2011年11月15日
※この物語なフィクションであり、現実とはずいぶん違います。
11月15日(火)
今日は面接、明日は病院と、今週は急に忙しい。しばらくの間、週にいくつも家から出なければならないイベントがあったことはほとんどなかったため、そう感じられてしまうのである。面接は午前十時に行われた。そして失敗した。向こうの「何か訊きたいことはありませんか」という質問に、「特にありません」と答えてしまったのだ。きっと熱意無き人間に見られただろう。「結果は一週間以内にご連絡します」とのことだったが、良い連絡が来るとはとても思えなかった。十五分間の面接で、私は疲労困憊し、悪い気分に囚われてしまった。
そんな不安を文章にぶつけた。感情をぶつける相手がいるのは良いことである。先々月あたりのころと比べればかなりの進歩と言っても良いのではないか。ただし問題は、進歩と言っても実質何も結果らしい結果を残せていないところにある。状況は何も変わっていない。何も好転していない。
文章の中で、今度は男女を追う男にスポットを当てた。妹との思い出を書いてみた。追う男は幼少期、いじめに遭っていた妹をかばい、「一生俺が守ってやるからな」とありがちな台詞を口にしていた。そんな妹は、人を殺した男と一緒に逃走中である。世の中そんなものである。
晩餐の席に当然のように榎本なごみがいた。榎本なごみは私に尋ねた。「今、何に熱中しているんですか」そのくらい、知っているのではないのか。榎本なごみは現実の存在ではないらしいし。「あなたの口から確かめてみたいんですよ」それならば答えるが、今は文章を書くこと、である。生産性はほぼゼロである。どこかの賞に宛てる当てもなければ、不特定多数に公開するつもりもない。「私としゃべることには、熱中できませんか」榎本なごみは寂しいのだろうか? そんなことはあるまい。榎本なごみは高校生で、学校に友達がいて、しゃべる相手には欠いていない筈である。何度か目撃したことがある。どうも、ついさっき書いたことと矛盾しているような気もするが、とにかく榎本なごみには榎本なごみの生活というものがある。私なんかに構っている暇などあるのか。「あなたが見たのは、私のモデルですよ」そうか。じゃあ榎本なごみは一体なんなんだ。「それはですね、」私はとっさにその先を遮った。なぜかその先を知るのが怖くなったからだ。