2011年11月19日
※この作品はフィクションであり、作者の日記ではありません。
11月19日(土)
日が空いてしまったので、そろそろ文章を書くことを再開しなければならない。そう思ったので、さっそく再開することにした。逃亡中の男女は海岸線沿いを走っていた。あくどい男に騙されて金を奪われた挙句襲われそうになったことにより、世の中は善人ばかりではないことを心の底から思い知った二人は、盗みを働いた。自分たちを襲った男のように、人を襲い、車を奪ったのである。二人は逃亡者として、車で海岸線沿いを走っていた。……というところまで書いた。そこから先は、あとで考えることにした。
「書くことに何か意味があるんですか」と、文章を書いていた私に榎本なごみた尋ねてきた。何かしている、という実感が欲しくて書いているだけである、と私は答えた。「じゃあ、その文章の感想を述べさせていただきますとですね」なにが「じゃあ」なのかは知らないが、意見は貴重なので聞いておくことにした。「あなたはとっても文章が下手です」当たり前である。創作の文章など、作文で書いたきりなのだから。
晩餐の席でのことである。榎本なごみはいつものように自分は何も食べずに、私が食べているところをじっと見つめていた。ずっとこうなのだ。だからここ数日、なんとなく食べづらさを感じている。榎本なごみは食べなくて平気なのだろうか? 「もう、私の正体に気付いているんでしょう」そう、私はもう既に榎本なごみの正体に気付いている。一応尋ねてみただけだ。一応。