なんでギャルってのは不良が好きなんだ!?
何事もなく入学式を終えた俺は新たな教室1年3組の教室に向かう。俺を知ってる
奴は誰ひとりといない。たまたま親の転勤で、家を引越し、学校もそっちの学校に進
んだ。前の地元とは完全に県をも超えているので、俺を知る者等いないってわけだ。
なんて幸運なんだ、俺!と、本気で思っていた。
「えっと・・・・16番の席は・・・」
お、あったこれか。
俺は指定された席、出席番号16番の席を見つけ出しひとまず座る。そのあとから
どんどんほかのクラスメートも入ってくる。あ~、目が痛い。俺は今なれないカラー
コンタクトをしている。 でも、目の色は黒。外国人?ちがう、もともと目の色が変
なんだ。色素が足りないとか、空気の問題とか、酸素がどうのとか。それで俺は今黒
のカラコンをしている。なれないからまだ痛い。
っと、考えてると、いつの間にかここの担任が入ってきた。
「え~、今日からみなさんの担任になりました、山口です」
とかなんとか、適当に挨拶を済ます教師。もう、周りのクラスメートはそんなこと
聞いちゃいない、もうおしゃべりを始めている。
って、もう!?やばい、完全に出遅れた!
俺は周りを見渡す。とりあえず、俺も友達を作らなくては!見ると、髪を染めてる
やつだとか、不良っぽいのだとかがそこそこいた。そんなに頭の悪い学校に入ったつ
もりはないが、それでも高校デビューの奴らがわんさかと。
と、焦っていると後ろから声をかけられた。
「な、なあ、何中だったんだ?」
後ろの席の人、男。それが俺に話かけてくれた。髪はそんなに長くなく、髪の
色は茶色。ちょっとかっこいい顔立ちなのか?少しば かりだが不良の匂いもしなく
はない。ちょい悪ってところか?
「あ、ああ、ほかの県だから知らないと思うけど、蒼中って知ってるかな、二つ隣の
県なんだけど、知らねぇ・・じゃなくて、知らないよね?」
危ねー!口が悪いのもダメだ!喋り方もあれだけ練習したんだ!
俺は毎日のように柔らかい口調の練習をしてきた。それもこれも高校生活のためだ。
「え!?知ってるぞ、蒼中!有名じゃないか!」
「え!?有名!?」
俺は知ってるということよりも、有名というところに驚いた。特にうちの中学は部
活が強いわけでもなんでもない。
「そうだぞ、有名だ、だって不良の巣窟じゃないか!」
うっ!
心の中で胸が痛む。 そうか、そんなことで有名なのか。あの中学はたしかに不良
の巣窟。俺も入学のときは1年で頭を取るとか言ってたな。
「そ、そうなんだ」
「ああ、その中でもすごいのはなんだっけな『赤目の鬼』だったっけな」
うげぇ!?なんでこんなところまでしれてるんだ!?ダメだ、話題を変えないと!
「そ、そうなんだ、下手くそなネーミングセンスだね、そ、それより――」
「でも、相当強いらしいぞ、もう人間じゃないって噂だしな、1年で頭を取ったら
しいけどしってる?」
「あ、えーっと、いたようないなかったような?」
「でも、お前みたいなやつもいるんだな、なんていうか、普通のやつ」
おお!よかった普通に見えてるのか、今の俺は!
