「女子力ってこわい」
その後お昼休みまでの短い休憩時間は全て質問タイムへと昇華されてしまった。
私のまったり創作活動タイムはもう授業中しか残っていない。
真面目に授業受けろって?
大丈夫、ちゃんとノートは取ってるから。
「折出君とはどんな関係だったの?」
告白前と言うのなら、全く見ず知らずの他人だったはず。
まぁ学年で一・二を争うイケメンだから、名前と顔と簡単なプロフィールは知っていたけど、芸能人の情報を持ってるのと大差ないレベルだと思う。
直接話したのは、昨日が初めてだった。
「なんて告白されたの?」
一言一句違わず再現したら黄色い悲鳴が上がった。
残念ながらイケメンボイスだけは再現が難しいので、音声は脳内補完でよろしく。
私の気の抜けた返事は適当に誤魔化した。
「和泉さんってあんまり折出様に興味無かったと思うけど、なんでオッケーしたの?」
非の打ちどころの無いイケメンに告白されても断る人間だと思われていたらしい。
私はとりあえず、「もしただの興味本位やいたずら目的だったとしても、彼なら良い思い出になるなぁと思って」と答えた。
まぁ、噂を信じるなら彼がいたずら目的で女子をたぶらかすような人でないらしいけど。
「あー、でも分かるかもー!」
「折出君になら捨てられてみたーい!」
「いやいや、どうせ捨てられるならその前にせめて良い思いをさせて貰うとか…」
「えー!? やだーっ!!! 何する気よー!!?」
「「きゃはははははっ」」
ハハッ、女子こえー。
これ以上特に話す事はないと伝えると、女子は蜘蛛の子を散らしたように去って行った。
ちょ、ちょっと寂しいだなんて思ってないんだからね!
それぞれ元のグループに戻っておしゃべりしているが、会話のネタはもっぱら「折出様」らしい、当然か。
私のような見た目真面目な女が好まれるのなら、黒髪に染め直そうか、ストパーかけようか、なんて話が飛び交っている。
なるほど、私が捨てられた後の後釜に入ろうってことかね。
そのイイ男への貪欲さ、嫌いじゃないぜ!
しかし、ほぼ確実にこれは罰ゲームの類だろうから、望み薄だよって事は黙っておこう。
おしゃべりに水を刺すのも悪いし。
個人的にはコレを期に、地味系男子が勇気を振り絞って「俺…ずっと折出君の事が…!」とかやってくれると非常に嬉しいのだが。
髪形ももさい黒縁眼鏡の草食系男子、でも磨けば光るタイプ。
いや、イケメン×地味男子でも全然美味しい。
あ、でもゴツめの柔道部員とかに食べられちゃうのも捨て難い!!!
モブ顔もいいけどイケメン柔道部で寝技が得意ですとかいいじゃないの?
「あんな女に先を越されるくらいならいっそ…っ」って思いつめて力技で、とかね☆
いいわぁ、考えるだけでヨダレもんだわぁ。
冬コミはそんな感じの本にしようかな。
そんな妄想に耽った四限目はチャイムによって終了を告げる。
ぱぱっとお弁当を食べたら図書館に行こう。
休み時間毎にしゃべってたから、なんだか静寂が恋しい。
しかしそうは問屋が卸さないようだ。
弁当箱を開ける直前に、やってきた渦中の人は言う。
「今日は天気も良いし、外で一緒に昼食を取らないか?」
お弁当片手にやって来た折出君に、思わず生ぬるい視線を寄越してしまった。
お伺いならまずメールで聞いて欲しかったよ。
今朝交換したアレはなんだったのかな…、フフッ☆
熱い視線を向けて来るクラスの女子達は「行って来い、そして後で詳しく!」と目が語ってる。
いやぁ、この年頃の女子まじ色恋への興味が半端ないわ。
私は大人しく弁当を包み直して外に向かう事にした。
静寂かむばっく。
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