2011年11月12日
※この作品はフィクションであり、実在する人物・団体・事件とは何の関わりもありません。
11月12日(土)
寝ている夢をよく見るようになった。最近昼まで寝てばかりいるせいなのか。昼まで寝ているうえに晩餐後に気絶して眠っているのである。一日の半分は寝て過ごしているかもしれない。それでも、誰も困らないのだから睡眠時間はなかなか減らない。誰かにとっての大切な人に慣れるよう努力すべきだろうか。だとしたら、どう努力すればいいのだろうか。金もないのに。
私が書いている文章の現在の登場人物は、逃避行を続ける男女とそれを追う男の三人である。追う男に手がかりを渡すため、私は逃げる男に殺した女との思い出の品を落とさせた。これで文章の展開に少しは緊迫感が出るのではないか、と思ったのである。緊張感のない文章は、読まされてもただただ苦痛を感じるだけだろう、きっと。
見知らぬ男女が訪ねてきた。扉を開けると見知らぬ男女が経っていて、男が叫んだ。「助けてください!」そして私は、なぜかその明らかに怪しい男女を家に上げてしまった。男女に水を与えると、それを飲んでしばらくの間は落ち着いた。しかし、すぐに男が慌てだした。「思い出の品がない。思い出の品が」それはいったいなんなのか。「それはたいへんだわ」と女も慌てていた。そういえば、私はまだ文章の登場人物の男が落とした思い出の品を「思い出の品」としか書いていなかった。それがなんなのか、思いつかなかったからである。私は慌てる二人を残して自室に戻り、「思い出の品」を「手品用のハートのエースのトランプ」と書き換えた。降りると男は「トランプがない!」と騒いでした。
晩餐の間、自室に男女をかくまっておいた。どうしてこんなことをやってしまうのか、自分で自分が謎である。変に情が移ってしまったりしてしまう前にさっさと男女を追う男に引き渡してしまわなければならない。そうしなければいつまでもだらだらと逃避行が続いて、起伏の少ない文章になってしまうではないか。そんなことを考えながら食べ終えた晩餐後、部屋に戻ると、ほとんどのものが編集者によって破壊された部屋で、男女が破壊されていないノートパソコンを開いていた。男女は、やばい、みたいな顔をしていたが、私は晩餐に出たキノコのせいで狂いが回って倒れそうになり、それでもこらえようとしたがこらえきれずに倒れた。男女によってパソコンが荒らされてしまうのではないか。そんな不安が頭をよぎった。