「なぞ、解明?」
この学校にはカップル御用達スポットがいくつか存在する。
使用は基本先着順で、先客が居た場合は邪魔をしないようそっと立ち去るのが暗黙のルールとなっている、という噂は知っていた。
三次元の一般NL(美男美女を除く)に興味のない私としては、カップルスポットでこっそりいちゃつくイケメン同士の妄想をしたくらいで、こそっと覗こうと思ったことなんてナイヨ、ナイッタラナイヨ!
とまぁ、大体そんな感じ。
さて、現在私がいるのはその内のひとつ、『校舎裏に存在する人気のないベンチ』である。
木々に囲まれた静かなそこはベンチ以外の設置物が存在せず、つまりベンチのための空間みたいな雰囲気なのだ。
生徒たちのはしゃぎ声も遠く、穏やかな空気はまるで学校でないどこかのようで、お一人様でも利用可なら是非今後利用したい場所だった。
そんな場所に今、目の覚めるようなイケメンと二人きりな訳だが。
本来いちゃいちゃしながら使用されるであろうベンチの上で、目も合わせずに黙々と弁当を食べ進める男女の図は、傍から見たら不思議で堪らないのかも知れない。
しかし私はただのリアルイケメンに興味は無いし、向こうも(多分)罰ゲーム目的なのだから何も起きようがないのだ。
なんか時々見られてるみたいだけど。
気にしない気にしなーい。
私はご飯を食べにココに来ているのだから、ご飯を優先するのは当然です。
食べ終わったら図書室に行こう、そうしよう。
さわり。
「あ、すまない」
後頭部の髪の毛に何かが触れた気がして、とりあえず振り返ったらそこにあったのは折出君の手。
ゴミでも付いていて、取ってくれたのかな。
さすがイケメン、さりげない動作もイケメンのようだ。
「その…、もう少し触ってもいいか?」
なんか違った。
思わずフリーズしてしまったのも仕方ないと思う。
「…髪の毛を?」
「あぁ」
「…、別にいいよ」
「ありがとう」
こちらこそはにかんだような素敵笑顔をありがとうございます。
クールビューティーのちら見せスマイル美味しいです。
大はしゃぎの内心目のやり場に困って下を向くと、折出君ほどのイケメンでもやはり育ち盛りの男子高校生だという証拠というか、結構な大きさのお弁当はもう空だった。
時同じくして食べ始めた私はまだ半分程だと言うのに。
仕方ないので食べる作業を再開する。
そんな私の後頭部を、折出君は恐る恐るといった手つきで撫で始めた。
何その不器用加減、ちょっと萌えるんですけど。
少しご飯を詰まらせそうになりながらも、何でも無い風を装って咀嚼し続ける。
髪の毛を撫で続ける手が時々背中に触れたけれど、一切無視した。
それから暫くして私のお弁当も空になり、先程弁当袋にしまい込み終わったのだが、折出君の手は止まる気配を見せなかった。
別に撫でられる事に不満を抱く訳ではないけど、撫でられている最中に席を立つのもどうかなと思う訳で。
今日はもう図書館は諦めるか。
ふっと息を吐く。
それから段々と撫で方が大胆になっていってる折出君に声をかけた。
「髪の毛いじるの好きなの?」
そう言った途端、折出君はまるで静電気を帯びたドアノブがバチッとした時のように、素早く手を引っ込めた。
なんか変な事言ったかしら。
ちらっと顔色を伺いに振り返ってみると、酷くバツの悪い顔をした折出君と目が合い、そしてすぐに逸らされる。
意味が分からないよ?
首を傾げながら前を向き、微妙な空気だしもうこの場を去ろうかなと考えたところでまた髪を撫でられた。
撫でながらも、まるで自白するように告げられる。
「…染められていない、自然で長い黒髪が……好きなんだ…」
な、なんだってー!!!(AA略
→
■解説
NL:ノーマルラブ。男女の恋愛を指す。
AA:アスキーアート。にちゃんなどで使われる、記号や文字のみで構成された絵。
∧_∧
( ´∀`)< こういうのの事さ
( つと )
と_)_)