「あ、ああ、そうそう、なるべく学校でも目立たなくしてたんだぁ」
ああ、それにこの穏やかな喋り方、コイツよりもこんな穏やかに話してる俺が不良
だとは思わん。しかもその赤目の鬼だってことなんか夢にも思ってないだろな。
「あ、ところで名前なんていうんだ?」
「ああ、紅 蓮」
2文字で書けるんだよね~とか説明も付け加えといた。
「おお、いいな短くて、俺なんか、北野小路 優太だぜ?」
よかった聞くへまが省けた、それにしてもメンドくせぇ名前だな。
「な、長いね、じゃあ勇太って呼んでもいいかな?」
「ああ、そのほうがいい、ん~、そうだな、俺はどっちで呼べばいいか?」
「どっちでも呼び易い方で」
「あ!じゃあ、これはどうだ!紅と蓮をかけて紅蓮!(ぐれん)かっこいいだろ!?」
あ~、やっぱりそうなるんだよな、前もそうだったし。
「そうだね、じゃあそれで頼むよ」
「おう!」
よし!ひとまず友達ゲットってところか。
とか、話していると、先生の話も終わり、次のロングホームルームまで少し休憩。
そこでまた勇太が話かけてくれた。
「なあ、紅蓮はどの娘がタイプだ?」
「え?」
いきなりの質問にあっけにとられてしまう。
「女子だよ女子!結構レベル高いぞ、このクラス」
そ、そうなのか、そうだよな、そういうところも勉強しねぇと。
高校って言ったら彼女のひとりもほしいし、蒼中の頃はギャルみたいのしかいなか
ったからな。周りのやつらはそのギャルを彼女にしてたが、俺は正直なところギャル
という人種は苦手だ。
とりあえず、俺は女子を見渡してみた。たしかにレベルは高い。もう女の場合グル
ープが出来上がってきている。ちょっと大人しそうな女子のグループ。そして、活発
で明るそうなグループ。
そして、最後に見たのは見る気もしなかったがギャルグループ。もうそのギャルグ
ループは男の不良グループと仲良くなっていた。
「ん?あいつ・・・・」
「え、どれだ?おお!いいのに目をつけたな!このレベルの高いクラスでもずば抜け
てダントツの一位だな」
「え、別に目をつけたわけじゃないけど」
あ?目をつけたって、何言ってんだこいつ。そう、俺が見つけたのはギャルグルー
プの中の女子ひとりだ。小柄で髪も茶髪に染めている。ゆるふわヘアに、そして、と
ても整っている顔立ち。でも化粧のせいか、ちょっと抵抗があるな、俺には。ケバい、
ケバいんだ。やっぱり可愛くてもギャルはギャル。でも気になったのは容姿じゃない。
周りのギャルは結構男子と話しているがそいつはあまり話していなかった。ちょっと
キョドってるところもあるのか?それでも一応話はしている。相槌ばかりだが。
なんでギャルは不良が好きなんだか、訳がわからん。
俺も不良だったが別にかっこいいと思ってやっていたわけじゃない。不良ってのは
ある種の中二病なんじゃないかと俺は思う。強くなりたい、ただそれだけだったんだ、
俺の理由なんて。強くなりたい、これが中二病じゃなくてなんだと言うんだ。
「それにしても可愛いよなぁ、あの不良グループずるいな!」
「そ、そうだね」
とか心にもなく相槌をうっといた。
と、そこで不良の中にリーダ各らしき奴らが俺を見た。そしてこっちを指差し、ギ
ャルと不良に何か言っている。ん?なにか嫌な顔されたか?
すると、どうだろう、いきなりこっちにちかずいてくるではないか。友ダチになり
たいのか?でも不良の友達はちょっとな。
と、目の前に来て第一声は、
「てめぇら、何見てんだ?喧嘩売ってんのか!!」
と、いきなり怒鳴ってきやがった。金髪にピアスが何本も空いていて、舌にも空い
て嫌がる。せっかく親にもらったからだに何してんだこいつ。そして、一番あの小柄
で可愛いと言っていたギャルと話していた男だった。
「い、いや、悪い、喧嘩売ってるつもりじゃねぇんだ、許してくれ」
と、勇太が言う。
何をこんなにかしこまってんだ?
ってそうか、これが不良に絡まれた時の反応か!
俺はあんま一般人絡んだことないから知らなかった。こういう反応を俺もしなきゃ
いけないのか。
「お前じゃねぇよ、そこのてめぇだよ、そのしょぼそうなやつだ」
と、ご指名はなんと俺だった。と、言われたので俺もとりあえず
「あ、ああ、悪い、見てるつもりじゃ・・・」
と、優太を真似してみた。
「あ?てめぇ、愛ちゃんのことずっと見てただろ!?気持ちわりーんだよ、愛ちゃんも嫌がってんだぞ、こら!?」
愛ちゃん?俺はちらっと席の名簿を見る。と、すぐ目に付いた。
碧波 愛、ああ、あの子の名前な。あの可愛いくせにケバいやつ。
つか、別に見てもなんでもないんだが。
「べ、別に見てないよ、正直全く興味ないし」
ここは穏便に済ませよう。
「あ?なんだその言い方!?土下座しろや、土下座!」
・・・・・・・・・あ?何言ってやがるこいつ。頭おかしいんじゃねぇのか?
今周りの目は完全に俺に向けられている。ギャルと不良グループを見ると完全にク
スクス笑ってやがる。見ると、その愛ってやつまで笑顔を作っていた。
あんな女を俺が見る?
バカ抜かせ!
