(3)
と、そこで気づかれたか。
「あ」
「て、てめぇ!」
キョトンとした顔で碧波は俺の顔を見る。ああ、あそこで俺が拳を止めたりしたら
かっこよかったのだろうが、そんなことしたら喧嘩慣れしてるのがバレそうだ。なの
で俺は碧波を後ろから手を握り引っ張ったのだ。
「い、いやぁ、俺のせいで喧嘩してるっぽかったからさ」
「あ、あんた!?」
碧波はびっくりした表情で俺を見上げる。つかあんたって名前くらい覚えろや。
「てめぇ、何してんのかわかってんのかぁ!あぁ?」
ああ、面倒だ、なんで入学早々こんなに目立っちまうことしてんだ俺。こいつのせ
いだ。この女のせいだ。正直なところ、昨日財布等取り返さなくてよかった。まあ、
お人好しなんだなこいつ。そのせいでバレてこんな状況って、馬鹿だろ。
めんどくセぇ。ああ、ここは穏便に済ませるか。
「ご、ごめん、でも殴るなら俺をなぐりなよ、女に手を出すのは雑魚のすることだ」
「ざ、雑魚だと!?」
と、穏便にいったつもりだった。でももともとの口の悪さから『雑魚』というワー ドを使ってしまい余計に怒りを買ってしまった。言ったあとに碧波を見ると、頬を染め
俺を見ている。ガンとばしてる?なぜ!?と、そこに、
「お、おい!何やってるんだ!?」
っと、ラッキー誰かが教師を呼んだらしい。
「山田、ちょっとこい!」
と、三人の先生に山田は連れて行かれた。少し抵抗はしていたが・・・
「ほら!席に付け」
と、担任おえっと・・・山口だっけ?が声をかけ、教室は昨日と同じ朝のホームル
ームを始めた。
後ろをちらっと見ると、青波は葛城と話している。ああ、これで借りは返せたし、
もうギャルに関わることもないだろ。今日もまだ半日の学校が終わる。結局山田は帰
ってこなかった。俺としてはよかったってところだ。
「おい、紅蓮、あんまああいうことしないほうがいいぞ、何されるかわかんないぞ」
と、勇太は忠告をし、そして部活に向かった。
俺も帰ろうとしたくをはじめる。ああ、これでもう狩りも返したしギャルや不良に
関わることもないだろう。
・・・っと思ってたのも束の間、職員室にバイク通学の紙をだしに行こうと教室
を、出ると、
「あ、やっと来た!」
「は?」
横をむくと、壁にもたれかかった、碧波がいた。
「な、何して・・・」
「お茶!」
「え?」
「今日奢ってくれるって!」
は?さっき仮は返したはず・・・・・・・まあでもさっきのは俺のせいで喧嘩した
んだしな。ソレに一応話も聞いとかないと筋が通ってないよな。
「わ、分かった、ちょっとこれ出してくるから待っててくれ」
「何それ?」
「ああ、バイク・・・」
「バイク!?あんた乗れるの!?」
「え?いや、来週くらいにはもう免許取れるから・・」
「わぁー!すごい!今度乗せなさいよ!渡しバイク好きなのよ!不良がよくのってる
し!」
ああ、なんだこのメルヘン女。少女漫画の読みすぎなんじゃないのか?
俺は昇降口で待ってるようにいい、職員室に髪をだしに行き、すぐに昇降口に向か
い、碧波と合流してその喫茶とやらに行った。
「これと、これと、これ、あとこのケーキも!あ、最後にいちごみるくも」
「かしこまりました」
嘘だろ!!?今コイツどんだけ頼みやがった!?軽く3千円超えるぞ!?しかもい
ちごみるくって、甘いのに甘いものかよ。将来は糖尿病だな。
と、頼んでからしばらくの沈黙。そこで、
「あ、あのさ」
「ん?」
向こうから話しかけてきた。
「さっきは、その・・・・・ありがと」
「え?ああ、気にするな、俺のせいだしな」
「そ、そうね、そうよね、あんたのせいよね、これで仮がまた増えたわよ!」
「はぁ!?」
何言ってんのコイツ!?
悪魔でもあいこだろ!?
「っていうか、よく助けられたわね、前の日はビビってたくせに」
ああ、ビビってた演技な。
「ま、まあ、そりゃあな」
って、やべぇコイツと話すとき、いつもの喋り方になっちまってる!!
でも今更治すと、キモイ、とか言われそうだしな。
「でも、なんで青波さんはあんなビビってたんだ?」
「さん、とかつけなくていいから」
「あ、ああ、じゃあ碧波、お前ならなんかもっと言い返すように見えるんだが」
「ああ、不良と話すのが苦手なのよ、ていうかあんた意外と口悪いわね」
余計なお世話だ。でも、やはり思ったとおり。まあ、不良ってちょっと怖いしな。
「不良ってかっこいいじゃない?硬派で、喧嘩強くてバイク乗って、あ、でも山田み
たいなああいうカツアゲとかするようなのは嫌いよ?」
ああ、聞いてねぇよそんなこと。不良がかっこいいってギャル限定だろ。
「だから不良系の人って憧れとかあったから話すの苦手なの」
とか、なんとかこういう話を10分効かせれた。
中学は不良とかあんまりいない、真面目な、今の俺みたいのがいっぱいいるだとか、
だから不良に憧れるけど、うまく話はできないとか。
好きなのになんで話せねぇんだよ。
「で、そこでよ!あの葛城君!まさにそれだと思うのよ!あの時だって止めてくれて
たし」
ああ、あいつか。あのイケメン。ギャルって本当面食いだよな。
「だからその、あんた仮一よね」
「あ、ああ」
ってああじゃねぇだろ、俺仮一って。
「だから協力して!」
「はぁ!?」
「だからぁ!協力してよ、不良とうまく話せるようになりたいの!」
「な、何言って・・・」
「これから協力して、私を不良なれさせて!」
「えぇ!?」
「逆らう権利はないわよ、男でしょ!?」
うっ。男でしょって言われると、断れねぇ。
「わ、分かった」
ああ、俺の妙なプライドのせいで承諾しちまった。
これから俺はどうなるのか、コイツがその葛城ってのとくっつかなきゃ解放されな
いってことだ。
最悪だ。