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このキノコ人間が。  作者: 天城春香
誰かの日記
96/366

2011年11月18日

※この作品は作者の日記とは違います。創作です。

11月18日(金)

 世界は区切られている。宇宙から見れば地球に国境なんかないんだ、なんてだれが言い出したのかは知らないが、国境線は存在し、県境も存在し、番地だって区切りで作られている。私が出歩ける範囲の番地は決められている。私が歩いて帰ってこれる範囲が、私が動ける区切りである。それ以上出ることは、私にはできない。金がないからだ。金がないから電車にも乗れないし、歩いて脱出するには宮崎県は面積が広すぎる。私が住んでいるのは宮崎の海岸線沿いの中心にある県庁所在地なのである。北へ出ようにも南へ出ようにも西へ出ようにも歩きでは一日や二日では済まない。船に乗るには電車に乗るより金がかかる。金もなければ免許もない私には、近所から脱出する手段がないのだ。


 そう思うと宮崎が監獄であるような気すらしてくる。そうつぶやくと、「そんなことないですよ」と、相変わらず家から出て行こうとしない榎本なごみが言った。自分がその一言を期待していたから、榎本なごみはそう言ったのかもしれない。そう考えると自分が嫌になる。私は自分に都合のいい妄想を出すことしかできないのか。「家のほうが居心地がいいですよ」と榎本なごみは続ける。榎本なごみは悪魔なのかもしれない。もしこの世に悪魔が実在するとしたら、きっと美形だろう。そうでなければ人間を騙すことなどできない。


 そして今日の晩餐。今日は家から出ることがなかったのであまり食欲はわかないが、朝も昼もいつものように食べなかったので食べなければならなかった。一日食事を抜くと、きっとそれが二日三日と習慣化してしまって私はきっと死に至る。それに晩餐は雑煮だった。流し込むように飲み込んでしまえば簡単に食べることができた。餅と一緒に入っていたキノコもほぼ丸のみである。キノコの中の何か嫌な物質が頭に回って気絶しようとすると、榎本なごみが私の隣に寝転んだのが分かった。気絶中の私に何かするんじゃないか、と思ったが、そう尋ねるより前に私は気絶してしまった。

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