと?」
碧波が聞くと、
「俺は赤目と一度殺し合ってみたい」
「え?殺し合うって、そんな」
「こうしてれば奴は現れる、そう思ってた、この学校に赤目の鬼がいるって聞いたか
らな」
!?
う、嘘だろ!?な、なんで、なんで知ってんだよ!?そう聞きたかったが聞けなか
った。でも、聞かねばならない。
なんで俺が、赤目の鬼がこの学校にいることを知っているのか。
「貴様、今知っているといったな」
「あ、ああ」
「ならそいつのもとへ俺を連れていけ」
え~、なんでそうなるの!?
「つ、連れて行けって言われても」
目の前にいますよ!?
「いいから案内しろ、この学校にいるんだろ」
ああ、でもこれはいい機会かもな、こいつになんで知ってるのか聞かなくては。
「わ、分かった」
「ちょ、あんた、本気!?」
本気さ。気は乗らないけどな。
「悪い、碧波、先に教室にかえっててくれ」
「な、なんでよ!?私もその赤目の人を一目みたい!」
「ダメだっ!」
俺はかっとなって叫んでしまった。碧波はびくっと震える。
いつもと違う俺に少し、混乱もしている。
「い、いや、これからもしかしたらその赤目とこの人が喧嘩するかもしれないだろ?」
そう、こいつを連れて行くわけには行かない。
「お前に怪我はして欲しくない」
「えっ!?」
そう言うとなぜか急に静かになり、うつむいた。少し頬が赤かったきがする。
「そういうことだ、悪いな」
そう言って俺はそいつを案内するために出ていった。青波はあっけにとられたのか、
うつむいたままだった。俺は、もう使ってない、東塔の中にわに連れてきた。
「おい、誰もいないぞ」
「いや、これでいいんだ、俺とお前の二人でな」
「・・・・・どういうことだ」
「ひとつ聞く、お前はなぜここに赤目がいることを知っている?」
「・・・・・・・俺は黒中だからだ」
黒中!?蒼中のすぐ隣の中学、よくやりあってた中学だ。
誰がいたとかは覚えてないけど。
「俺はあいつに初めて、そう、喧嘩で初めて負けた、敗北がこんな重いとは知らなか
った、それから俺は、ずっとその気持ちなんだ」
俺に負けた?コイツが?ダメだ思い出せない。
「そうか」
「だからとっとと案内しろ」
「お前、赤目とやりたいのか」
「ああ、ただの喧嘩じゃない、殺し合いだ」
「・・・・・・・・・・・・覚悟は出来ているんだろうな」
「何っ!?」
「覚悟はあるかって聞いたんだ」
俺はそっと右目に手をかける。
「覚悟?そんなものとっくの昔にできている」
「なら、俺も全力で答えてやる」
俺はすっと両目のカラコンを取る。そして前髪をまくしあげる。
「なっ!?」
俺の目は煌々と真っ赤に燃える赤い目。
その目を見たこの偽物は息を飲んだ。
「あ、あっ・・・・・・・あ・・・・・」
声も出ないのか。足はガクガクとふるえだし、完全にもうれ敵意は消えた。