「土下座は、流石にできない、かな、ソレにあんな女死んでもみないよ」
と、俺は弱気にいったつもりだった。でも、あるワードにこの金髪は怒り出した。
「あんな女だ!?てめぇみてぇな地味男がそんなこという権利あんのかこら!?」
ああ、メンドくせぇ。あれか、あの子のこと好きなのか?それであの子の前でちょ
っと不良ぶってるってわけか。いるいるこう言う奴。めんどくさいことこの上ない。
「てめぇ、裏行くぞ、ぶっ殺してやる」
あ~、メンドくせぇ。でもここで暴れたら終わりだしなぁ。と、思っていると、そ
こで勇太が、
「お、おい、紅蓮、誤っとけって、!コイツここらじゃ有名な不良で金取られるぞ」
ああ、そうなの、って金って、金渡せば許してくれるのか?
とりあえず財布の中身を見てみる。
ああ、ダメだ、この金は夜飯代で帰りに妹の好きなハンバーグの具材を買っていか
なきゃいけねぇんだし。
と、思いながら財布を見てると、いきなり腕を掴まれ財布を取られた。
「な、何すん・・・や、やめてくれないかな?」
と、怒りを抑えて、笑顔を作る。
ああ、だるい、不良やめてよかった。こんなのと同類にされたくねぇよ、全く。
「ああ?てめぇ見てたんだから鑑賞代だ、つか、ホント弱そうで小心者だな!おら
ァ!」
いきなり俺に大声を上げた。びっくりするとでも思ったのか?周りはビクッとして
たが俺はピクリともしなかった。そのことに腹を立てたのか、もっと大声を出しだし
た。いちいち顔を近づけ『あぁ?』と言ってくる。
ああ、ここはビビっとくのがいいのか。
「ご、ごめん、でもそれは夜飯代で・・・」
「知るかよ、クソが、この金で許してやるから、もうみんじゃねぇぞ!?次見たら殺
すからな」
あ、財布を持ってかれた。俺はカツアゲされたのか?
戻ると、金髪がギャルに今日の帰りどっか行かね?この金で。とか言ってやがる。
周りのギャルはヤッターとか言ってる。ちらっと見ると、何でだ?あの碧波って女が
こっちを見ていた。そして目があった。そのあとすぐそらされた。意味わからん。
ああ、妹にせっかくうまいの作ってやろうとしてたのに。でも、まあ、いいか。後
でなんとか取り返せるだろ。つか絶対取り返す。妹のためだ。
「ああ、よかったな、あれで許してもらえて」
「え?ああ、そうだね」
周りももうさっきのことなど忘れたかのように話しだした。何事もなかったのよう
に、ホームルームも終わり、皆帰り支度をし始めた。
っと、後ろをむくとあの金髪率いる、ギャル集団と、不良集団が一緒に帰るとこ ろ
だった。どうする、金・・・・・・・ああ、やっぱりここで返せとか言って喧嘩にな
ったりでもしたらやばいしな。
「もう、気にすんなって、あんまか関わんねぇほうが身のためだぞ」
と、勇太が言ってきた。別にさっきのことを引きずってたとかじゃなくて、今日
どうしようか考えてただけだ。と、金髪をまた見ようとすると、??まただ、またあの
女と目があった。碧波愛。なんなんだ?あいつらと同様馬鹿にしてんのか?
「ああ、もう碧波さんも諦めろ、な?っと、俺は軽音部の仮入に行ってくる、じゃあ、
またあしたな!」
と、勇太も去っていった。教室にの頃のは俺ひとり。さてどうしたもんか。
とりあえず、帰るとするか。帰って金を持って買い物に行くしかないか。
俺はとりあえず、トイレにより、そのあと、職員室にバイク通学の許可書を貰いに
行った。
この学校はバイク通学がありだ。まあ、学校に止めてはいけないが最寄駅までのっ
ていくことができる。
俺の誕生日は早い。それでもってその日から中型免許を取りに通っている。
このままいけば来週には取れそうだ。まあ、今までは免許なしで乗っていたが、や
っぱり普通になるんだから免許はないとな。
と、その紙をもらいに行き、結局教室を出てから二〇分くらい経ってしまった。
そこで、下駄箱に向かい、そして靴に履き替えるために下駄箱に手を伸ばす――!?
「お、俺の財布!?なんで!?」
と、独り言をつぶやいてしまった。
「だって、返してほしそうだったじゃない」
え!?不意に声をかけられる。
そこにたっていたのは――――
「碧波・・・・・さん?」